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ある老人

作者: オスカー・ワイルド

みなさんには大きな可能性がある。一時も好奇心を失わないでほしい。私はすでに年を取りすぎている。ずっとやりたいと思っていたことも、結局はできず仕舞いだった。若い頃は、興味が有ることがたくさんあった。いや、ありすぎたのかもしれない。ジャーナリスト、写真家、作家... ただ、一つの問題が常につきまとった。「もし、失敗したらどうするの?」周りの人からは、毎回そう問われた。ふと、気づけば自然にある会社の面接を受け何も考えずに働く日々が待っていた。幸運にもその会社では、毎日時間通りに帰ることができた。給料? まぁ、雀の涙ほどだったかな。時折、家で物思いにふけったりしたよ。今の会社に居たととしても将来はどうなるのか? この給料で果たして結婚できるのか? 先輩や、同僚を見ていても先が明るいとは思えなかった。と言っても、残念ながら当時の自分にはたいした強みや、能力、社会で評価されるような経験は何もなかった。仕事内容を見ても給料の額は妥当と思うしかなかった。よく、世間の親は「勉強しなさいと!」と言う。何となく学生の頃は学ぶことが大事だと思っていた。だけどね、実際に自分が世の中で働くようになり、お金を稼ぐ立場になってこそ勉強の大切さを学ぶと思うのだよ。まだ、みんなは分からないかもしれない。働きだして給料をもらえるようになると、世の中の仕組みを薄々分かってくると思う。大変そうに見える仕事なのに驚くほど給料が安かったり。簡単そうに見える仕事なのに給料がとても高かったりする。会社で働く中で僕は少しずつ焦りを感じていた。正確に言うと僕はその仕事に飽きを感じていて、別なことがしたいと思っていたけど全く新しいところへ行くことへの抵抗も強かった。さらに言えば、大勢の中で働くことへの息苦しさを感じていた。いろいろな人がいれば、いろいろな価値観がある。自分と馬が合う人もいれば、そうではない人もいる。もちろん会社は友達作りをしに行く場所ではないよ。与えられた業務をこなすことが大前提。それにプラスして良好な人間関係を作る必要がある。学校では苦手な人への対処方法は教えてくれいないね。そういったたぐいのことは自分で処理するしかない。ある種、それも仕事の一つかもしれない。さてみんな、僕はその会社で何年働いたと思う? 3年? 5年? いや、40年だよ。ずっと、色々なことを模索し続けた。500万円貯まれば何かの店を開こう! 1000万円貯まればフリーのジャーナリストで食べていこう! そんなこんなの中で、30歳そこそこの時にたまたま知り合った女性と結婚することになった。ある程度、お金もかかり思うように貯金ができなかった。先程も触れたけど、働きだして分かること、結婚して初めて分かることばかりだった。当然だよね。どれも人生で初めてのことなのだから。僕の人生を振り返れば失敗だとは思わないよ。結婚して、子供も居るし、まずまずの生活を送っている。強いて言うなら本当にやりたいことができなったことかな。でもね、本当にやりたかったことが何なのか今でも分からないんだ。仕事で永遠に満たされなかった充足感が何をすることで埋められるのか分からない。幸運にもみなさんは若葉のように若々しい。また、今では地球の裏側まで一瞬でメールを送信できたり、ほんの数時間で大陸を横断できる時代だ。僕が願うことは、みなさんが一日でも早く充足感で活き活きできるような事を見つけてくれることだ。無論、それは趣味でも構わない。ただ、もしそれが仕事につながるようなことであれば、僕とは全く違った力強くて微塵の後悔も無い豊かな人生を歩めるだろう。何をするにしても恐れてはいけない。そんな簡単に人はあの世へ行かないのだから。「もし、あの世へ行くことになったらどうするの?」


それは三途の川を渡ってから考えよう。

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