借金の闇と魔王軍幹部との死闘」
異世界転移から一週間が経った。俺、広瀬レオは【神器創造】で作った豪邸「レオネス荘」のダイニングルームで、朝食を取りながら借金返済の計画を練っていた。
「レオよ、この卵焼きは絶品だな」
テーブルの向かいでは、50センチほどの大きさに変身した古代竜カイロスが、俺の【料理マスター】スキルで作った朝食を美味そうに頬張っている。人間型のときは銀髪金眼のイケメンだが、今は可愛いドラゴンの姿だ。燃費節約のため、普段はこのサイズでいることが多い。
「まあな。前世でも料理は得意だったからな」
俺は苦笑いしながら、手元の借金明細書を見つめた。
**借金残高:999億334万セルン**
**月利:15%**
**返済期限:残り23日**
「しかし、レオよ。お前はまだ課金システムの本当の恐ろしさを理解していないな」
カイロスが突然真剣な表情になった。5000年生きた古代竜の瞳に、深い憂いが宿る。
「まだ恐ろしさがあるのかよ...」
「ああ。複利計算というものを知っているか?」
「複利?なんとなくは...」
俺の曖昧な返事に、カイロスは大きくため息をついた。
「月利15%というのは、毎月借金が1.15倍になるということだ。つまり、1年後には...」
カイロスは空中に魔法で数式を描き始める。
**999億 × (1.15)^12 = 約5165億セルン**
「5000億超えるのかよ!?」
俺は思わず立ち上がった。卵焼きが喉に詰まりそうになる。
「そうだ。そして2年後には約2兆6700億セルン、3年後には約1兆3800億セルンになる」
「桁がおかしいって!国家予算レベルじゃないか!」
「それが課金システムの真の恐ろしさだ。この世界の神々は、転移者を永続的な金のなる木として利用している」
カイロスの説明は続く。この異世界アルカディア大陸の経済は、転移者たちの借金によって大部分が支えられているのだという。転移者が稼いだ金は即座に借金返済に充当され、それが各種族や国家の税収となり、社会インフラの維持費用となる。
「つまり、俺は金融奴隷ってことか」
「その通りだ。そして最も質の悪いのは、このシステムを作った神々が『転移者の幸せのため』と本気で思い込んでいることだ」
俺は頭を抱えた。チートスキルを127個も取得したのは確かに俺の判断だが、まさかこんな罠が待っているとは思わなかった。
高額依頼の発見
ノルム町の冒険者ギルドに到着すると、受付嬢のミアが心配そうな顔で迎えてくれた。
「レオさん、カイロスさん、おはようございます。今日も危険な依頼を受けるつもりじゃ...」
「おはよう、ミア。心配かけてすまんな」
19歳の彼女は本当に優しい子だ。俺たちの借金事情を知ってから、いつも心配してくれている。茶色の髪を三つ編みにした素朴な美少女で、ギルドの看板娘として冒険者たちに愛されている。
「実は、緊急依頼が入りまして...」
ミアが恐る恐る依頼書を差し出す。
**緊急依頼:魔王軍残党討伐**
**ターゲット:メリサ・デスヴァルト(元魔王軍四天王)**
**被害状況:近隣村落襲撃、住民30名を人質に**
**報酬:6億8000万セルン**
**危険度:S級**
**推奨ランク:A級以上**
「6億8000万...」
俺の目が光った。この金額があれば、借金を大幅に減らせる。
「レオさん、ダメです!今度こそ本当に死んでしまいます!」
ミアが俺の腕を掴んで必死に止めようとする。
「でも、ミア。俺たちには時間がないんだ」
「そうです。借金の返済期限が迫っているのですから」
カイロスも肩の上から同意する。
「それでも...命の方が大切です」
ミアの瞳に涙が浮かんでいる。本気で俺たちを心配してくれているのがわかって、胸が熱くなった。
「大丈夫だ。必ず生きて帰る。約束する」
俺はミアの手を優しく握った。
「でも、もし...もし何かあったら、私...」
「何もないよ。俺にはチートスキルが127個もあるんだから」
無理に笑顔を作って見せる。実際、戦闘力では負ける気がしない。問題は人質がいることだが、【時空操作】があれば何とかなるだろう。
「わかりました...でも、絶対に無茶はしないでくださいね」
ミアが依頼書にスタンプを押してくれる。その手が小刻みに震えているのが見えた。
襲撃現場への急行
ギルドを出ると、カイロスが10メートル大の竜に変身した。銀の鱗が日光に輝いて美しい。
「さあ、乗れ。空から行くのが最適だ」
俺はカイロスの背中に跨る。もう慣れたとはいえ、高度800メートルから見下ろす景色は壮観だ。
「しかし、魔王軍の四天王か。手強そうだな」
「魔王軍といっても、今は壊滅状態だ。きっと追い詰められているのだろう」
カイロスの声が風に混じって聞こえる。
20分ほど飛行すると、被害を受けた村が見えてきた。あちこちで黒煙が上がり、村人たちが混乱している様子がわかる。
「ひどい有様だな...」
俺は【万能解析】を発動して状況を把握する。
**人質:30名(子供12名、女性11名、男性7名)**
**犯人:メリサ・デスヴァルト(戦闘力測定中...)**
**被害状況:建物損壊7件、負傷者3名**
「人質に子供もいるのか...」
胸が締め付けられる。前世では営業マンだったが、子供の笑顔を見るのが好きだった。絶対に全員助けなければならない。
「レオ、あそこだ」
カイロスが村の中央広場を指す。そこに黒いローブを纏った女性が立っていた。