表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/33

16 霊廟にて

 ぽつん、額に(すい)(てき)が当たった。ぽつぽつ、ぽつ。(なみだ)のように(ほお)からこぼれて、(くび)(すじ)へと流れ、()らしていく。

 雫玖(しずく)はうっすらとまぶたを開いた。(うす)(ぐら)(いわ)(はだ)が目に入る。手足に力が入らない。注意深く身体を起こしてみる。――なんの(にお)いだろう。つんとする()(しゆう)が鼻をついた。

「ここはどこ」

 それは、六階建ての(こう)(ろう)がすっぽり入るくらいのだだっ広い(どう)(くつ)だった。

 八方に松明(たいまつ)がともされているが、天上にも明かり取りの(あな)が複数開いている。

 (いや)、あれは(けむり)とこの(にお)いを(のが)すための(あな)だ。どうやら雫玖(しずく)()かされていたのは広場の中央で、(うす)(ぐら)(こう)(どう)(かべ)にいくつも開いている。

「ようやく目覚めたか。ここは、(れん)の王都から半日くらいの(きよ)()にある地下墓所だ」

 ()()みのある声にはっと横をむくと、三(じやく)ほど(はな)れた地べたに()(なん)胡座(あぐら)をかいていた。わけがわからない。()(おん)(しよう)(ちゆう)(たま)、立太子の()の主役が、なぜこんな場所に。

 (かれ)()す場からは、同心円状に(ゆか)(れい)(じん)(えが)かれていた。

 古代術式のようだが、どこの文字だかまでは判別できない。

()(なん)? ちょっと待って、あなたも(とら)われたってこと?」

「動くな、雫玖(しずく)。自分の周囲を見てみろ」

 打つような声だった。ぐるり、見回してみると雫玖(しずく)もまた、(れい)(じん)の中心にいる。

「気をつけろ。この(れい)円から出たら、()(かい)(かしり)が発動する仕組みだ」

「なんで? どうして()(なん)まで」

「真実を知った(わたし)が、(ひよう)(また)に逆らったからだ。あっけなくやられて、このざまだ……」

 ()(なん)(つか)れた顔で笑った。前合わせの(むな)(もと)(ゆる)めてみせる。雫玖(しずく)は息を飲んだ。その(むね)まわりには黒(へび)()きつき、ちょうど(しん)(ぞう)()(しよ)に頭が半分()まっていた。

「おまえの黒(へび)と同様の(かしり)だ。たとえこの(えん)(じん)から(だつ)(しゆつ)できても、(やつ)の言うことを聞かなければ、(へび)(しん)(ぞう)を食いちぎられるという(すん)(ぽう)らしい」

(しん)(ぞう)って、(うそ)、なんでそんな話になってるの?」

「もし雫玖(しずく)(きず)つければ、(おれ)は王太子にはならんと言ったんだ」

 ふんと鼻を鳴らす姿(すがた)(むね)()かれた。

 まさかこの従兄(いとこ)が、そこまで自分を気にかけてくれていたとは。

「それ、本気で言ったの」

(しつ)(けい)な。あたりまえだ。(わたし)にだって人の心はある」

「ごめん。ありがと。()(なん)はいつからこの墓所にいたの?」

「二日前だ。その時はまだ、(わたし)とおまえの他に(じゆう)(しや)が三人いたが、残念ながら(みな)(かしり)が発動して死んでしまったよ」

 その言葉で、()(すじ)が総毛立った。もしやこの(にお)い。

 これは(こう)(どう)から()れてくる、(くさ)りかけの死体の(にお)いなのでは――。

「本当にすまなかった。まさかこの(かしり)が、これほど(あぶ)ない(じゆ)()だったとは。雫玖(しずく)(かみ)を下ろしたのも(かしり)のせいだそうだな。(もう)(わけ)ない。世にも()(れい)(りよく)(はつ)であったのに」

 (わたし)はただ、おまえを手に入れたかっただけだったのにと()(なん)(つぶや)いた。

「まだ時間はある。まずは(おれ)の話を聞け」

 すすけた(ころも)(えり)を正して、()(なん)は息を()く。

 ――そうして雫玖(しずく)が聞いたのは、(むね)の悪くなるような真実だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