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神様のモニタリング 第一章 ~人類滅亡回避のススメ~  作者: 片津間 友雅
学生 初等部編

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第50話 ■「夏だ!訓練だ!訓練だ!(泣)」

 七月中旬。僕たちは初めての夏休みを迎えた。


 時期は八月末までの一ヵ月半。

 故郷が近い学生の多くは帰省しているけれど、僕たちの場合、片道だけで夏休みが終了してしまうから

 帰ることが出来ないのでガイエスブルクに留まっている。


 そんな僕に母さんから手紙が届いた。


 元気な双子が生まれたそうだ……えっ! 双子!

 我が家系は双子率が高くないですか?


 男の子と女の子の双子で男の子(次男)は「クイ」、女の子(三女)は「マリー」と名付けたそうで、さっそく、アリシャとリリィはお姉さん風を吹かせているらしい。


 僕もだけれど下が出来れば意識的な部分が変わってくるから良い傾向だろう。

 その他にも父さんやファンナさん、ルーク君の近況が事細かく書いてある。

 後でベルにも読ませてあげないとな。


 話は変わって、初めての夏休み。

 そうなると『夏だ! 海だ! 水着だ!』……を期待していた僕の思いは脆くも崩れさった。


 そもそもエスカリア王国って四方を山に囲まれているから海がそばに無い。

 殆どの人が海を見た事が無いそうだ。


 川遊びをする位だけれど泳ぐという風習が無いから水着の認知度も低い。


「嘘だろ……夏と言えば水着回はお約束だろ……」


 という僕の心からの呟きにベルとリスティはただ首をかしげるだけだった。


 そんな傷心の僕にバインズ先生から(もたら)されたのは、練習の場所が確保できたという知らせだった。


「俺が現役の頃に使用していた訓練場なんだがな。

 騎士団の増加と老朽化が理由で新しい訓練場が出来たから

 半ば放棄されていたんだ。


 とはいえ、古参の騎士の中にはいまだに使用している奴らもいるから

 平日は十八時~二十一時、休日であれば十時~十八時であれば

 八月以降は使用してもいいという許可がもらえた。


 訓練場自体が聖遺物によって衝撃と音が漏れないようになっているから

 その時間であれば他の奴らもいないから存分に使えるぞ」

「本当ですか。ありがとうございますバインズ先生!」


 僕は素直に感謝する。よし、これで上級魔法も訓練できるようになる。

 べっ、別に水着が無くたって悔しくないんだからねっ!

 ……ごめんなさい! ベルとリスティの水着姿が見たかったです!


 ロリコンじゃない。僕も八歳だ。ロリコンじゃない。


 なんて、色々悶々(もんもん)としながら使えるようになるまでの時間が過ぎていく。


 八月になり僕たちは、バインズ先生に案内されて旧訓練場へと向かう。

 そこは伯館から馬車で東に十五分ほど、中央騎士団の寄宿舎の北側にあった。


 この周辺一帯が中央騎士団管理で一般人の立ち入り禁止のため、人通りは多くは無い。


 うん、たしかにこれであれば多少の大きな音がしても問題なさそうだ。

 さらに聖遺物で衝撃と音も漏れないという完璧な対策が取られている。

 ……その聖遺物も興味あるなぁ、解析させてくれないだろうか?


「おぉ、広いなぁ。

 バインズ先生、本当に僕たちだけで使用してもいいんですか?」

「あぁ、かまわんさ」


 建物の中に入った僕の目の前には広大なスペースが広がっていた。

 よくある東京ドーム○個分でいえば、二個ほどは入りそうだ。

 ……実際の東京ドームの広さはよく分からないけれど。

 僕が練習していた裏庭で考えれば四つほどは入りそうだ。


 確かにここでならば上級魔法も問題なく使えそうだね。


「今後は、効率を考えて魔法と剣術の鍛錬はここでやろうと思うが問題ないな?」

「はい、それにこれだけの広さがあれば本来の僕が得意とする戦闘スタイルの練習もできますかね?」

「そうだな。エルはその膨大な魔法量を使用しての面制圧を基本にしているからな。

 だが、それに付き合うのは俺としても厳しいな。

 剣であれば剣である程度は防げるがお前の魔法を相手にするとなると、(さば)ききれんからな」

「そうですか。残念です」

「だが、今まで広さ的に難しかった面制圧の技術を磨くことは出来るんじゃないか?

