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第5話 雨宿り

挿絵(By みてみん)


 一週間ほどかけた準備の後、旅は大きな森を抜けることから始まった。


 森の中には見たこともないような奇妙で美しい植物や可愛らしい小動物がいて、私たちは立ち止まっては、初めて目にする自然の驚異に目を輝かせた。


 特にヴィクトルは森の生き物に興味津々で、時折立ち止まってはじっくりと観察していた。



「アリア、見て、この蝶、君の髪の色と同じだよ。」



 彼がそう言って、私の目の前に手を広げると、そこには美しい黒い蝶が舞っていた。


 その美しさに思わず息を飲む。そして、彼が私に向ける優しい視線に、心がぽっと暖まる。

 そうして彼の視線に応える形で、再び森の美しさに目を向ける。見上げる森の木々には、祖母と旅路で感じたものとは別の美しさが宿っていた。


 森を進んでいく中で、私はふとある感情に気が付く。彼と一緒にいると、私の心は落ち着き、同時に、ドキドキとわくわくする感情が溢れてくる。



――― この感覚、なんだろう。もしかして、、、



 そんな自分の感情に問いかけている時、空気の中に湿った感じが広がり、突然の雨粒が降り始めた。それはすぐに一面の豪雨に変わった。



「アリア、あそこに洞窟があるよ。そこなら雨宿りできそうだ。」



 私の手を掴み、洞窟に駆け出す。

 その力強さにびっくりする。


 激しさに息が切れ、心臓が高鳴り、頬が熱くなる。

 でも、雨から逃れるために必死に走った。



「ヴィクトル、ありがとう…」



 私は彼の名前を小さく呟き、感謝の気持ちを伝える。

 洞窟の中は暗く、湿っていて、底冷えしていた。

 私の頬は震えていたが、彼が私の手を取ると、その手はほんのりと暖かかった。


 ヴィクトルは頑張って薪を集めてきて、洞窟の中で小さな火を灯してくれた。

 その火が洞窟全体をほんのりと照らすと、彼の手から伝わってくる暖かさと共に、炎の揺らめきが私の心にも染み渡ってきた。

 震えが少しずつ収まっていく感覚に、ほっとする。

 再び彼を見上げて、



「ヴィクトル、本当にありがとう。君がいてくれてよかったよ」



 と、もう一度感謝の言葉を伝えた。



 震えが収まると、私の心は今度は別の問題に乱れていった。

 それは、雨で濡れた自分の服のせいだった。布地が肌に密着し、胸元や腰のラインが透けていないかと心配になる。


 恥ずかしさで顔が熱くなり、何度も照れ臭さで服を気にした。

 しかし、その中には確かにドキドキとした期待感が混ざっていて、私は胸を高鳴らせていた。彼に背を向け、自分の服を直すふりをした。



「大丈夫、アリア。雨が止むまでここで一緒にいよう。」



 ヴィクトルの声が聞こえた。

 私の方へ向けられたその声は優しく、微笑んでいた。その優しい声と笑顔に、一瞬だけ恥ずかしさが和らいだ。


 私たちは互いに体を寄せ合って、火の側で雨が止むのを静かに待った。


 そうして静寂の中、私は自分の心に気づいた。それは、ヴィクトルに対する私の感情が、ただの友情以上のものになっていることを。


 恥ずかしさとドキドキ感、それはまさしく恋の始まりだった。



  ・

  ・

  ・



 まるで魔法の世界に迷い込んだかのような、そんな森だった。見たこともないような奇妙で美しい植物、愛らしい小動物たちが目の前に広がっていて、ただただその光景に感動した。


 アリアは驚く度にきらきらと輝く目をキョロキョロと動かし、それがとても可愛らしくて、僕はつい笑顔になってしまう。



「アリア、見て、この蝶、君の髪の色と同じだよ。」



 僕が指を広げると、捕まえた蝶が優雅に舞い上がる。

 アリアは息を呑むと、僕の視線と合わせて微笑んだ。

 彼女の笑顔は僕の心を暖め、何とも言えない気持ちにさせてくれる。


 そんな風に森を進んでいくうちに、あることに気が付いた。

 彼女と一緒にいると、穏やかで、同時に心が躍る感覚に満たされていることに。



 しばらく歩くと、空気が湿ってきた。

 空が薄く暗くなり、まずはポツリ、ポツリと、しかしすぐにそれは豪雨へと変わる。


 驚きながらも、僕はアリアの手を引き、急いで雨宿りの場所を探した。



「アリア、あそこなら雨宿りできそうだ。」



 手を握ったまま、アリアと共に洞窟へと駆け込んだ。

 息を切らしつつも、彼女を雨から守るため、必死に走った。


 洞窟の内部は暗く湿っていて、心地よいとは言えなかったが、雨をやり過ごすには十分な場所だった。


 頬を震わす彼女が風邪を引かないよう、薪を探して火を起こす。

 その火の灯りに、アリアが感謝の笑顔を向けてくれた時、僕の心は温まり、同時にほっとした。


 しかし、その一方で、アリアの濡れた服が僕の心を乱した。

 彼女の服が濡れて体に密着し、そのラインが透けているかもしれないと考えると、ドキドキとした感情が僕を襲った。


 彼女が恥ずかしそうに服を気にする度、僕の心は高鳴った。



「大丈夫、アリア。雨が止むまでここで一緒にいよう。」



 僕はそう言って、彼女に微笑んだ。


 この時初めてアリアに対する感情が、ただの友情以上のものになっていることに気が付いた。

 彼女の恥ずかしそうな表情と、不安そうな様子、そのすべてが僕の心に深く刺さり、忘れられない記憶となった。

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