ピーター集
歩いていった夏は去った……
初めての恋であった。
「おい丸山。お前もキャンパスライフ楽しもうぜ。」
「飛田。やっぱり俺、女の子と付き合った方がいいのかな?」
「あぁ。そうだよ。大学生で未だ付き合ったことのないってよっぽどの変人だぜ。特にお前みたいな美形は。」
そして夏を前に、文学部の気になる秋山さんに告白した。
「秋山さん。今年の夏は暇ですか?」
「何も無いよ。どうかしたの?」彼女は答える。
「いや、その。僕と付き合ってくれませんか?」
「えっ?こんな私と付き合ってくれるの?」秋山さんはそう言っていた。
リア充爆発しろ!そう言っていた昔が懐かしい。
夏になった。暑いが、彼女の清々しい姿が見える。
そう思うだけで、暑さも和らいだ。
長い髪が揺れて彼女のいい香りが鼻を撲つ。
恋というものは良いものかもしれない。
「ねぇ。丸山君。登山の後さ。温泉行かない?」彼女は積極的に誘ってくれた。
「良いね。行こう。」
山に登った。彼女は僕にこう言っていた。
「もう、敦志ったら遅いよ。早く早く。」
彼女は軽々しく山を登る。危険に振り向かずに。
彼女からは危なさが感じ取れるが、そこに支えてあげたいと思うのだろう。
しかし、何かが違うのだ。彼女を愛していたが、こうでない気がする。どんな言葉を並べても、空回りして、美辞麗句を並べているような感じがした。
季節は夏なのに、寒空な心の中である。乖離していく自分と彼女を裏切っている気持ちが、人生という道を進む僕の前に棘となって現れる。
しかし、それを踏まなければならないのだ。
遂に来てしまった。その棘を踏む時が。
秋が来て、彼女と交わす言葉も少なくなり、別れることとなった。
過ぎ去った二人の恋は誰にも知られることは無かったが、僕にとって物凄いショックを与えた。恋という嵐は酷く傷つけた。
心の皮は厚く硬くなってゆく。恋に怯え、恋を忌み嫌う。そんな男になってしまったのかもしれない。
恋に壊れた孤独なカカシは何時の日か消えゆくであろう…