親友との再会。食い違う話。現れる指輪。
「ご理解いただけたでしょうか。
あれが組織の方針です。
進む先にあるものはすべて排除破壊する組織。それが無論神であっても退ける」
「つまり・・・私はあの組織を倒していかないといけないって事なの・・・?」
「ごもっともでございます」
「組織って何人くらいいるの?」
「さぁ…正確な人数はわかりませんが、少なくとも組織が収集した「神機」を全て戦力と数えるなら、
先程のような者があと29人は居ると考えてもよろしいかと」
何とか仮面の男=アサギを退けた私は、社務所の一室でウンリュウさんと話しこんでいた。
無論、世間話なんかじゃなく、組織「神殺」について。
「私なんかにできるの…?
さっきは運が良かったようなもんだし…そもそも戦いなんていうけど、私喧嘩もしたことないんだよ?」
「ですが、ひとつ付け加えるとしたら、先ほどの「アサギ」と名乗った組織の者はそのまま帰ってしまわれました。
つまり、組織にアマネ様の情報が持ち帰られてしまわれたわけでございます」
飲もうとしていたお茶を盛大に吹き出してしまった。
「そ、それって・・・」
「もう逃げられないと言えますね」
微笑みながら、あたりに飛び散ったお茶を拭いながら、ウンリュウさんは言った。
終わった。
あんな人たちと戦い続けてたら、いくつ命があっても足りない・・・。
~~~~~
さすがに眠れなかった・・・。
「アマネ様なら大丈夫ですよ」なんてウンリュウさんは言っていたが、普通に無理だと思う。
学校までの道のりが重い。
足がぜんぜん進まない。てか、帰ろうかな。
おばあちゃんのお葬式の事もあり、私は数日間学校を休んでいた。
さすがに出席日数足りませんなんていわれたら、おばあちゃんに怒られるので今日は学校に行くつもりだったけど、気が進まない。ほんとに。いや、マジで。
通学路で会った友達には「大丈夫?」「まだつらいなら休んでなよ」などといわれたけど、
そう見えるのはおばあちゃんの事だけじゃないなんて・・・まぁ、言えないですよ・・・。
と言うか、ウンリュウさんがおばあちゃんの魂から作られた式神のせいか、あの人と一緒に居るとおばあちゃんが亡くなった事が、不思議と悲しくない気がしてくる。
うわ、私なんかすごく不謹慎なこと思ってるわ・・・。
「アマネぇ!」
私を呼ぶ声にふと我に返り振り向く。
後方から駆けてくる子を見て、自然と笑顔になる。
「ミウミ!!」
中学の頃、転校してきた私の親友とも呼べる女の子が、手を振りながら駆け寄ってきた。
「いつ帰ってきたの!?」
「昨日の夜に!
それよりアマネ!アマギばあちゃん亡くなったって!!」
そうだった。
彼女はアーチェリーの世界的な選手で、弱冠17歳で既に世界各国の様々な大会で優勝、上位入賞するほどの腕を持っている。
それに可愛い。
故に、テレビにも引っ張りだこで、いろんな番組にゲスト出演しているくらいだ。
だから彼女自身ではなく、彼女の家にお葬式についての手紙を送っていた。
それで、おばあちゃんの事については昨晩知ったのだろう。
「あぁまぁね・・・でももう大丈夫だよ!みんな親切だし、おばあちゃんから貰った手紙とか呼んでたら不思議とね、元気出てきたんだ!」
「そう、なの?んじゃあ今日は放課後アマネん家行っていい?」
「うん!久々においでよ。最近忙しそうだったもん!おばあちゃんも線香あげたら喜んでくれるだろうし!」
「うん!そうするよ!!
