研究者のあがき、データ
研究者D.Sは様々な可能性を検討した。
箱庭に必要なものはなにか。
人選の適切な組み合わせは何か。
育成環境は?
起こるイベントは?
さまざなパターンを想定して、かつての彼女を再現しようとした。
けれどだめだった。
試行錯誤ですら、うまくいかない。
仮想の演算結果すら、うまくいかない。
それでも、実行しないと言う選択肢はなかった。
だから、彼は行った。
二つ目の実験を。
とある日の彼は思った。
研究メンバーが足りない。
実際にもっと優秀な人間を集めれば、この問題は解決されるのではないかと思った。
だから、成績の良い研究者に声をかけた。
彼らが欲しがっているものを餌にして実験に協力させた。
けれどうまくいかない。
どうやってもうまくいかない。
研究者は苛立った。
何日経過したのか忘れた頃。
とある女性研究者が声をかけてきた。
「まるで滑稽なことをしている」
それは嘲笑だった。
愚かだとなじり、無意味な研究だと、罵倒した。
頭に来た研究者は、その女を殺害した。
けれど、女性研究者から受けた不快な感情は、何日たったも消えることがなかった。
根をつめすぎてはよくない。
研究者はいったん研究から離れた時期があった。
ふつうの人間に囲まれて生活してみたが、彼の頭の中は一つの事ですぐにいっぱいになった。
彼はもはや、以前の自分には戻れないのだと自覚した。
自分が壊れるのが先か、目的が達成されるのが先か。
どちらであっても、彼は進み続ける。
ーースポット
〇エリックス
主人公が拉致された異世界
〇フレイ・フェアリイ
蝶がただよう空間。
電子の世界。
〇Aの魔導書
とある少女の記録がつづられたもの。
ーーキャラクター
〇D・S
とある研究者。
〇ただようもの
どこかの空間をただよっている。
現状維持の精神の持ち主。
そして思考停止をしている。
蝶を目撃したが、手を伸ばさない。
〇主人公
何の変哲もない少女。
特別な地位におらず、特別な力も持っていない。
異変が起きて異世界へ。
彼女は最初から最後まで無力だった。
だからこの物語の人物は、決して幸福にはならない。
幸福な終わりも用意されていない。
なにも残さない。
なにも築かない
それが記されている事だけが、彼等にとっての唯一の救いなのかもしれない。