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神様のモニタリング 第一章 ~人類滅亡回避のススメ~  作者: 片津間 友雅
転生・幼少期編

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第23話 ■「外に出かけよう」

 バインズ先生からの指導を受け始めて三か月。

 基礎となる素振りを3時間ほどするだけではあったけれど、一か月もする頃には大分慣れてきた。

 それ以降は、幾つかの型を教えてもらいながら鍛錬を続けている。


 指導自体も毎日というわけではなく三日やったあとは一日完全休養するように固く厳命された。

 そして今日は完全休養日、という事で裏庭でのんびりしていたんだけれど…


「ねぇ、エル! ベル! 天気もいいからピクニックに行きましょう!」


 薄ピンク色のドレスを着て来たクリスは手を腰に当てながら宣言する。

 中央から帰ってきて以降、ベルとも友達になったからか、以前に比べると毎日のように来るようになった。


 妹たちからも本当の姉のように慕われているようで、しばしば妹たちの部屋にお泊まりすることもある。


 男女が一つ屋根の下…ネグリジェ姿を見てキャッ……みたいな甘酸っぱい事を七歳児に求められても困る。

 ……ラッキースケベを期待してドキドキしていた僕は馬鹿みたいですね。はい。


 あぁ、確かに初夏五月のいい天気だね。うん、それは分かる。

 けどね、僕たち貴族の子供がピクニックに出かけていたら鴨がネギどころかドル袋を提げて歩いているようなもんだよ?


「僕たち子供だけでノコノコとピクニックは危険すぎるでしょ?

 護衛の人員を用意するにしても今日は無理だよ」

「そうですよクリス、お二人の立場を考えますと護衛無しは危険すぎます」


 僕の横に座って『漢字ドリル』で漢字の勉強をしていたベルもクリスに言う。

 ぎこちなく呼び捨てにしていたベルも最近ではクリスを呼び捨てすることに違和感が無くなったようだ。


「だったら、暇そうにしているあの人に付いてきてもらいましょう。

 護衛という意味でも十分でしょ?」


 と、木陰で休んでいたバインズ先生を指さす。


「いやいや、それは無理でしょう」

「別にかまわんぞ」


 どうやら、僕たちの会話を聞いていたバインズ先生はあっさりと了承する。


「だが、まずはレインフォード殿かエリザベート殿の了解をもらってこい。

 後は、絶対に俺のそばから離れないことが守れることが前提だ」

「わかったわ! エリザベート様に聞いてくる!」


 言うが早いか、ものすごいスピードでクリスは屋敷に向かって駆けていく。

 クリス、家に来るようになってなんだか(たくま)しくなってないか?

 ……まぁ、最近はクリスも見よう見まねで素振りをやってたりもするか。


 ……十分後


 クリスは僕たちの所に戻ってきた。

 なぜか我が愛しの妹、アリシャとリリィのおまけ付で。


「えっと……あっさりOKはもらえたんだけれど、せっかくならアリシャちゃんとリリィちゃんも連れて行ってあげてって……

 本当は自分も一緒に行きたそうにはしてたけど……」


 あぁうん、母さんならそう言いそうだね。


「にぃに、アリィもねぇね達と一緒に行く」

「リィもにぃとねぇについて行く」


 うんうん、今日も可愛いね。よし! そうしよう。

 考えてみれば、父さんや母さん不在で外に出るのは初めてかもしれない。


「よし、それならばピクニックに行くとするか! ベルも一緒に行くよ!」

「「「お~」」」「はい、わかりました」


 三人(+ベル)はさっそくメイドさんたちを引き連れてピクニックに行くための準備を始める。

 今みたいなドレスだと歩くのも大変だしね。

 ベルについては、お弁当と馬車の準備をしに行ったんだろう。


 もともとラフな格好でいたから着替えが必要ない僕とバインズ先生はその時間を使ってピクニックのルートを検討し始める。


 三歳のアリシャとリリィもいるから、そこまで長距離まではいけない。

 基本的には馬車に乗っていくことになる。

 町をでて北側にある「アインズの丘」とよばれる小高い丘がいいだろうな。


「エル、皆がいないから一応言っておくことがある」

「はい、何でしょうかバインズ先生」

「大丈夫だとは思うが、モンスターもしくは賊が出てくることも考えておく必要がある。

 問題ないだろうが俺が戦闘中、彼女たちが無防備になる可能性がある。

 その場合にはお前が四人を守る事も覚悟しておけ」


 僕が剣術を習い始めたのは自分のためというより家族を守りたい。という思いが強い。

 今回のピクニックは自分の力量がどのくらいなのか?

 を客観的にわかるかもしれない。


「はい、わかりました。その際には指示よろしくお願いします」

「よし、であればまず確認しておきたい。

 お前は魔法も使えたな? なにが使える?」


 戦闘においては、味方・敵がどんな武器、魔法を持っているか?

 を把握していることは戦術の幅を広げるという意味でも重要だ。

 バインズは、低級魔法によるけん制をしつつ、ロングソードによる攻撃と前衛戦闘スタイルとなる。


 そういう意味でも魔法による後方支援があるかどうかは大きな意味を持つ。


「低級魔法であれば、攻撃魔法は一通り。

 回復魔法も一応使えますが、練習で使用する機会がほとんどなかったので実戦レベルではないです。

 中級魔法であれば、エアストーンがメインで使えますが、今の魔法力だと二十五回位が限度です」


 その回答にバインズの右眉がピクリと上がる。


「エル、お前中級魔法が使えるのか?」

「えっはい……すみません、練習したいと思ってはいるのですが、裏庭への被害を考えると学校に入学するまでは上級魔法は封印しているので使用できません」


 エルは問いかけに対してあさっての方向の回答をしていたが、

 すでにバインズの耳には入っていなかった。


(おいおい、七歳のガキんちょが中級魔法だと? 騎士団でも魔法師団の部隊副長レベルじゃねぇか)


 この世界は魔法が中心になっている。

 と言っても大多数の者は魔法陣が刻印された道具を使用する事による恩恵を受けているに過ぎない。


 戦闘をメインにする騎士団や傭兵、冒険者であっても魔法詠唱できるものは限られた者しかいない。

 使用回数制限、効率の点で低級魔法をメインで使用しているものが多く、中級魔法以上を使用する場合は複数人による共同詠唱により魔力消費を抑えるのがほとんどだ。


 それを、エルは独りでしかも二十五回も使用できる。

 実戦経験が全くないとはいえ実力だけで言えば七歳で既に軍幹部クラスと同等もしくは上という事だ。


 魔法量という観点で見れば『底なし』と評価される位の膨大な魔力持ちと言ってもいい。


(しかも本人にはその自覚が全くなし。か、こりゃエリザベートあたりが口止めしているな。)


 それだけの魔法が使えるとなれば後方支援としては十分、いやおつりがくるほどである。


 むしろエルの実力を見るために、わざとモンスターが出没しそうなルートを通ってみたいという欲望が出てくるのをバインズは必死に抑える。


 普通のルートで小規模のモンスターが出てくることに期待するに留めておこうと考える。

(その考え自体、物騒だが……)


 そうこうしているうちに準備が出来た四人が戻ってくる。


「さぁ、それじゃ、ピクニックにレッツゴー!」


 異様にテンションが上がったクリスの号令のもと、僕たちはピクニックに出かける。

 ただのピクニックで終わらないことを僕たちは知る由もなかった。

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