10.天界最強の俺、ルークの年齢を知る
「18…俺は18歳か。」
『18って言ったらもう成人してるんだよな…。』
「成人?それはなんだ?」
『まぁ簡単に言ったら子供から大人になるってことだ。』
「子供から大人に…」
『成人は16だから…成人してからもう2年経ってるな。』
『あの〜お手続きは以上でよろしかったでしょうか?』
窓口の男性が申し訳なさそうに言った。
『あぁすまない!助かったありがとう。』
『はい、では再発行手数料で大銅貨1枚になります。』
ルークは財布から1枚の硬貨を取り出すと銀の器に置いた。
窓口の男性はその器に付いている小さなボタンを押すと逆さまにひっくり返した。そして、また元に戻すと笑顔でお礼をいった。
『ありがとうございます、ちょうどですね。…では失礼いたします。』
〝ギギギ〟
また机が動き出した。宙を浮き、そして横にスライドして元の位置にすっぽりとはまった。
『よし、次は3番だな』
ルークは《5》の札を抜くと《3》の札を差し込んでまたベルを鳴らした。〝ジジジ〟
2階の真ん中の机がまたギギギギと音を鳴らしながら前に飛び出してきた。
〝ヒョコ〟
まだ机は横に動いている最中だ。上から誰かの顔が出てきた。そして、
『おぉー!ルークじゃないか、久しいな!』
その声は少し遠いからか僅かに反響していた。
『げっ』
ルークは渋い顔をするとボソッといった。
『…これは面倒な人に当たった』
そして、こっちを向くと真剣な表情でいった。
『ハーファン、覚悟した方がいい。』
「え?」
机が下に降り始めた時だった。まだ窓口にはまっていないのにその男性は話し始めた。
『最近見なかったが元気にしておったのか?そいやぁお前のお父さん、ラハンと最近あったぞい!果物を切る小型ナイフを頼んだんじゃがそれはもう素晴らしい切れ味じゃ、さすがラハンじゃな!…』
まだ半分程しか降りてきていない。
『そうじゃ!お前の姉さんのあれ、えっと…あの、あれじゃ…そう!ノアにもあったぞ!あれはいつ見てもべっぴんさんじゃ!甥っ子のカイルももう3歳じゃとあれはハンサムになるぞい!』
〝チン〟
現れたのは小柄なおじいさんだった。髪も髭も白くチリチリになっていて、腰も少し曲がっていた。
【親父よりも年上そうだ…ただ、親父より元気そうだ。】
『…それでじゃな』
『まってくれ!!ローレンツのおじいさん!』
『ん?どうしたんじゃルーク。』
ルークは手をぐっと前に突き出すとおじいさんの前でブンブンと振っている。
『今日は急ぎなんだ!だからあまり話はできない!また暇な時に遊びに行くから今日はとりあえずこいつの住所変更してくれ!』
〝ドンッ〟とハーファンの肩を叩きそして前に押し出した。
「ど、どうも…」
ローレンツは目をぱちくりさせると
『おぉ!これはハンサムな兄ちゃんじゃ!髪もサラサラで綺麗な黒じゃな!背も高めじゃしこれは女性にモテモテじゃろーな、羨ましい限りじゃ!どこの…』
ローレンツのものすごい勢いにびっくりして少し後ろに後ずさりしてしまった。
『まてまてまて!おじいさん!』
『ん?なんじゃルーク。』
『急ぎだって言っただろ、い・そ・ぎ!頼む、住所変更をしてくれ!』
『あぁ、そうじゃったそうじゃった、すまんすまん!すぐにやるぞい。』
ローレンツはケースにしまってあった度が強い丸い縁のメガネをかけるとコホンと咳払いした。
『それで…兄ちゃんの住所をどこに変更するんじゃ?』
メガネの度が強すぎるせいだろうか、目が2倍になっている。
『俺の家で登録して欲しい。これだ』
ルークは自分の身分証を渡した。
『はい、分かった。すぐに手続きする。』
俺はチラッとルークの身分証を横目で見た。
【23歳?ルーク23歳だったのか?!俺とあんまり変わらないってのにこんなに差があるもんなのか?】
『…兄ちゃんの身分証も預かっていいかね?お兄ちゃん?』
「…あ、はい。すみません。」
手に持っている身分証をすぐに渡した。
ローレンツはルークの身分証を目を細めながら見るとものすごいスピードで黒い石版に文字を書き始めた。
書き終わったのか羽ペンを机に置くと溝にハーファンの身分証をはめ込んだ。
〝カチッ〟…〝ピロン〟
『よし、できたぞい。…じゃが、これは、なんど、やっても、上手く取れない。』
ローレンツは一生懸命溝から身分証を何度も何度も取りだそうとしているが、どうやら苦戦しているようだった。
『…よし、できたぞい。』
ローレンツはルークと俺、それぞれに身分証を手渡した。
『ありがとう!おじいさん!じゃ、今日はこれだけなんだ。また遊びに行くよ!』
そう言うと俺の肩をぐっと掴んで足早に出口に向かった。チラッと振り返るとローレンツが何やらまだ話しているみたいだが、机は上がって行ってるので問題は無さそうだ。
『ローレンツのじいさんは実家が近所でな、昔っからああなんだよ。悪い人ではないんだけどな〜』
と苦笑いをした。
〝チリンチリン〟
『ありがとうございました〜!』
受付のお姉さんの声が聞こえる。
『あぁ!ありがとう!…よし次は冒険者ギルドだな。』
2人はまた肩を並べて歩き出した。
「ずっと思ってたんだが、なんでみんな器をいちいちひっくり返すんだ?」
『器?』
「そうだ。硬貨を渡す時に置くあれだ。みんなひっくり返してる。」
『あぁ!あれは核魔石が引っ付く器だ。随分前だが偽物の硬貨が流通して大変だったんだ。そこで登場したのがあれってわけだ。』
「どうやったら見分けられるんだ?」
『硬貨は全て核魔石が含んでいる。だからあの器に置いて確認するんだ。引っ付いたら本物、落ちたら偽物だ。』
「なるほどなぁ…でも、偽物に核魔石入れたら済む話じゃないか?」
『いや、それは難しいだろうな。なにせ核魔石はとても硬い。人の力じゃ加工できん。』
「ん?…じゃあ誰が加工してるんだ?」
『そんなのエルディア様に決まってるだろ?』
「お、エルディア様?!」
【あっぶねぇー!親父って言うとこだった…。まさかここで親父の名前を聞くことになるとは思わなかった…】
『そうだ。年に1度、国で決めた分の硬貨の材料、つまり銅、銀、金、ミスリル、そして核魔石を一緒に神様に送るんだ。んで、少ししたら硬貨になってドーンと戻ってくる。どの国もそうだぞ。』
「親父、そんなことまでしてるのか…」ボソッと言った。
『…?なんだ?』
「いや、すごいよな!でも器にはどんな仕掛けがあるんだ?核魔石を引っ付けるなんて…」
『簡単だよ、魔石を含ませて特性を持たせたんだ。』
俺は首を傾げると聞いた。
「え、魔石は硬いから人には加工できないって言ってなかったか?」
『あ〜それは核魔石だ。魔石とは全くの別物だな。』
「なるほど…」
『魔石を使えばいろんなことができるぞ…よし、着いた。続きはまた後だな!』
ルークはぐっとドアを引いた。
〝カランカラン〟
大きな鐘の音がなった。




