反政府組織の皆さん
「はえー、思ったよりいっぱいいるんだねーこの団体は」
屋台のおっちゃんに連れられ、路地の奥の奥にひっそりと佇む崩れかかった建物に案内されたボクは、建物の面積に対して少々多すぎるんじゃないかと思うほどに人の溢れた部屋をみてそう漏らした。正直暑苦しい。
「ま、そんだけあの大公子サマはやりたい放題やってあちこちから恨まれてるってこったよ」
「まあ、見るからにそんな感じだったよねぇ。で、おっちゃんがここのリーダーなの?」
ボクの独り言に律儀にも答えてくれたおっちゃんに重ねて尋ねる。知らない人に聴くなら知り合いに聞くほうがいいに決まっている。案内されながら話しているウチに敬語も取れてしまった。
「あー? お前本当に俺の話聞いてたのか? ここのリーダーは人族っつったろーが。俺が人族に見えるってのかよ」
「ああ、そういえばそうだったね」
地球にいた頃は基本的にアクセスさえすればなんでもわかってたからボクはあまり人の話を聞かない。これは良くない癖だ、ちゃんと治さないとな。と、ボクは顔をしかめた毛むくじゃらのおっちゃんを見て思い直した。彼は熊の獣人であるらしい。がっしりとした体つきと、頭の上でピコピコと動く小さめの耳がなんともギャップを感じさせる。
「っと、噂をすればだ。おーい、ジーレ! こっちだ!」
風切り音がするほど勢いよく手を振り、何やら部屋の奥の方へと自分の場所を伝えている。あの腕にぶつかったらボクは間違いなく一撃で天に召されてしまうだろう。魔王が天に召されるかどうかは別として。
「コイツか。自らのことを魔王だなんてのたまう野郎は。ひょろっちいガキにしか見えないが」
出会って早々ボクの心に深刻なダメージを与えてきたジーレと呼ばれた男は、ぼうぼうに伸びた髪は一切の手入れをしている風もない上に薄汚れた布切れを身にまとい、そのくせそんな風貌にはふさわしくない鋭く力のある眼光をしていた。身なりはともかくとして立ち振る舞いに隙がないように見えるし、相当強いんじゃないかな? それに、薄汚れて目立たなくなっているとはいえ随分と整った顔立ちである。なるほどこれは反政府組織のリーダーをしているのもうなずける。とボクは分析した。
まずは挨拶が大事である。にへ、と顔を笑顔にして話しかける。
「そうそう、ボクこそ魔王様なんだよねー。よろしくリーダーさん」
「チッ、顔の形だけ笑って目も雰囲気も笑ってはいない。気色の悪い奴だ。ジーレでいい。お前、名は?」
「ひどい言い草だ。ボクは、エイシャ。エイシャ・アーカーだよ」
「変わった名だな……。まあいい。お前もあのクソッタレに何かしらやられたクチだな? それなら例えどんな変人でも俺ら『西の反乱』は受け入れるぞ、どうする?」
『西の反乱』って。わかりやすいことこの上ないけどなんともストレートな名前である。直接そのリーダーが自慢げな顔で名乗られるとなんとも言えない気持ちになる。とはいえ、当初の予定で一番接触したかったのも彼らであるから計画は順調に進んでるのかもしれないな。
「わかった。それならボクも今から『西の反乱』のメンバーさ。ひとまず後一週間もすれば色々と情報が入ってくる予定だし、せっかくだからその間に手伝えることは手伝うよ」
「情報……? そんなナリでも、なんかしらツテはあるみたいだな。期待せずに待っておくとしよう。それで、何を手伝ってくれると言うんだ?」
「んー、内部に入り込んだスパイの粛清とか?」
それくらい、アカシックレコードでちょちょいのちょいである。
「ハハハ、面白いやつだなお前は。冗談がうまい」
「冗談じゃないんだけどなぁ」
「まぁいい、とりあえず情報が入るというのならそれまで待っておいてやろう、好きにしろ」
そういってジーレはまた部屋の奥へ引っ込んでいってしまった。本当に冗談じゃないんだけどなぁ。




