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神様のモニタリング 第一章 ~人類滅亡回避のススメ~  作者: 片津間 友雅
学生 初等部編

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第34話 ■「王都への旅路1」

 出発してから一週間、

 エルスリードと領境のほぼ中間点にある町「ファンテ」に到着した。


 ここまでの道中で改めて感じたのは、やはりモンスターの多さだ。

 二、三日に一度のペースくらいの感じでモンスターの集団(ほぼゴブリンだけど)と遭遇した。

 さすがにこちらの警護の多さに遠巻きに見ていることが殆どだったけれど。

 稀に襲撃してくる集団は、主に僕の剣術と魔法の練習相手になっていた。


 警護長に「我々の立場は……」とぼやきを受けたこともあったけど……

 もちろん警護の人たちのおかげで襲撃が少なくて助かっているのは事実だから感謝してます、はい。


 ちなみに、一番モンスターを警戒しなければいけないのは夜間になる。

 視界が十分に取れなくなる人間に比べて、モンスターの大部分は夜目が利く。

 昔は、夜にいつの間にか囲まれて全滅という事も多かったそうだ。


 なので百年程前のバルクス伯は大計画として一定距離(馬車で朝に出れば夕方前につくくらいの距離)毎に宿舎を設置した。

 それにより旅人や商人は夜間、安心して休む場所が確保できたことで被害は劇的に減少した。


 人が留まる場所が出来たことで、敏感な商人や飯屋は宿舎の周りで商売を始める。

 その商人が生活基盤を作り食料を確保するため農地が広がる。

 そして農夫を守るために自警団が出来上がる。

 自警団の武器を安定供給するために鍛冶場が出来る……と徐々に機能が増え、

 現在では中規模な町に発展している。

 実際にバルクス領内の町の大部分が宿舎由来となるので百年程と歴史が浅い町が多い。


 旅をする際にはその町を起点とする必要があるので、ほぼ決まった行程になる。


 まぁ、無理して夜間も移動すれば行程短縮出来るけれど、リスクの方が大きすぎる。


 余裕がある距離感であるため、早朝出発した結果、十五時には「ファンテ」に到着する事が出来た。

 これから翌朝までは自由時間という事だ。


 人足や警護の人たちは消耗品や食料の補充が済み次第、酒場に行くらしい。

 未成年の僕には関係ないけどね。まぁ元々お酒が強い方ではなかったので無縁ではあったけど。


 メイドトリオも市場にショッピングに出かけて行った。

 この町は翡翠で出来た小物類が人気だそうで、出発前に貰った特別給金で買いに行くことにしたらしい。


 ベルは『貴族の嗜み』を読破して今は製鉄技術史についての専門書を読むまでになっていた。

 ほんと、吸収スピードがチートクラスじゃないですかねぇ……まぁ、ギフト自体がチートか。


 僕とバインズ先生は、長期間の馬車での移動が続いているので、鈍った体を動かす目的で二時間ほど実戦を想定した剣の練習中だ。


 モンスター相手の実戦も経験して危機回避能力も培われたからか、ようやくバインズ先生の動きについて行けるようになってきた。

 とはいえ、僕が見る限りバインズ先生は七~八割くらいの力だろう。

 まだまだ差はある。


「よし、今日はここまでにするぞ」

「はい、ありがとうございました。バインズ先生」


 お互いに礼をする。

 ベルがタイミングを見計らって持ってきてくれた濡れタオルを受け取り汗を拭く。ふぃー気持ちいい。


「しかし、エル、大分俺の動きについてこれるようになったな」

「いえ、まだバインズ先生が本気を出したら二、三回は死にますよ」

「そりゃ、八歳のお前に本気を出すわけにもいかんだろ。そもそもお前と俺じゃ戦闘スタイルが違いすぎる。


 俺にとっては、魔法はけん制程度で剣による攻勢を主体とした近距離スタイル。

 片やお前は、魔法での圧倒的な面制圧を主軸として、接近された際に防御からのカウンターを狙った中長距離スタイル。


 訓練が俺の得意な距離で開始する以上、俺が圧倒するのは当たり前だ」


 僕自身、最近感じていたことだが、どうやら筋質的に鍛えてもガチムチになるタイプではない。


 つまり先生のようにパワーで圧倒するというのは不可能と言っていい。

 むしろ(ひね)る、(かわ)すのような後の先のスタイルがあっている。


 であれば戦闘スタイルが違うバインズ先生では不適切なのか?と言えば違う。

 むしろ戦闘スタイルが異なるからこそ、僕自身の弱点がより分かりやすい。


 弱点を把握できることで、ならばどうする? と試行錯誤する。

 そうやって一歩一歩改善してきたから身になっていると言っても良い。


 とはいえ、先生以上の膂力(りょりょく)にまさるモンスターがいる以上、受けて流すだけでは今後が不安だ。

 やっぱりバインド系やバフ・デバフはいくつか開発しておきたいところだ。


 なんて考えていると、バインズ先生に肩をたたかれる。


「まぁ、お前にとって本格的な訓練はこれからだ。

 体が十分に出来上がっていない今の時点でここまで出来れば合格点だよ」

「はい、ありがとうございます」


 僕は素直に礼を言う。確かに今の体ってよく考えれば小学二年生くらいだ。

 今までハイペースでやってきすぎた感もある。


 とはいえ、後悔したくないから手を抜くってのは難しいんだよねぇ。


「エル様、バインズ先生、そろそろ晩御飯の準備が出来るとのことです」


 旅行中は日が昇れば起き、日が沈めば寝るという傾向が特に強くなり、夕食自体も十七時頃になる。


 しかし、ベルもまだまだメイドの頃の癖が抜けないよなぁ。

 自分も貴族になったから呼びに来られる立場になっているんだけれど。

 ま、ベルらしいと言えばらしいか。


「ありがとうベル。今日のご飯は何だろうねぇ」


 僕たちは、宿の食堂へと向かう。

 王都への旅はまだ始まったばかりである。

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