8.天界最強の俺、初めて人間に会う
下界に降りて既に10分程たっただろうか。
モルディアはまだ尻もちを着いたまま起き上がろうとしなかった。
ずっと放心状態だったがついに動き出すようだ。
とりあえずなにか情報を得ないと…
周りを見渡したがやはり天界とは違うみたいだ。
それにしても…下界って親父が一から創り上げたんだよな、、、。なのにどうしてここから親父の神聖力が全く感じられないんだ…?
なんか教えてもらった気がするんだけどなぁ…なんだっけ…?
しばらく考え込んだ後、思い出したようでハッとして「あー!!」っと叫びながら勢い良く立ち上がった。
その瞬間誰かの驚く声が聞こえた。
『うわぁー!!!!』
その驚く声に俺は驚いた。
「うわぁーー!!!!」
そして咄嗟に後ろを振り返った。
そこには毛が茶色の顎に髭を生やした男が重心を低くしてハァハァと息を切らしている。
『急に叫ばないでくれよ!驚いただろ!』
「そ、それはすまなかった。」
俺はその男に咄嗟に謝ってしまった。
男はすぐに姿勢を正すと申し訳なさそうに話し始めた。
『…いや、俺も悪かった。すぐに話しかければ良かったのに様子を伺って近付いたのがいけなかった。謝らせてしまって悪かったな。』
「いや、いいんだ…。えっと、それで…お前は誰だ?」
俺はずっと抱いていた疑問をその男に投げかけた。すると、男は咳払いをすると話し始めた。
『あぁ、挨拶が遅れたな。俺はこの先にある街リュミエールで冒険者をしているルークだ。こんな危険な森の中でひとりで座り込んでいる男がいたからついつい観察してしまった。嫌な思いをさせてしまったなら申し訳なかったな。』
そう言って男はこちらに手を突き出した。
【リュミなんちゃら?冒険者??何を言っているのか理解ができない…】
「ほら、握手だ。」
ルークと名乗る男は俺の手をギュッと握ると、上下に少し揺らした後手を離した。
「それでお前はなんて名だ?ここで何してたんだ?」
『あ、、あぁ』
俺は少しだけ話すのを躊躇ったが、男の雰囲気がどこか親父に似てたからだろうか…気付けば口を開いていた。
「俺の名前はモルディア。天界にいたが今さっき親父にここ下界に突き落とされた。とりあえず生きていくためにどうしようか考えていた所だ。」
俺は簡潔に現状を伝えたつもりだったが男は首を傾げて何も返事をしない。それどころか大きな声で笑い始めた。
『ガッハッハー!天界?下界ってのはなんだ?下界に突き落とされて今ここにいるってことはここがその下界か?残念だがここは大森林セレナだ。…見るからに歳は18ってことこだろ?記憶でも無くしたのか?』
こいつは何を言ってるんだ??
「??俺が18??いや、ついさっき150になったばかりだ。お前は俺より少し上くらいか?何歳だ?」
男は一瞬ポカンとしたが、すぐにまた笑い始めた。
『おいおい150??なんの冗談だ?そんな歳ありえないだろう!ガッハッハー!』
【俺はなぜ笑われている?何も間違ったことは言ってないぞ?】
男は急にハッとして真剣な表情になった。
『おい、まさか本気なのか??』
その質問に俺は即答した、「そうだ。」と。
男は驚いた顔をした。そして少し俺に歩み寄ると話し始めた。
『からかってすまなかった。記憶が曖昧…いや、記憶喪失か。』
「記憶が曖昧?そんなはずは…」
『いや、いいんだ!何も心配することはない。俺についてこい!今から街に戻るところだ。もし良かったら俺の家に泊まっていけ!』
男はそういうと背中を一発ドンッと叩くとそのまま横を通り過ぎて行き、そのままスタスタを歩き始めた。
俺はその背中を見つめたままその場に立ち尽くした。
『何してるんだ?どこも行くところがないんだろ?安心しろ、悪いことはしないさ。俺に着いてこい。』
男は振り返って言うとそのままこっちを向いている。
【あぁ、もう何が何だか分からない!だけどこのままあそこにいたってどうしようもない。こいつ悪い奴では無さそうだけど…】
俺はしばらく考えたが賭けに出ることにした。
「…すまない。よろしく頼む。」
そういうと俺は歩き出した。
男はニコッと笑うと俺がそばに来るまでそのまま待っていた。そして追いつくと肩を並べて歩き出した。
ザッザッ足音が重なり合う音だけが広がるなか、男が話し始めた。
『…俺が住んでいるのはアルセリオ王国で1番大きい冒険者の街、リュミエールだ。』
「…さっきも思ったが…その、冒険者ってなんだ??」
『おい、そこからか!
