魔王様の逆鱗15
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嵐が訪れた。
雷は轟き、雨が激しく窓に叩きつけられ、強い風が吹き荒れる。
皆が震え上がっていた。
人睨みで人を殺しそうなその眼光と、目を合わせまいと、貴族らは魔王へ跪き、頭を垂れている。
「返せ。」
たった一言。
地の底を這うような重い声。
その言葉には拒否を許さないものであった。
返せるものであれば返したい。
それが出来ないから恐ろしい。
どうしてこうなってしまったのか。
途中までは良かったのだ。順調であった。
誘拐は魔王様の為と心を鬼にして行った。
だが、危害を加えるつもりなどまったくなく、ただ住む場所を変えるだけのつもりだったのだ。
それがどうしてこうなった。
「も、、、申し訳ございません。」
床にこすりつけるように頭を下げる。
一瞬の出来事であった。
いつもはリナリーの気配をすぐに感じとれた。昨日は王城を出た直後までは分かりすぐに駆けつけようとした。
ただ、次の瞬間、消えたのだ。
その瞬間の絶望を、今なお感じている。
魔王城は今、氷が至るところにはっており、天井からは氷柱がたれさがる。
吐く息は白く、髪も氷る。
カールを攫った首謀者達は今ここにみな揃えられている。以前から監視されており、捕まえる算段はついていた。
それが横から何者かに奪われた。
首謀者と思われた者たちすら、分からぬ誰かに。
「魔力を国全土に展開させる。」
「魔王様それは、、、、。」
「黙れ。」
氷柱が床から一瞬で大木のように立ち上がる。
「二人になにかあった時、首はないものと思え。」
魔王は紅の瞳を赤く赤く燃え上がらせた。
国全土に、地を這うような、冷たい冷たい魔力が広がる。
生きとしいけるもの全てが、その瞬間に心が凍える冷たさと絶望を感じた。
「見つけた。」
そうシバが呟いた言葉を耳に捉えられた者はいない。
城は静けさと冷たさに、時を止め、城にいた全ての魔族が意識を闇の中へと飛ばす。
魔王の逆鱗に触れるべからず。
魔族の国は闇に囚われ、国土全ての時が止まった。
魔王様が怖いです。
次のお話もまたお楽しみください!




