駆け引きお嬢様
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「というわけでお仲間に加えて頂きましたベロニカですわ。よろしくお願いいたしますの」
ボク達は結局あてがわれた部屋に戻ってきていた。ここを出た時と違うのはお嬢様ことベロニカがついてきていることだ。今はベットに寝かされているけど。
ロベルト達はそのまま放置してきた。逆上して襲ってくるほど頭の悪い連中ではないだろうし、万が一また襲ってきたら今度は容赦なくこの世にお別れを言ってもらうだけでいいのだ。何も難しいことはない。
そんな些細な事よりももっと重要なのが目の前で楽しそうにしているお嬢様の処遇である。あろうことか彼女はボクの計画に一枚噛ませろとのたまった挙句、自分が領主になるとか言い出したのである。しかも理由が面白そうだからって。ボク個人としては納得行く理由だけど普通の人は納得しないだろう。そこら辺は分かってやっているのか天然なのか分からないからちょっと怖い。軽くどんな人物なのか確かめてみようかな。
「結局連れて来ちゃったわけだけど、思いつきで領主になるなんて言ったわけじゃないんですよね? 何かしら策があっての提案ですよねー」
「もちろんですわ。なんだったら軽くご説明いたしましょうか?」
どうやらちゃんと策は練ってあるらしい。考えなしで動くような人物ではないようだ。正直いいアイディアもないので策があるならそれに乗るのもやぶさかではないから、聞けるなら聞いておきたい。
「そんなに自信を持ってるなら是非とも聞かせてほしいね」
「簡単ですわ。あなた方がお父様方を蹴散らしてその後に私が領主になればよいのです。恩赦を出せば罪なんてあってないようなものですし、民からの不評だってすぐに気にならなくなるほどの善政を布けば問題ありませんわよね」
「それは策って言わないんじゃないかなぁ」
前言撤回、そんなに深く物事を考えていないようだ。
「策も何も、あなた方はこの諸島が欲しいのですから無駄に細かい手順を踏まずともその力でなんとでもできるではありませんか。むしろ何を気にしているんですの?」
ああ、お嬢様はボクの最終的な目標がわからないから、目の前の目標であるこの諸島の制圧がボクの大目的だと思ってしまっているのだ。確かにそれなら納得も行く。
しかしそうなると参るな。計画がもっと進んでいれば、打ち明けてもいいんだけど現状では彼女はまだ人族だから細かい事情が説明できない。困った。ここは話を逸らしておこうかな?
「まぁ色々と事情があるんですよ。それに貴女の病気の問題もありますからね」
「っ、私が病気? 一体何を仰っているのかしら?」
お嬢様の病気については一般には知られていないことになっている。あまり屋敷の外に出てこないのは、あくまで大事な一人娘を不埒な輩から守るためということになっているのだ。数少ない外出で民衆の心をつかんだお嬢様を守るためといえば、異議を唱える者もそういないのだろう。全く出てこないというわけでもないみたいだったし。
しかしそんな情報もボクの前では筒抜けになってしまう。ただ彼女の様子がデータにある症例とはちょっと違っているので交渉のカードになるのではないかと思って切り出してみたのだ。
「生憎とウチのリーズは優秀でしてね、屋敷の中のことなんかも大体は把握しているんです。貴女は間違いなく病人ですよ。病名はなんて言ったかな……。こういった世界観だとよくある病気の、保持する魔力が多すぎて身体に以上をきたすってやつでしょう? だからこそ貴女が平然と歩きまわってるのが不思議なんですけど」
「……どうやら隠すのに意味は無いようですわね。それにしてもよくある病気だなんて、私の罹っている『魔病』は自分で言うのもなんですが、そうかかるような病気では無いのですけれど」
「それは失礼しました。ただ人の身に魔力が流れている以上、その身には過剰な量の魔力が存在してしまうという病はある種起こりえて当然だとボクは思っていたので。ちょっと誤解を招く言い方をしてしまいました」
「ふふ、貴方も隠し事をなさっているようですね?」
「生徒たちには打ち明けていますよ。お嬢様に伝えてないってだけです」
「あら、どうしたら私にも教えていただけるのかしら?」
「貴女が人間やってる間は無理ですかねぇ」
なんというか、話してる内容がしょうもない。策の話をしていたはずなのにいつの間にか全く違う話をしてしまっている。
不思議とこのことに関して嫌に思うとかそういうことはないんだけど、如何せん話が進まなくて困るので、要点を手早く話すことにしよう。
「ま、最終的にこの諸島はボクのものにしたいので民衆の方々から少しでも不興を買いたくないっていうのが実のところです。貴女が領主になるっていうのもボクに都合のいい操り人形をやってもらえるなら大いに結構ですが恐らくそれじゃ満足なされないでしょう?」
「面白くはないでしょうし、私はまず満足しないでしょうね」
短時間だけど彼女と話してそれとなくどんな考え方をする人物なのかもわかってきたからこの提案が通らないのも想像通り。結局アイディアも無しかー。生徒たちも長話に飽きて各々が自由行動始めてるし。
「民からの不興が気になるなら、それをどうにか出来る情報があると言ったら、貴方は信じてくださるかしら?」
「そんな情報があるなら最初から教えて欲しかったですね。リーズの報告にない情報だとしたらなおさら」
「私が直接聞かされただけの事なので恐らくは把握されていないと思いますわ。勿論お教えするには条件がありますけれど」
「……大体の予想はつきますけどね」
ボク達は、作戦成功後にベロニカ=ガゼットお嬢様に最大限便宜をはかることを条件に領主様の秘密を聞き出すことに成功した。




