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フルエンス事変

「なんというか、とんでもない方々ですのね」


「ボクには彼女たちが何やってるのかすら目で追えないんだけどねー」


 作戦開始から2日足らず。たったそれだけの時間でボク達はゼノウ島の制圧まで完了させていた。生徒たちが何かしら動きを見せるたびに兵隊さん達が宙を舞っているという光景は、彼女らの教育方針が上手く言っていることを改めてボクに確認させてくれると同時に、教育方針を間違えたんじゃないかなと内心で冷や汗をかかせてくれるものだった。

 いやだってさ、なんかこう、どばーんって音がするたびに生徒たちが何故か移動してて元いた場所との間にいた人達が空飛んでるんだもん。武器で致命傷を与えるなよっていうお願いは守ってくれてるけど殆ど頭から落っこちて台無しだよ……。これじゃ占領したあとの兵力に大きな問題が……。まぁ何とかしよう。

 幸いにして島民の方々は勧告通りお家の中に引きこもってくれているのでボクの方針に抵抗の意思を見せている人以外は無傷のはず。ベロニカがもたらした元領主様の秘密は効果てきめんだった。


「いやぁ、まさか善政を布いているはずの領主様が実は不正に手を染めてたなんて情報が出てくるとは思わなかったけどなー。しかも額が額だし」


「……私の病を治すため、と言う部分は伏せておいて何をおっしゃっているのかしらこの人は」


 元領主様の秘密はずばり税収の横領だった。理由としてはわかりやすくベロニカの病気をどうにかしようというものだったのだけど如何せん手段が良くなかった。

 その額とソレを裏付ける資料はリーズとレイシアの手を借りれば半日もかからず仕上げられた。彼女たちは優秀なオンブズマンとして働いてもらうのもいいかもしれない。

 今回の作戦は元領主様とその息子二人の処刑と、ルドによる大規模魔法陣の発動を残すのみである。こうもスムーズに事が進むと最初の方にアレコレやってたボクは何だったのかという気持ちになるけど気にしない事にした。人間、後ばっか向いているのは良くないのだ!


「それでー、このたびはどうも申し訳ありませんね領主様」


「……君のような野望を持った男を見抜けなくなった儂の目が良くなかったのだ。君はよくやったと言えるだろうし……。どうやらベロニカの病気も治っているようだしの?」


「その代わり人族をやめる羽目になりましたわ。お父様、こんな私をどうかお許し下さいな」


 手足を鎖に繋がれた元領主様に話しかけてみた。元領主様の邸宅は今現在ボクらの管理下にあり、処刑予定の三人も一室に捕らえてある。


「チッ、これじゃあ俺が親父に反乱起こした意味もねーじゃねーか。ふざけるんじゃない」


「大丈夫ですよー。ボクの支配体制で税収をごまかす予定は無いんで」


「そういう問題じゃねぇんだよ。魔族の下にいる人族じゃあこの諸島の奴らは余計不幸ってことになるじゃないかよ」


 意外だったのが、反乱を起こした第二子ミゲルが、実はただのドラ息子だったわけではないということだった。彼は家庭内に余計な不和をもたらさないためにあえてドラ息子をやっていた。そんな中元領主様の横領を偶然知り、それならいっそ自分がこの諸島を納めようと画策したのが事の真実であるらしい。そりゃ理由知らなきゃそうもなるわな。そんなことよりボク個人としてはあの最初のやり取りも演技だったと知って大分驚いていた。ちょっと聞いてみたところ自分でもおかしいとは思っていたようだったので、笑ったボクはやっぱり悪くなかったということだ。

 長男のフリオも事情は理解していたようで、今はただ項垂れている。


「んー、そうはならないように努力はするけどー。とりあえずは明日の処刑の準備しないといけないからちょっと待ってて欲しいかな? ベロニカ、やっちゃってー」


「はぁ、本当に人使いが荒いんですのね。もう少し自分で何かしたらどうなんですの? それではお父様、お兄さま方、ちょっと失礼いたしまして……|《貌影(ドッペルゲンガー)》」


 ベロニカが呪文を唱えた瞬間、三人の前に黒い……それこそ闇と形容出来るようなものが集まって不気味に動き始める。そしてそれはだんだんと人のように自らを形作って行き……、最終的に三人それぞれと全く同じ見た目になった。


「よし、明日の処刑されるメンバーはこれで揃ったね。ベロニカお疲れ様」


 何が起きたかよくわかっていない三人は放置して、ベロニカに休むよう指示する。一応病み上がりなので倒れられたりしたら嫌だし。

 そして翌日、ボクはこの諸島を手に入れた。


――――――


惑星記憶(アカシック・レコード)内部記憶:フルエンス事変(帝国暦612年刷「大地(ジアース)歴書」より)


 後の世に『記憶の魔王』と呼ばれた二代魔王ことエイシャ・アーカーは帝国暦377年、帝国管理地ガゼット子爵領フルエンス諸島を陥落せしめた。

 領主とその息子二人を処刑した上、禁忌とされる呪法、魔族化の呪を用いて島民全てを魔族と化し、同時に全世界の魔族と人族に宣告を行った。口伝で伝わる内容を参考として記す。


「我こそは第二代魔王である。魔族の諸君よ、今こそ立ち上がる時だ。人族の不当な扱いに怯える必要は全くないのだ。彼の者達は諸君らよりも能力において劣っている。それ故諸君らを法や、或いは隷属の首輪で縛り付けている。それは正面から戦えば我らが勝利できるということに他ならない。集え! 我が元へ! 喪われた矜持を取り戻し、人族に再び我らの脅威を示すのだ!」


 この出来事はフルエンス事変と呼ばれ、魔族の地位向上と人族の意識改善を促すさきがけとなった出来事として歴史上で重要な意味を持つ。今日の魔族と人族があるのも、この出来事なしでは語れないだろう。


――――――


 興味本位で後世にボクの行いがどう扱われるのか気になって駄目だと思いつつ調べてみたらこんなことになっていた。未来を知っちゃうと面白く無いとか考えていたけど、それが気にならなくなるレベルで記事の内容がひどい。ボクが言ったことと丸っきり違うことが書いてあったし、なにやら歴史上の重要な出来事にまでなってしまっていたらしい。これはこれですごく面白いんだけど、間違ってもこんなことは言っていないしこんな喋り方もしてなかったんだけどなぁ? この本、島民の魔族化とボクがフルエンス諸島を占領したこと以外正しいこと書いてないよ……。

 ボクが言ったのは、「魔族の国作るから優秀な人材募集します」っていうことと、「人族の人はもう少し魔族を優しく扱ってほしい」ってことの二つをそれっぽく言っただけなのになぁ。


 さておき、ボクの最初の足がかりであるフルエンス諸島の攻略は完了したのだった。次はどこを取ろうかなぁ。

駆け足気味ですが、これにて一章終了となります。

二章以降もこれくらいのペースで進んでいく予定です。

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