…いやそうだよな、歳が分からないくらいだからなぁ…もしかして名前も違うのか…?』
男は驚いた様子でボソボソと何かを話している。
「お前、どうかしたのか?」
『いや、なんでもない!あ〜ただ俺のことはルークと呼んでくれ。』
「あぁ、分かった。じゃあ俺のことはモル…」
『それでだな!』
ルークは俺の言葉を慌てた様子で遮るとまた話し始めた。
『冒険者って言うのは職業の一つだ。魔獣を狩ったり、薬草を採集したり…とにかく依頼人の依頼を受けて報酬を貰うことを生業にしている人のことだ。あぁ、あと創造神エルディア様が各地に建てたダンジョンを攻略するのも冒険者が多いかな。』
「あぁ、ダンジョンって親父が建てたやつか…それで…その魔獣って強いのか?」
『…親父?エルディア様のことか?どういう記憶の無くし方だ?もしかして…妄想癖か?』っとひとりでまたブツブツ話していたが、声をもう一度かけると俺の質問にすぐに応えてくれた。
『あ、あぁ!魔獣は基本7段階にランク分けされていてな、EからA、S、SSの順番に強くなっていく。SSランクの魔獣は現時点ではダンジョン以外では出没しないが200年前には各地で発生していたらしい。ちなみに恐ろしい程強いぞ。』
ルークは顔を強ばらせて俺を脅かすように身振り手振りをしながら話した。
「そうか…魔獣か、面白いな」
ニヤッと笑うモルディアの様子を見てルークは真剣な表情で指摘してきた。
『何を考えているか分からないが、悪いことは言わない。見るからにお前は弱そうだ…C以上の魔物に出くわさないようにこの森にはもう入らないようにした方がいい。』
「何を言っている!俺は天界最強だぞ!!俺より弱い者がいても、俺より強い者がいるわけないだろ!」
モルディアは足を止めて声を張り上げた。
ルークは一瞬ポカンとしていたがすぐに笑い始めた。
『ガッハッハー!何を言っている!』
「なんだよ!」
『お前は弱いよ。だって…今だって魔力を体に張り巡らせていない。触れた時に全く体から魔力が感じられなかった…コントロールができないんだろ?』
ルークはビシッと俺に向かって指さしをして言った。
「魔力?なんだそれは?」
『…そうだったな。えー、簡単に言ったら体の中にある魔素量だな。』
「魔素?魔力…あぁ、神聖力みたいなものか…?」
『神聖力?それは分からないが…体に特に腹の下あたりに力を入れるとなにか感じるものが少しはあるはずだ。…ガキでも感じられるものだぞ、1度やってみろ。』
…力を入れる?
とりあえず聞いたままグッと下腹部に力を入れてみた。力を入れてからしばらくたった。
ポワァ…
【あぁ…この感覚】
『なんか暖かい感じしたか?』
「あぁ。」
【神聖力となんだか似ている感覚だ…これが俺の魔力か。】
『魔力量が大きければ大きいほど色んなことができる。これは鍛えれば増えていくものだから小さいころから特訓をする人が多いんだ。』
「特訓…それで俺は多いのか?」
『おいおい魔力量を測ることなんて誰もできないぞ。街にいったら測定できる機械があるから、知りたかったらまた連れていくぞ。』
「そうか…ありがとう。」
『よし、行くぞ。』
【そういえば親父が神聖力は体に閉じ込めたとか何とか言っていたけどあれって本当か?】
モルディアは少しだけ立ち止まって考え込んだが、
『おーい?』と言うルークの声でまた足を進めた。
こうして再び2人は街に向かって歩き出した。




