勇者爆誕(爆)
前書きや後書きにあれこれ書くと邪魔くさいので、他の方が書いているようなことは活動報告の方に書いています。よろしければ御覧くださいませ。
「それで、カジワラ君は北の部族の生まれらしいんだっけ?」
「あ、ああ。そこら辺の記憶は曖昧なんだけどな。はっきり覚えてるのはこっから一週間くらいのところの村で拾われた辺りからだ。それにしても、この料理……美味いな」
現在晩御飯中です。昼間にリーズが連れてきたカジワラ君も一緒に食べてます。彼が自分のこと――異世界人であるという事実――を隠しているのかどうかをチェックし忘れたので、直接聞いた所今の解答。どうやら隠しているみたいだ。
彼のような黒髪に黒い瞳という特徴はこの世界だと北大公領に存在する島々で生活しているというある部族によく見られる特徴である。その部族は何故かこの世界ではメジャーな麦よりも、元の世界で言うコメに近い――まあコメだな。コメを主食としている。調べてみたところ文化様式が元の世界のニホンに近い。その内訪ねてみてもいいかもしれないな。
と、考えがそれてしまった。今はカジワラ君としゃべっている最中だったな。
「料理を美味しいといってもらえるとボクとしても嬉しいかな。彼女たち戦闘に関してはピカ一なんだけど、こういう家庭的な面が壊滅的なんだよねぇ」
「ま、なんでも完璧にできるヤツなんていないだろ。この料理は誰かに教わったのか?」
「いや、ボクのオリジナルさ」
この世界では珍しい味付けの料理に疑問を持ったのかカジワラ君は聞いてくる。珍しいというか元の世界の料理というか。案の定食いついてきた。二重の意味で。
とはいえ彼の中でのボクはこちらの世界の人物だから、思いつきで作って気に入っていると言うしか無いのだけれど。
「なぁ、会って間もないのに頼みがあるんだが。構わないか?」
その一言で空気が変わる。ボク自身はそれを感じるわけじゃないけど、視界の端っこの戦略兵器彼女達が身構えたのを見てなにやら空気が変わったんだなぁと考えたわけだ。
改めてカジワラ君に視線を戻すと、真っ黒な瞳には剣呑な光が見えるように思える。
「んー、効くだけならタダだしね。取り敢えず言ってみてよ」
「後ろの竜人三人、俺と一緒に冒険者稼業をやらせてもらえないか? 戦闘に関してはピカ一なんだろ、今俺はパーティメンバー募集中なんだよ」
「んー、ピカ一って言っても所詮はこの年の女の子だし――」
「いや、悪いが俺には分かっちまうんだ。最初にリーズちゃんを見たときは頭がとうとうイカれちまったのかと思ったんだけど、その二人をみてイカれてるのはそっちだって気付いた。ラグちゃんは俺が一目見たSSランクの”剣聖”よりも強いし、ルドちゃんは”大賢者”なんて目じゃないほどの魔力。リーズちゃんは”盗賊王”よりも熟練してる。そんな娘たちが冒険者をやってないなんて、誘うしか無いだろ? 言っちゃ悪いが、なんでアンタみたいなボンクラがこんな才能の塊を連れて歩いてるのか皆目検討もつかないんだ」
あは、ボンクラとは酷いなぁ。確かにこういう時のために僕自身はアカシック・レコードにアクセスできる事を隠蔽して、ただの人間に見えるようにしてはいるんだけど。
やれやれ、これじゃ奴隷のフリも意味ないか。
「いやぁ、どうしてそんなことを言うんだい? 彼女たちがそんなに強いわけがないじゃないか。SSランクなんて冗談にも過ぎるよ」
「――この際だから言うが、俺はこの世界の人間じゃない。別の世界の人間なんだ。この世界に来る時に、ある事情で色々と能力を得てる。そのスキルで見りゃ一発なんだよ。信じろとは言わないけどな」
そりゃ神様からもらった能力だもんねぇ。逆に言うとそれすら欺いてるアカシック・レコードって改めてとんでもないものなんだけど。はてさてここまでカミングアウトされてしまうと、とぼけてしまうのも時間の無駄だ。
「カジワラ君のいうことは信じるよ。でもそれじゃボクに全くメリットがないし、そもそも彼女たちは正式には奴隷じゃないから強制も出来ないよ?」
「だから俺はお願いをするのさ。なぁ! エイシャに付いて行くのもいいかもしれないがせっかくの才能だ、冒険者やって自由に生きてみないか!?」
なるほど、自由なら自由で直接語りかけることにしたらしい。ま、返答なんて聞くまでもないんだけど。
「えー、別にアタシは師匠と一緒でいいしー」
「兄さんといっしょ、がいい」
「んー、こっちの方が面白そうなんだよねぇ」
「あ、私達も嫌よー。一応言っておくわね」
「な、なんでだよ!?」
あーあー取り乱しちゃって……、そうだ面白いこと考えた! ちょっと皆の”肩書き”をいじらせてもらおう……。こっちおいでー、と手招き。
ふむふむ、こんな感じかな?
「もっかい彼女たちを”視て”見ればわかるよ」
「……っ!? 『魔王の眷属』……だって? まさか、エイシャ、お前はッ」
やっぱり魔王様がいるなら勇者様もいないとねー。なんというか、張り合いがない。異世界から来た魔王なら、やはり勇者も異世界から来た人間じゃないとね!
「そうさ、ボクが魔王なんだよね。とは言っても二代目なんだけど」
「で、でも中央がアレはデマだって」
「うーん、ありがたいことに勘違いしてくれたみたいでねー。おかげさまでこうやってゆうゆう旅行もできちゃうわけ。因みに本拠地では絶賛力を蓄え中だよ」
唖然としてる。ま、当然かー。いきなり目の前の人物が魔王だなんて言われたら誰だってこうなるよね。とはいえボクをここで倒すというのも無理だ。この距離なら彼が剣を振るってボクの首から上を身体と”さようなら”させる前にラグなりルドなりリーズなりが止めてくれるだろうから。
「ま、カジワラ君が一人で騒いでも頭がオカシイ人扱いされるだけだろうし、バラしても何も問題ないってわけ。むしろ面白いから信じてくれる人が多いほうがいいかなって思ってるから頑張って広めてみれば?」
「何を……何を言っているんだ?」
「見逃してあげるから今日のところはおとなしくしておいてねってこと。ほら、行った行った。ボクは殺気を受けながら寝れるほど肝が太くはないんだ」
はたくようにして馬車から彼を追い出す。今はまだただの冒険者とはいえいずれは勇者になってもらう人物と魔王であるボクが仲良くするっていうのもおかしな話だからね。ちょっと可哀想だけど馬車からは御退場願いましょう。はいさようならー。
「というわけで君たちはボクの眷属って事になったからよろしくねー」
はい、質問がある人ー。