 あぁ、一応この中であれば禁止魔法の使用も許可するぞ」

「ありがとうございます!……それで、あのぉ、新魔法の開発も解禁でしょうか?」


 実はバインド系の魔法を開発した後、バインズ先生から新規魔法の開発も禁止状態になっていた。

 まぁ、使用が禁止されただけで理論を考えることはOKになっていた。


 それ以降もいくつかの魔法を検討していたんだけれど結局、机上の空論止まりで有用性が正直分からない状態になっている。


「まぁ、それがお前にとっての原動力になっている部分もあるからな。

 いいだろう。

 ただし、新魔法については本当に出来るだけ第三者がいる場所での使用は控えろよ」

「はい! もちろんです!」

「まったく、こういう時の返事はいつもより元気だな」


 よし、バインズ先生からのお許しもいただけたから一つ改良した魔法を試してみよう。

 改良したのはチェーンバインドになる。


 チェーンバインドは、賊の襲撃の際に有用性は確認できたんだけれど欠点があった。


 チェーンの動きが直線的で避けやすいという事だ。


 実際、バインズ先生に対して使用してみたけれど全て避けられてしまった。

 バインズ先生からは来るとわかっていたからで、不意を突かれれば難しいと言われたけど弱点であることは間違いない。


 そこで魔法のチェーン自体に一つ仕掛けを入れてみた。


 チェーンが直線的になるのは方向転換するための推進力が無かったことが原因になる。


 ならば推進力を付けてみればいいんじゃない?という事でチェーン先端の鎖をエアウィンドで構成してみたのだ。

 つまり、エアウィンドを鎖の形に成形してみた。いやぁ大変だった。

 なのでチェーンの先端部分については拘束力は皆無だ。


 意識を誘導したい方向に向けることで鎖を作っている魔力を消費して逆ベクトルに対してエアウィンドを瞬間的に発動させて方向変換するように魔法構成もいじってみた。


 まぁ、発動時間や威力、自律性は後で調整するとして実際にうまくいくかテストをしてみよう。


 藁でできた人形をセットして若干右側にチェーンバインドを発動してみる。

 今まで通り直線的に発射されたチェーンは藁人形の横を通り過ぎていく。


(よし、このタイミングで!)


 タイミングを見て僕はチェーンが左方向へ進むように意識を集中する。

 意識をくみ取ったかのようにチェーンの先端は急速に左方向に進み始める。

 それにより大きく弧を描くようにチェーンは藁人形に背後から絡みつく。


「うん、期待以上に成功だ。」


 まだ、若干のズレや変更角度、速度と言った部分に再考の余地はあるけれど、方向性は見えた。


「チェーンバインドを改良したから……

 うーん、まっ『チェーンバインド改』でいっか」


 そうして僕は満足する。


 ――――


 後世、エルは数多の新機軸の魔法や改良魔法をこの世に生み出す。

 それにより「新生魔法の開祖」と呼ばれることになるのだが……


 ただ、彼には致命的に欠如していた才能があった。


 それは……ネーミングセンスである。


 新規の魔法を作った際は、()()()真面目に考えた形跡が見えたため目を(つぶ)るとして、改良した魔法の多くが『改』『改2』『バージョン1.0』『アルファ』etc……

 といった名称がついていた。

 物によっては『改25』まである魔法もあったと言われている。


 元々が理系出身、かつプログラマーだったため、バージョン管理という固定観念があったからだろう。


 逸話として彼が生み出した魔法は、取得方法の伝播よりも名称を皆に分かりやすいように付け直すことの方が困難であったとされている――

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