表彰式のあとの時間の使い方
大勢の記者や医療関係者が集まっているなか、私は壇上で表彰状を受け取っていた。
「おめでとう。これからも、たくさんの人々を救ってくださいね」
「ありがとうございます。精進します」
私のこの言葉のあと、私は耳が痛くなるほどの拍手喝采を受けた。
◆
『まどか、あんたはやっぱりすごいよ。それ、日本の医者はほとんど持っていない、栄誉ある賞なんだろう? そんなあんたを娘に持って、母さんは嬉しいよ、ホント』
「ありがとう、母さん。じゃあ、電話切るね」
「はいよ」
私は赤信号のタイミングで車を停め、スピーカーを起動していた携帯電話の通話を切った。
アメリカで行われていた表彰式から帰国した私を待っているのは、一日の休日だ。
「……採っていくかな」
私はそう呟き、交差点を右に曲がった。
◆
私は駐車場に車を置いて、いつものようにリュックサックを背負い、軍手を嵌めて、雨が降っているわけではないがウインドブレーカーのフードを被った。
私は、殺害用の道具としてトリカブトの粉末の水溶液を使っている。その材料となるトリカブトの在庫が少なくなると、私はこうして山に調達しに出かけるのだ。もちろん、極力顔を見られないようにフードを被って。
「……あった」
目的のものを見つけ、さっそく採取しようと屈むと。
「あ」
私の服のポケットから、チャリンと音を立ててあるものが地面に落ちた。
「……表彰式のために外しておいて、ポケットに入れっぱなしだったか」
そのあるものとは、ペンダント。
「……忘れていませんよ、まだ」
ゆっくりとそれを拾い上げ、私は呟いた。