その夜
その夜、俺は一人でバルコニーに出て夜空を見上げていた。星が綺麗に輝いている。
前世では毎日残業で、星空なんて見る余裕もなかった。借金はあるが、こういう時間が持てるのは贅沢なことかもしれない。
「レオ、眠れないのか?」
カイロスが50センチ大の姿で飛んできた。
「ちょっとな。考え事をしてた」
「借金のことか?」
「それもあるけど...仲間ができて嬉しいんだ」
前世では営業成績ばかり気にして、同僚とも競争関係でしかなかった。でも今は、本当の意味での仲間がいる。
「俺もだ。5000年生きてきたが、こんなに心が軽やかになったのは初めてだ」
「メリサも辛い経験をしてきたんだな」
「ああ。だが、これからは三人で支え合える。それに...」
「それに?」
「メリサがあれほどウォシュレットに感動するとは思わなかった」
「まさか便器で人がここまで幸せになれるとはな...」
二人で笑い合った。
「明日はどんな依頼を受けようか?」
「そうだな...今度は建物を壊さずに済む依頼がいいな」
「ああ。メリサも一緒だから、経理的な計算もより正確になるだろう」
バルコニーの向こうで、メリサの部屋の明かりがついている。きっと借金の詳細な返済計画を立てているのだろう。そして時々、ウォシュレットを使いに行っているかもしれない。
借金999億セルン、返済期限残り22日。絶望的な数字だが、もう一人じゃない。仲間がいる。
そして俺には127個のチートスキルがある。使い方次第では、不可能を可能にできるかもしれない。
「よし、明日も頑張ろう」
夜風が心地よかった。借金地獄の現実は厳しいが、希望を捨てるつもりはない。
仲間と共に、俺たちの借金返済ファンタジーは続いていく。ウォシュレットと共に。