あ!そうそう。なんかこのタイミングで渡すのもちょっと気が引けるけど、これお土産」
「わあ、ありがとお!!」
約2~3週間ぶりに会えた友達との会話は本当に楽しく、今朝までの不安や気だるさは、もう何処にもなかった。
お葬式のときも思ったけど・・・やっぱり友達は大切だと心底感じた。
~~~~~
「妙な反応が島に来たわね・・・」
金の模様が走る、左目に羽のような装飾のある仮面をつけた女性=ヤマブキはPCモニターを確認しながら呟いた。
巨大な研究室の中には様々な機材があり、何十人かの白衣を着た物が、それぞれに作業をしていた。
異様なのはその光景で、その場の全員が、左目に羽の装飾がある真っ白な仮面を着けていた。
「妙な反応ですか?」
茶色いラインが走るグレーの仮面を着けた男がヤマブキに聞き返す。
例に漏れず、彼の仮面にも羽根の装飾がある。
「昨日はなかった反応。
件の巫女の孫と近いわ・・・学校ね・・・。
シブカミ、誰か一人「神機」を持たせて調べに行かせて」
シブカミと呼ばれたグレーの仮面を着けた男は一礼し、その場を後にした。
それと入れ替わるように二人の人物がやってきた。
「コクシとその従者。何しにきたのかしら?」
仮面で見えずとも、ヤマブキの声は嫌悪感が混じっていた。
ペスト医師を思わせる仮面の少年は「ククク」と笑った。
「いやあなんか面白そうなことをしてるなあと思ってね?」
「別に、なにも面白くないわよ。
ただの仕事」
「・・・あっそ。
んじゃいいや」
あまりにあっさりと、コクシは踵を返して研究室を後にした。
その後姿を見つつ、ヤマブキは呟いた。
「ホント、何を考えてるのかしら」
~~~~~
「来るまでのスパンが短すぎよ!!!!!」
まさかだった。
いや、考えてみれば普通にありえることだった。
「何がスパンが短いだブワァ~カ!!」
「うっさいわね!!」
昼休み。
屋上にてミウミと弁当を食べているとき、突然こいつは襲ってきた。
白地に空色の市松模様が描かれた仮面をつけている。
それに手にしている武器。
左手の盾と、それに鎖でつながる右手のランス。
昨日の人ではないが、明らかに特徴が酷似している。
組織の…「神殺」の人間だ!
「ちょ、ちょっと!アマネ!あの人知り合い!?趣味悪くない!?」
「初対面よ!」
なんというか…まさか学校に居るときに来るとは思ってなかった。
考えてみれば、組織に学校なんて関係ないんだから、攻めてくるのは当然だ。
なんなら友達が強制的に人質化した状況でもある。
「さてと「闘巫女」さんよぉ?昨日はよくもまあアサギを殺してくれたな!?」
「はぁ!?殺してなんかないわよ!」
「嘯くんじゃねぇ!アサギの死体が見つかったんだよ!
お前の討伐に向かって帰ってこないから確認してみりゃ、きっちり殺されてやがったぞ!!
ご丁寧に心臓まで抜かれてな!!」
おかしい。
話が食い違いすぎてる。
昨日のあのアサギって人は確かに私を倒しに来てた。
けど「神機」が破壊されてすぐに帰った。
どういうこと!?
「アサギは俺の友人でもあったからなあ・・・悲しかったぞ。
悲しかったぞ「闘巫女」ぉぉぉぉおおおお!!!!」
激昂する仮面の男。
枷の外れた獣のように唸る目の前の男を見て、ますます混乱していた。
「ちょっとアマネ!あれ何とかできるの!?」
さすがにミウミの前では戦うわけには行かない。
別に隠せって言われてるわけじゃないけど、なんかバレちゃいけない気がする!
「ミウミは逃げて!あの人なんか私に気が向いてるから今なら逃げられるよ!」
「アマネは!?どうするの!?」
「私はなんとかして後から逃げるから!!」
「そんな!行けるわけないじゃん!!あんなヤバイ人とアマネを二人にするとか!!なんなの!?そういうプレイなの!?」
なんか違う!!
けど、一理ある。
「ごちゃごちゃうるせえよ!
お前も一緒に殺してやらぁ!!!」
仮面の男がランスを空に掲げた。
すると、ランスの周囲に水が現れ渦を巻き、まるで水のドリルのような見た目を作り上げた。
って水!?
