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その夜は屋台で二人、夕食を食べたあと、部屋数が五十近くもある立派な旅籠に泊まった。凪とは別室、琥珀とは当然のように同室で。
なんとなくそうなるだろうと予測していたので、驚きはしない。
先に寝ろと促され、二人用の寝台の端で猫のように丸まっていると、背後で寝台がきしみ、大きな影が寄り添ってくる。やはり今夜もだ。身体ごと抱えるように引き寄せられ、黒蛇のはまった左手首を撫でさすられて、雫玖は窓の外を眺めた。
蓮国より沙州の三日月は大きくて眩しい。
だから――これは視界を暗くして眠るためには、致し方ないことで。
寝返りを打って固い胸に顔を埋め、腰にしがみつく。
すぐに背中へ長い腕が回される。
薄荷に似た清涼な香り。琥珀の匂い。人肌がひどく温くて、たまらなく安心する。
いつのまにか、こんなふうに抱き合って寝るのがあたりまえになってしまった。
男女の営みは一切ない。
ただお互いを確かめるだけの触れあい。
きっとこんな夜は長く続かないだろう。けれど琥珀も雫玖もまるで時を惜しむように、身体を密着させている間には一言も発しなかった。




