第6話 もう二度と会えない人たち
元の世界 誰かの友人
高層ビルにかこまれた都会の一区画。
誰かの友人。
小さな少女は通学路で待ちぼうけをしていた。
いつも待ち合わせてくる女の子が来ない。
もう時間だからその少女は学校に向かうしかなかった。
明日はまた会える。
そう思いながら。
けれど、そんな日は来ない事を知らない。
永遠に会えない事を知らない。
学校の職員室 教師
テスト問題のプリントを整理していた教師は、生徒達の顔を思い浮かべる。
問題児が数名いるクラスだから、気が重かった。
けれど、やりがいもあった。
小さい頃から教師になることを決めてずっと努力していた。
教師になったばかりだから、もんだいが多いのあたりまえで、だからこそ頑張らなければと思っていた。
「あのこの物忘れ癖、どうにか解決できるように方法を考えなくちゃいけないわ」
そそっかしい少女の問題を頭に浮かべながら、担当する教室に向かうために、職員室を出た。
「あ、山田先生~! これから朝の会をするので、途中まで一緒にいきませんか!」
しかし、同期の男性教師を目にしたとたん、少し目的がそれたのだった。
通学路の民家 老婦人
学校前の家の老人は首を傾げる。
始業のチャイムがなったけれど、いつも挨拶してくれる女の子が通らなかった。
見逃していただけかもしれないと思いつつも。
つい心配をしてしまう。
夫をなくして数年。
一人寂しくすごしてきた老人に声をかけ、元気をくれたのが、登下校に挨拶してくれるコだった。
それから、玄関で行う、日課の花の水やりが楽しみになった。
残念に思いつつも、明日の楽しみにすることにした。
明日はきっと元気な声が聴けると思いながら。
蝶がどこかへいってしまった。
追いかけようか、一瞬迷った。
けれどやめた。
もういい。
興味をなくしてしまったもの。
私はただ、その場にぼんやりとあり続ける。
なんだか疲れたな。
眠くなったから、目をつむった。
何も浮かばなかった。
でもいい。
私はそんな日々に満足しているもの。
異世界エリックス ???
私はある日、唐突に異世界エリックスに召喚された。
原因は分からない。
予兆なんてない。
どうしてばかりの異世界召喚。
なぜ私だったのだろう。
別の人だったなら良かったのに。