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第20話 編みなおす

挿絵(By みてみん)


 砕き、捧げ、祈る


 砕き、捧げ、祈る



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 資料の海を漁り続け、気が付くと疲れからか、意識は薄れ、やがては彼方へと飛んでいった。

 眠ると思う間もなく、私は深い夢の中へと落ちていったのだ。


 しかし、夢の中で何かが変わる。

 ふとした温もり。

 ふわりと頬を撫でる優しい感触に、夢の中で目を覚ました。

 この感触、この温かさ、それは私にとって何よりも心地よく、懐かしいものだった。


 目を細めてみると、その手は皺に彩られ、時間に磨かれた美しい手だった。

 手の甲にゆっくりと手を重ねると、感覚が鮮明になる。

 


――― お祖母様の手だ。



 目を細めて確かめると、皺が深く刻まれた手がそこにあり、その手の主は他ならぬお祖母様。

 懐かしい香りと共に、温かい笑顔が私を迎える。



――― お祖母様、ごめんなさい。私、ヴィクトルを宝玉に変えちゃった。

    いけないと言われていたのに。



 言葉に力がこもらず、涙声で告白する。

 お祖母様の目には、寂しさがちりばめられていた。

 しかし、その目は私を責めない。

 代わりに、その懐かしい心地よさをもたらす手が頭を撫でた。



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 気が付くと、大きな建物の中の一室にいた。

 窓からの光が柔らかく室内に差し込み、目の前には美しい女性が立っている。


 黒い長髪に、茶色の瞳。

 年齢は二十を過ぎたあたり。

 どことなく、その面影に見覚えがあった。


 記憶の中の部屋に、一人の少年が連れて来られた。



――― 次は、子供か。



 言葉ではなく、女性の心から発せられた感想が、頭に響く。


 少年は緊張しているのか、頬が硬い。

 決意に満ちた眼差しで女性を見つめる。

 その少年はとても綺麗な碧い目をしていた。



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題名:人魚個体の妊娠発見と宝玉化延期に関する特別報告


要旨:本報告書では、人間吸収による宝玉化プロセス進行中の特異な事例について詳述する。特定の人魚個体が宝玉生成の過程で偶然にも妊娠したことが発見され、人魚増産の可能性の検討のために人間吸収による宝玉化の延期が必要となった経緯とその影響について検討する。


1.人間吸収による宝玉化プロセスの背景:

 人魚は人間を吸収することで宝玉を生み出す。この宝玉には物質を分解し再構成させる力があり、現時点で海獣に対する唯一の有効的対応手段である。


2.妊娠の発見と宝玉化の延期:

 特定の人魚個体が宝玉生成にいたる過程で偶然にも妊娠したことが発見された。この発見は前例がなく、人魚増産の検討のためにその個体の人間吸収による宝玉化プロセスを延期する必要が生じた。妊娠による増産の可能性は、人魚と人間との関係の深化を示唆する。


3.結論と今後の展望:

 妊娠による宝玉化の延期は、人魚の増産の可能性に新たな視点を提供する重要な発見である。この事例から得られる知見は、人魚の生態と人間との関係に新たな理解をもたらす。今後の研究と人魚の増産の可能性の探求において、この事例の詳細な分析とフォローアップが必要とされる。



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 女性が赤ちゃんを抱いている。

 幸せそうな表情。

 すぐそばで見守るのは、少し成長した先ほどの少年。


 そして呼ばれた赤ちゃんの名は、お母さまの名前だった。



 ――― そうか、これはお祖母様の記憶。



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 空が赤く燃えている。

 海獣に使われるべき力が、街に振るわれている。


 逃げ惑う人々。

 崩れ落ちる建物。

 その一部始終に、お祖母様たちがいることを知り、理解不能な恐怖が心を侵していく。私はただ、凍りついたようにその光景を見つめていた。



――― 最初から決まっていたこと。



 不意に頭の中に響いた少年の声。

 あの美しい碧い目に宿る決意。

 彼が何を伝えようとしていたのか、今はじめて意味が繋がり始める。



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 お祖母様は少年を宝玉にした。

 それが、最初から定められた運命だったのか。



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 焼け付いた空気、埃に塗れた瓦礫の上で、戦いは終わった。

 街は無残に焼け落ち、残されたものは灰と静寂のみ。

 人々の喧騒や笑顔があった場所は、今や虚無に覆われていた。


 お祖母様は、宝玉を手に取り、その力を使おうとした。


 だが、何も起こらない。何一つとして。



――― 足りない。



 彼女の頭の中で反響する、絶望的な一言。



――― 人を編みなおすには、量が足りない。



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 海の中深く、お祖母様が黒い靄の源を見つめている。


 海の底に空いた、大きな穴。

 そこから黒い靄が湧き出ていた。


 黒い靄に触れた生物は黒い炎に焼かれ消え去る。

 しかし時折、いや、極稀に靄と生き物が混ざり新たな存在が誕生する。



――― 海獣だ。



 魚と融合した靄からは魚の姿を持つ海獣が、クラゲと交わった靄からはクラゲの形状をした海獣が生まれていた。


 その靄には見覚えがあった。

 私が倒した海獣から立ち上ったのと、そっくりだった。



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  ・



 記憶の中、若き日のお婆様が、私を優しく抱きしめ、頭を撫でる。

 その手の温もりが、現実と夢の境界をぼやけさせる。



――― 取り戻したいか。



 何をとは聞かれない。

 でも力強く頷き返す。



――― 黒い靄は、可能性。解かれた現実。編みなおされる前の混沌。

    取り戻したいのなら、あの靄を目指しなさい。


――― 可愛いアリア。

    私のように手遅れになる前に。



  ・

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  ・



 現実へと引き戻されるように、目が覚める。


 枕元には、寝る前に読んでいた手記が開かれており、靄の発生箇所についての地図が、まるで運命を示すかのように広がっていた。






=====

エ様『結構すすんだようじゃな。』

門東『アリアの次の行動をひねり出すのに苦労しました。最後のイメージは固まっているのにそこに至る過程が大変でした。』

エ様『お祖母様、やっておったな。』

門東『ええ、やっておりましたね、女神様。おねショタです。』


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