第5話 電子の世界の浸食
フレイ・フェアリィ 少女
何もない空間で蝶が出会う。
蝶はキラキラとした光をまとっていて、まるで宝石のよう。
一体どこからこんな蝶がやってきたのだろう。
私は首をかしげてみるけれど。分からない。
あたりを見回してもみるけれど、見当たらない。
まあいいや。
いつものように思考を放棄する。
別に何も困らない。
ここは安全。
ここは幸せ。
私はずっと蝶を眺めていればいい。
フレイ・フェアリィ 魔女
気まぐれな魔女は、自分が紡いだちぐはぐを眺める。
変化がないのは退屈なこと。
魔女はそう判断して、何かを起こそうとした。
例えば美味しいお菓子を。
例えば刺激的な映画を。
例えば感動的な人生を。
けれども、電子の世界には壁が作られて、それを受け付けない。
それは無だった。
やがて世界を滅ぼすものだった。
一番最初に電子の世界を浸食しにきたのだった。
だから、別の意思あるものはのまれて、くわれて、きえていく。
魔女はせっかく作ったものが、台無しにされてはつまらないと、ちぐはぐのものを保護した。
けれど、それは期間限定の親切。
興味が続くまでの、好意。
フレイ・フェアリィ ×××
それは、くわれかけている精神。
きえかけている命の一つ。
それは、ただの一般人だったもの。
主役にはなれないもの。
ただの日常をおくっていたもの。
敵でも、障害でもなかったもの。
けれど、習性というものがある。
しみついた癖というものがある。
かつて生きていた頃、それは人間の男性だった。
男性は両親から幼い頃から言われていたことがある。
困っている人を助けなさい。
誰かを助けられる人でありなさい
だから、意思などなくても男性は行動する。
食われかけている者を助ける。
電子の世界の物を助ける。
その努力は誰にもかたられることなどない。
意味などのこさない。
助けられたものも、やがてきえてしまう。
それでも男性だったそれは、最後まで別の何かを助ける。
やがて、魔女に保護されたものを見つけて、その直前で力尽きるまで。
魔女に保護された少女は、そんなものにも興味を向けない。
ただそこにありつづける。
ただいまをすごしつづける。
何かをすれば何かが変わったかもしれないし、変わらなかったかもしれない。
けれど、ただ何もしない。
普通の人間である私は、ある日異世界へさらわれた。
ライトノベルでいう異世界召喚という奴だろうか。
憧れはあったけど、でもそれは空想の中だけ。
現実にそんな事があったらm巻き込まれた人間にとっては、酷い迷惑だ。
私はそんなもの、そんな非日常、そんな悲劇、いらなかった。
空想に憧れるだけの、ただの日常で生活していたかった。