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お主も悪よのう

「ふむ、貴様があの龍人共の主か。貴様のような魔族などと馴れ合う者など反吐が出る。よくもまあ俺の前に顔を出せたものだな?」


 ボクことエイシャ・アーカーは反乱軍の本拠地であるロイユ島にやってきていた。ミゲルの反応も予想通りなので、特に動揺することもなく演技を続けることにした。


「ミゲル様、慣れ合うなどと末恐ろしいことを仰るのはどうかお止めください。彼奴らは私の奴隷でありますので。奴隷を使うのに馴れ合いなど必要ありませぬゆえ」


 敬語全開、一人称も私、にしておく。事前の調査でこのミゲルという男が典型的な貴族思考の持ち主であることは既にわかっているのでひたすら下手に出ておく。扱いやすい事この上ないし、頭もそこまでよろしくないようなので操るのは大して難しくはないだろう。領主様には申し訳ないが、バカな息子を産ませてくれて感謝の気持ちが絶えない。

 ミゲルに見せるボクの顔は、魔族を酷使する区別派の人間ということにしている。生徒たちには申し訳ないけど、彼女たちはボクの奴隷ということにしておいた。奴隷制度が存在して本当に良かったなー、言い訳が簡単だもん。この世界は中々にボクが動きやすいような仕組みになっているようにも思えてくるね。


「フン、貴様の奴隷のせいで愚かな島民共が魔族に対して本来するべき区別を弱めているとも聞いているがな。そんなことにも考えが及ばぬような貴様も大したものではないのだろう」


「恐れながらミゲル様。あの程度で意識を変えるような者共はいずれ区別を止めろなどと言い出していたと思われます。所詮は下賎な平民どもですから、人族であることの誇りなど持ちあわせていないのでしょう。その点、貴族であることの誇りを失わないミゲル様は高潔な人物かと。私はミゲル様こそこの諸島の領主となるに相応しい人物かと考えております」


「ただ愚かなだけの男ではないようだな? ただ一つ貴様は間違えている。俺はこんなチンケな諸島で満足するような男ではない。この諸島を足がかりに、いずれは公爵まで昇りつめることになるだろう」


 根拠は分からないがものすごい自信だ。笑いを堪えるというのも中々に辛いことなのだから勘弁してほしい。ちょっと肩が震えちゃってる気もするし。


「どうした肩を震わせて?」


 あ、バレた。


「さては、俺の大望を聞いて感動に打ちひしがれているといったところだな? 貴様、愚かではあるが中々見どころのあるやつだな。名乗るが良い」


「……っくく、え、エイシャ・アーカー……と申しま、ぐぐっ、申します」


 笑いを堪えるのに忙しい。もはや体裁を気にしている場合じゃない。早くこの場を切り上げないと……。


「そうか。アーカーとやら、俺は貴様を気に入ったぞ。まずは自慢の奴隷たちでも見せてもらうことにしようではないか。いいな?」


 笑いを堪えている場合じゃなかった。ふぅー、落ち着いて落ち着いて。ここでボロを出す訳にはいかないのだから。最初から傍らに控えていたラヘンさんに命じる。


「おい、奴隷共を連れてこい。早くしろ」


「かしこまりました」


 もちろん彼も奴隷ということにしてあるので首輪装着済みである。事前に説明してあるとはいえ乱暴に命じるのは心が痛むけどしょうが無い。


「アーカー、貴様は随分と龍人がお気に入りのようだな? 彼奴らは希少な種にもかかわらず6匹も奴隷にしているとは、いくら使ったのだ貴様は……」


「いえ、アレらは私が直接捕らえた者たちです。魔族というのはどうも頭が悪いようで、ちょっと優しくしてやるだけで簡単についてきますのでね」


 下衆い笑みを浮かべてきたのでこっちも下衆い笑みで返しておく。さっきから口からでまかせしか言っていないのだけどそれに気づく様子もない。お前大陸への留学中なにやってたんだよというお話である。


「貴様は魔族の扱いを心得ているようだな。奴らのようなのは我ら人族におとなしく従っているのが正しい姿よ。先ほどの龍人族も随分と従順だったようだし、残りの奴隷も十分に躾けてあるのだろうな」


「いえいえ、私のようなものでは奴隷の反抗心すらまともには押さえつけられませんよ」


 なんでこんなことをと思いながら謙遜しつつ、ラヘンさんが戻ってくるのを待つ。流石にバカの相手をするのにも少々辟易してきた。


「奴隷共を連れて参りました」


「入れ」


 扉を開けてまずラヘンさんが入ってくる。その後にぞろぞろと我が生徒たちが続いてきた。彼女たちの顔は一様に暗いし、眼は割と死んでいる。身体にまとっているのもボロ同然の布で、彼女たち自身も薄汚れていた。……本当にごめんね、後で埋め合わせは必ずするから今だけは我慢して!


