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第二話:相談があります

気合い、入りますん。

定時で帰宅して、

身の回りのことを最速で終わらせて、

風呂に入って念入りに身体を洗って、

着ていく服に悩んでいるところで、まるで彼氏に会いに行くみたいだ、と思い、がっくりした。


気負う必要はないか。いつも通りで行こう。


いつも通りに、シャツとジーンズを適当に選び、安全運転で年下少年の元へ。

で、約束の時間より30分は早い。

なにやってるんだとハンドルにもたれかかり、クラクションを鳴らしそうになって慌てて起き上がった。

その時、スマホの着信音が鳴り、悲鳴を上げそうになった。

ほんと、なにやってんだか。

何度か深呼吸して、メールを確認。

内容は、


『30分前ですけど、もしかしてもう来てます?』


年下に見透かされてる?

慌てそうになり、前にも約束の時間より早く着いたことがあるのに気が付いた。


週一くらいで呼ばれるカゲちゃんとは違い、和樹くん、今はカズくんと呼んでいるが、そのカズくんからの相談は中々無いため、気合いが入ることが多いのは確かだった。

カゲちゃんの相談内容は、大体が聞く価値のない愚痴がほとんどで、カズくんの方は、真剣に悩んでいることがほとんどだから。


だからまあ、なんというか。

正直に、『着いた』と短いメールを送った。


すぐに出てきてこんばんは。

さっそくお姉さんとドライブに行きましょう。


「どこ行く?」

なんて聞けば、

「あそこで」

と返事がくる。


遅くまで営業しているファミレスの店内やコンビニの駐車場なんかは、カズくんの方が嫌がる。

高校生の身分では、夜に警察に見付かると怒られるからだ。

警察アレルギーとでもいうような苦手意識は、社会人一年目になっても変わらないようだった。


夜の町を、10分ほどドライブして、山の方への坂道を登ること5分ほど。

町を見下ろせる、小高い広場に着く。

標高200mほどの山の頂上を広い駐車場に整備してあるこの場所は、広く立派で、いつも綺麗に清掃されている公衆トイレと、飲み物や冷凍食品やバランス栄養食の自動販売機、街灯が何本か、という、静かな場所だ。


星を観察するため、と称して、街灯の光が届かない場所がいくつもある。



まあ、その、要するに。

ここは、警察も巡回しない、秘密の逢い引きスポットだったりする。

実際は、私服警官がこっそり巡回しつつ、自分達もお楽しみ休憩していることもあるそうだけど。

ほんとかよ?



カズくんの最初の相談の時にこの場所に案内された時は、身の危険を感じてそわそわしたものだ。

何せ、人気がない。

仮に人気があったとしても、整備された植え込みの陰から男女の声や変な音が聞こえてきたり、

駐車してある車をよく見ると少し揺れていたり、

複数あるトイレの内の一つは、個室が防音になっているとか。確認はしてない。


そんな話を一つ一つされて、もう四年。

微妙に怯える私に一切手を出さない、すました様子のカズくんといる内、慣れてしまった。

相談の内容は、いつも真剣なものだったし。


勘違いして、バカみたい。


そう思ったのも今ではいい思い出。


むしろ、長身で出るとこ出ていて、顔も可愛いし、積極的で、一途に尽くす彼女がいるんだし。

私みたいに、背は低く、胸は薄く、頑丈だけど野暮ったい眼鏡掛けてて、服も長い髪も適当。車は、事故歴複数(私は無事故!)の安物中古セダンだし、好かれる要素皆無だ。年の差考えろって感じ。


そんな感じで、どっか遠いところを眺めながら現実逃避をしていると、真剣に悩んだ様子のカズくんの声が聞こえてくる。


「……すみません、ユキさん。何か、その、えっと……言いにくいんですけど……」


ちょっと驚いた。

仕事の愚痴か何かかと思ったら、ずいぶん深刻そうだ。

「どうしたの?何でもいいから言ってみなさい。お金貸してくれとか以外なら、大体は聞いてあげるから」

心配させないように、出来るだけ軽い調子で声をかければ、カズくんはビクッと震えてから、中々とんでもないことを口走った。



「……すみません。……その、おれ……アレが立たなくなったんです」

場所と時間を考えろ。

この年下男子がわきまえないのはいつもの事だけれど。

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