第六話 分かれ道 / 成
俺の人生が変わる予感がした。
男は自分のことを指差してニカっと微笑んだ。
「僕の名前は華一秀。君の名前はなにかな?」
助けてくれた人に失礼な振る舞いをしないように俺は辿々しく答えた。
「おれの名前はクルイです、、推薦ってなんですか。」
目を合わせて話せた。俺はやっぱりコミュニケーション能力が高いのかもしれない。会話適性◎だったのかもしれない。そんなことは置いといて、秀と名乗る男が今回の件について簡潔に話してくれた。
この人はヒーローとは別の仕事をしているそうだ。彼は伏師というらしい。内容としては、先ほど俺が見てしまった祟りという化け物を鎮める等だという。
「わかったかな?君はさっき祟りに遭ったんだ。
しかも念の強い祟りだったよ。それから逃げて反抗してたんだ。だから君とお話しがしたいんだ。」
怪しい。でも、この人にはなぜか惹かれる。人柄の良さなのか、いい人感が溢れている。クルイは彼を信用してそのまま車に乗って着いて行った。
運転は違う人が行った。専属の運転手かな?
俺の住んでいる場所から少し離れた山奥へと向かう。
これは、、、もしかして騙されたのか?
拉致られる、、?
そんな恐怖もあったが、秀さんは車内でも優しく話しかけてくれていたため、そんなはずはないと言い聞かせた。
山道を登っていると急に昔の学舎が目に入った。
その周りには和風で華やかな建物が並んでいた。
「うわー綺麗やな」観光地などに行かない俺はその景色に感動した。
「ここが学校と本部だよ。綺麗だろ。」
秀さんが止めた車から降りてこっちに来いと言わんばかりに手招きをした。
校舎の中に入るとテストをすると言われた。
俺は引きこもってて学校には通っていないと秀さんに伝えた。でも、そんなことは関係がないらしい。
そんなことで済む話なのかな?
テストとは、俺が祟りと戦うに相応しい力を持っているかを測るそうだ。試験の部屋に行くと3人の大人が奥の方で座っていた。ここで何の試験をするんだろうか。
「祟りはねぇ、見える人は居るんだよ。でも、みんなそんなこと気づいても対抗できないんだよ。だからポテンシャルのある君をスカウトしたってわけ。でも一応テストはするよ。」
確かに祟りに遭ったとして普通はそのまま死ぬやろうな。うんうん。
「じゃあ内容としては、そこの機械を倒してみて。
こいつには妖気を纏わせてるからさ。これと戦えるなら是非うちに来てほしいね。じゃあ頑張って。」
1メートルくらいの大きさの機械と戦わされるそうだ。
やり口が詐欺だな完全に。俺も見習おう。
機械は何か特別なことをするわけではなく物理攻撃をしてくる。素早さは大したことないが一撃が重たい。
くっそ、機械やからって舐めて一撃入ったわ。
普段なら当たらんのに、くっそ。
この男は移動も速く、拳も硬いが防御は全くない。
故に、一撃一撃が敗北を近づけるのである。
やばいな…集中が切れて何発か入った。壁の方にも追いやられている…
だけど、こう言う時に勝つって
気持ち良いんだよなぁ!
これが人間だと想像しよう。相手が有利な状況から一気に敗北したらどうだろうか。どんな顔するかな?
想像するだけで力が溢れるなぁ!
俺の攻撃が機械に入って、機械のパーツが壊れた。
俺が勝ったと言うことだな。
「ハハッ、やるね。君を伏師の卵として迎えるよ。」
秀さんがニコッと微笑み歩いてきた。
俺は、ヒーローになる前に怪しい組織に入ってしまったのか?
「嬉しいんですが、俺はヒーローを目指しているんです…言うのが遅れてしまいました…」
本当に言うのが遅れてしまった。今考えれば、推薦を断るべきだったのかもしれない。
だけど、人からの期待が嬉しかったんだ…
秀さんは少し複雑な顔をした。
「実はね、僕たちの使う妖気とヒーローが使う異能力っていうのは反発するんだ。だから異能力を使いこなせば妖力は減るし、僕も異能力なんて使えないんだよ。」
なるほど、だから祟りを鎮めるにはヒーロー以外のこの人たちが必要なのか。
「でもね、クルイはさっき妖気を含んだ拳を使いながら高速移動っぽい異能力を使ったんだよね。そんな人いないんだよ。自分の体で発現したものなら、どちらかは消えていくんだよ。」
伏師の人たちは妖気を使う分異能力を使う力が無くなる。だから、どちらも使いこなす人はいないそうだ。
俺は特別な人間だったのかもしれない。
俺が見て来た人間は、俺より下なのか…へっ。
「まぁでも、そういう特異体質なのかもね。君はどちらも目指せるんだ。なら、ここで自分の力を磨かないかい?」
俺は今からヒーローの学校に通えるわけない。
なら歓迎されているここを断るわけにはいかない。
断る理由もない。
「俺は今は弱いけど、いずれは一番有名な男になります。」
秀さんは鼻で笑った。でも彼の顔は嬉しそうに見えた。
「じゃあ俺より強くなれよ?引きこもりボーイ。」
俺のカバンから電話が鳴る。
俺はネロアの試験待ちだったことを思い出した。
その後、電話で死ぬほど怒られた。
最低だ…俺って。