「ほう、話には聞いていたが本当に全員がメスなのだな? しかし十分に反抗心は奪われているではないか」


「まともな方法では押さえつけられないのならば、外法を使うまでですよ。どうでしょうか、私のコレクションは」


 コレクション、と言ったのは龍人を集めているのが蒐集目的で在るということを強く印象付けるためである。これによって多少のおかしな行動にも目を瞑らせることができると考えたからだ。例えば、


「ミゲル様、先ほど貴方の部下が私のコレクションに無粋にも触れようとしたようです。申し訳ありませんがこいつらに反抗させましたが、お許し願います。私にとって自分以外の者が我がコレクションに触れるというのは耐え難いことなのです」


 というトンデモ理論を口にしてもある程度の整合性は取れる。奴隷という形式をとっている以上彼女たちに手を出されても文句を言えないのでは困るのだ。あくまで振りなのだからそんなことは万に一つもあってはこまる。


「うむ、俺もコレクションを持っているからよく分かる。部下にも命じておこうではないか。しかし部下を簡単に退ける程の力なら戦力として期待できるだろうな?」


「ありがとうございます。もちろん戦力として投入することは吝かではありませんが、壊さないようにお願いしたいものです。そうなった場合は……」


「言わなくていい、それくらいは分かる。クク、俺はツイているな。これほど面白い奴を味方にできるとはな?」


 なんとかミゲルに取り入ることは出来たようだ。というか予想よりも気に入られている節すらある。まあ損はないので良しとしよう。こっちの要求も全部通ったしな。


「よし、アーカー。今は下がれ。追って貴様にも指示を出そう」


「かしこまりました。おい、戻るぞ。グズグズするな」


 ようやくこの空間から脱出できることを喜びながら部屋を後にした。


――――――


 ミゲルの部屋を出た所で、部下らしき人物に割り当てられた部屋に案内された。生徒たちも同じ部屋でいいと告げると怪訝な顔をしたが、コレクションは常に手元においていきたいと言うと得心したようで去っていった。


「この部屋を密封しろ、できるな?」


「……かしこまりました」


 ルドに部屋を防音、透視阻害しようにしつつ、それに準じる魔導具を機能停止するように指示する。これをやらないとどこから計画が漏れるのか分かったものではないのだ。


「ん、終わった」


「はい、お疲れ。皆もお疲れ様。演技とはいえあそこまで言っちゃって本当にごめんね?」


「先生の演技、まさに迫真の演技でしたね。わかっていても不安になってしまいました」


 うふふ、と笑みを浮かべながらユアンにそう言われてしまうとやりすぎたかな、とも思ってしまう。不安になる、というのはおそらくボクが本当にそんなことを考えていないかどうかということなのだろう。ボクが嘘付いてるがどうかなんかは彼女が一番良くわかっているはずなのだけど、それでも不安になるということはそれだけ皆の心の傷が深いということなのだろうか。

 単にボクの演技が凄かったとも考えられなくもないがその線は残念ながら無いだろう。


「せんせー、僕はそろそろ領主様の方にむかうけどだいじょうぶだよねー?」


「ああ、頼んだぞリーズ。しっかり現状報告してきてくれ」


 おっけー、と言うとリーズはその場から掻き消えた。一体どうなっているんだ、目線を合わせていたはずなのに消えるとか達人でも出来ないじゃないか。


「ルド、準備の方は進んでいるかな?」


「大丈夫……、使い魔をとばして魔法陣はほぼ完成してるよ……?」


「そっか、よくやってくれたね」


 何回目かわからない予想以上の結果をもたらしてくれたルドの頭を撫でる。こうすると本当に妹ができたみたいだな。


「さて、次の段階に移ろう。ラグ、準備はできてる?」


「おお! アタシなら何時だって準備万端だぜ!」


「それじゃ領主様の娘さん誘拐よろしく。直接この部屋に連れてきてね」


 ラグにも指示を出して、ようやく一息。何気なく頼んでいるが実はこれが作戦の要だから必ず成功してもらわないと困る。

 よーし、疲れちゃったし休もうっと。


「それじゃ、ボクは一旦休むことにするよ。誰か来たら起こしてねー。おやすみー」


 ベッドに飛び込んで目を閉じる。休める時に休むのが肝心なのだ。


「ユアン、こういう事態だと私たちは些か暇だな」


「うふ、しょうが無いわよ。私達の力が必要な時にしっかり働きましょう?」


 ユアンとレイシアが何やら話していたが、すぐに襲ってきた睡魔に負けて何を話しているかはよくわからなかった。

4/28 文章を修正

5/12 誤字修正

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