ミリィ
今日も森へきたミリィはかごいっぱいに木の実をとりました。ツァイトもいっしょに実をさがし、今はひとやすみしているのです。
のはらの上にならんですわって、おはなしをしています。
「昨日ね、みんなにツァイトのことをはなしたの。そうしたらね、へんだって言われたの……」
さきほどまで、えがおだったミリィはなんだか元気がありません。
昨日、ミリィは村のともだちにツァイトのことをはなしたのでした。しかし、ツァイトはふつうではかんがえられないものなのです。村のこどもたちはうごくにんぎょうなど、見たことがありません。だから、ミリィの言ったことをしんじてはくれなかったのです。
「みんなとちがう、どこかへんだって言うの……」
しょんぼりしているミリィのあたまの上に、ぽんぽん、とひとの手ではないものがおかれました。
「ミリィはへんではありませんよ。それにね、みんなとちがうのは、みんなおんなじなんですよ?」
「ちがうのが、おんなじ?」
ミリィはツァイトを見て、言いました。
「せかいにミリィとまったくおなじひとはいますか? こえもかおも、おもっていることもかみのながさも」
「うーん……。そんなこがいたら、わたし、びっくりする」
「そうですね。だからね、ミリィ。このせかいに、ぜんぶがおなじひとなんていないのですよ。みんな、ちがうのですよ。あなたのともだちも、みんなちがうでしょう?」
ミリィはかんがえてみました。
ミリィのともだちには、ミリィよりせがひくいこ、おとこのこ、かみのながいこみじかいこ。
まったくおなじひとは、いないのでした。どこかかならず、みんなちがっています。
「みんなちがうよ」
「そうでしょう? ですから、みんなおなじじゃなくてもいいんですよ」
「でも、ツァイトのこと、しんじてくれなかった……」
すこしづつ、元気をとりもどしていたミリィでしたが、ツァイトのことをみんなにしんじてもらえなかったことがざんねんでなりません。
「わたしはふしぎなもの、ですからね。なかなかしんじてはもらえないでしょうね」
「でも、わたし……」
「ミリィ、いいんですよ。わたしはそういうものですから」
かおはないツァイトだけれども、そのときのこえから、ミリィはツァイトのかおがやさしいものであるとおもいました。
(こんなにやさしいのに……)
そのあと、ツァイトとミリィはすこしはなしをして、さようならをしました。
なんとか、元気になったミリィでしたが、ずっと、しんじてもらえるにはどうしたらいいか、かんがえていました。
そして、かえりみち。ミリィはハッとひらめきました。
そのかえりみち、ミリィはスキップをしてかえりました。
いつものように、ツァイトはミリィをまちながら、森をさんぽしていました。ことりのがっしょうをききながら、森のどうぶつたちにあいさつをしてまわります。
「ツァイト!!」
こえがきこえたほうにツァイトは目をむけました。そこにいたのは、ミリィだけでなく、なんにんかのこどももいました。
ツァイトはミリィに手をふりかけて、とちゅうでうごきをとめてしまいました。
それとは、はんたいに、こどもたちはどんどんツァイトにちかづいていきました。
どうしたものかとツァイトはあわてていました。ツァイトはおろおろとあちこちを見ました。しかし、そんなことをしていても、こどもたちはちかづいてきます。
「みんな、これが、ツァイトだよ!」
ついに、目のまえまできてしまったこどもたち。
ツァイトはこどもたちにかこまれました。こどもたちはめをかがやかせながら、ふしぎそうに、ツァイトを見ていました。
「……こ、こんにちは」
きんちょうしながら、ツァイトが言うと、こどもたちの目はより、きらきらしました。
「すげぇ! ミリィのいったとおりだ!」
「しゃべった! ふしぎー!」
「ねぇ、ねぇ、いったいどうして?」
いっせいにはなされ、手をひっぱられ、ツァイトはふらふらとしていました。
「せっかくだし、あそぼうぜ! ツァイトもいっしょだー!」
「じゃあ、かくれんぼね!」
「わたしがおにやくするね。ツァイト、かくれてかくれて!」
ミリィはツァイトのせなかをおし、かくれるように言ったのでした。
ほかのこどもたちはもう、かくれはじめていました。
「ミリィ、これは……」
「はなしてしんじてもらえないのなら、会ってみたらいいとおもったの! ツァイトのあたらしいともだちだね!」
あたらしいともだち、ということばにツァイトはこころがあたたかくなりました。
「それにね、みんなちがうのが、おんなじでしょ?」
「そうでしたね。……ありがとうございます、ミリィ」
小さな国の、小さな村。
その村にある森からは、こどもたちのたのしいわらいごえが、今日もきこえています。
ありがとうございました。
このお話は挿絵を描いていて楽しかったです。
お話も勿論書いていて楽しかったです(^-^)
私もツァイトみたいな方が欲しいです。
私の中の理想のお人形です。
この先は余談ですので、気になる方だけ見てください。
この作品が出来るまで。
冬童話2015という企画を見て、「参加したい!」
となりました。
しかし、童話を書いてこなかった私は悩みました。
思わず検索。
「……とりあえず、子どもに読んでもらえる作品にしよう」
となり、
「子ども、子どもかぁ。ひらがな多めのほうがいいよね……」
となりました。
というわけで、ひらがな多いです。
漢字は、気分で使っています……。
本当は小学校低学年の漢字とか、ちゃんとした括りを
もうけようと思いましたが、しませんでした。
読みづらくなってしまったかもしれません、すいません。
しかし、私はひらがな好きです。
それでは、また、別の作品で……。
2014/12 秋桜空