「このウスアイ様に一瞬で殺されるんだよ、お前らは!!!」
仮面の男=ウスアイはその水のドリルをこちらに向けた。
「貫け!!水巳槍!!」
ウスアイの掛け声と同時に、水のドリルはランスの先端に収束し、まるでレーザーのように放たれた。
「うわああ!!?」
間一髪で避けれた。
でもあれはヤバイ!昨日の人よりヤバイ!!
「あ、アマネ!これはまずいと思うんだけど!?」
「私もそう思う…けど…」
さすがにこれ以上能力を使わないのは無理がある。
あの水のレーザーを避けきる自身はない。
かといって、炎の能力である「焔帝レーヴァテイン」で対処できるとも思えない・・・。
「けど、やらない後悔より、やった後悔だよね…おばあちゃん」
「アマネ…?」
「ミウミ、今から見ることは誰にも言わないでくれる?」
「なにを・・・?」
再びランスに纏わりつく水の渦を見ながら、私は両手を前に突き出した。
そしてイメージを固める。
「出てきて…」
突き出した両手に目に見えない何かが触れ、それを掴む。
「焔帝…レーヴァテイン!!」
両手の中から炎が吹き上がり、一瞬にして大剣が顕現した。
「それがアサギを殺った得物か!」
「だから殺してないって!!」
大剣を構え、しっかりと目の前の男…ウスアイを見据える。
「まだ嘯くか!
貫け!水巳槍!!」
再び水のレーザーが放たれた。
しかし、何だろう?
さっきより遅い?
余裕をもって避けることができた。
「この!!」
ウスアイは一気に距離をつめてきて、ランスでの刺突を繰り返してきた。
スピードは遅いわけじゃない。けど避けられないものじゃない。
「ちょこまかと!!」
大降りのなぎ払い。
それを後方に飛んで避ける。
その瞬間理解した。
身体能力が恐ろしく上がっている。
たった数十センチを飛び退るつもりだったのに、屋上の手すりギリギリまで来てしまった。
その距離、約5m・・・。
「まだだ!貫け!水巳槍!!」
再び放たれる水のレーザー。
正直この攻撃は既に脅威じゃなかった。
だが問題はその標的だった。
「ミウミ!!」
勢い良く発射された水は一直線にミウミに向かっていく。
さっきのように飛んでも間に合わない。
昨日みたいに剣の一振りで・・・いや、ミウミに当たってしまったら元も子もない!!
それぐらいの威力の斬撃だった!
どうにかしてミウミを!助けなくちゃ!!
「ホントに、趣味悪いわね」
ミウミの直前で水のレーザーは何かに阻まれるように飛び散り、掻き消えた。
「なに!?お前、何者だ!!??」
良く見ると両腕を広げるミウミの前に、光に包まれた何かが浮かんでいた。
「ミウミ・・・?」
「なによ?」
「なに、してるの?」
「え?アマネ・・・あんたウンリュウさんに聞いてないの?」
ウンリュウさん?!なんで知ってるの!?
いやそれより、ミウミの前の光はいったい!?
「まぁ話は後で!
ていうかアマネ!「焔帝」でどうやって戦うつもりなのよ?」
「焔帝」も知ってる!?
「い、いやそのどうにかして・・・」
「できるわけないでしょ!あんたは「炎」!あっちは「水」!
基本は無理!!」
そう言うと、ミウミは、その目の前に浮かぶ光を手にした。
掴むと同時に光は収束し、小さな指輪になった。
「はい、これ使って!!」
ポイッと投げてよこされたその指輪を何とかキャッチする。
青白いきれいな宝石がはめられた白金のような指輪。
サイズは私の指には合わないくらいには大きかった。
だが理解した。
「これって・・・「神機」!?」
「さっきから無視してんじゃねぇ!!
貫け!水巳槍!!!」
迫る水のレーザーを避けた私は、再びミウミを見た。
ミウミは親指を立ててウインクしてきた。
彼女が自信満々に何かを成し遂げるときにやるポーズだ。
疑問はある。
混乱もしてる。
正直わけがわからないことが多すぎる。
ぶっちゃけ急展開にもほどがある。
けど、ミウミのその顔を見たとたん、自身が沸いてきた。
「やってやりますか!」
レーヴァテインを足元に突き刺し、私は指輪を左手の中指にはめた。




