第二話
「起きたか?少年。」
そう声がした。
それと同時に浩介は目を覚ました。
まわりは、いつもと同じ、いや、よく見るとまわりが止まって見える。
よく見る漫画で時間が止まっている景色があるがそれみたくなっている。
「ここは・・・・なんだ?」
そう呟いた。
普通では無い。まわりの風景を見て、そう思った。
そして、
(どこから声が聞こえたんだ?)
そう思った。
そして辺りを見回すと、
「やっと気づいたか。」
そいつを見たとたんに、そう言ってきた。
そいつは一見普通の男に見えた。(顔はどこぞのモデルかって思うくらいに整っている)
だがよく見ると、頭に何かの出っ張りが見え、更によく注目する。
「鬼!?」
驚き、そう声が出た。
何しろその男の額には黒い角がちょうど二本存在していた。
「やだな-。せっかく目を覚まさせてやったのに相手からそんな風に言われるのは。それとこれは鬼の角じゃなくて悪魔の角だよ。」
そう男が肩を竦めてそう言ってきた。
それよりも聞き捨てならない事を聞いた。
「悪魔?と言うことは俺はさっきのあれで死んで地獄に行くのか!?」
普通であれば気にはならなかっただろう。
コスプレか?と最初は思ったものだ。
しかし、まわりの状況や、直前に起こったことを考えるとコスプレだの何だの思えなくなってしまった。
「うーん、正確には違うかな?」
こちらの疑問に何故か疑問形で返してくる男もとい悪魔。
そして、悪魔がもう一度口を開き、
「確かに死んではいるけど地獄には行かないし、そもそもあるのかなんて分からないし。」
と言う風に言った。
最もだ。
じゃない。聞きたいのは違う。
「じゃあ、お前はなんだ?誰だ?それとまわりは一体どうなっているんだ?」
さっきからずっと気になっている事を聞いた。
まずは目の前にいる男の事は浩介は知らない。
そもそも角が生えている人なんて誰も知らないと思う。
それとまわりの風景だ。
風景自体は変わらない。しかしその雰囲気が、いつもと違う。
例えば、さっきいったようにそのまま時が止まった感じに。
それらの質問に対して男は肩を竦めながら、
「1度に二つもしないで欲しいね。本来人間の脳はそこまで処理能力に優れている訳じゃあ無いんだから。」
と言う風にいい、
「でも話長いよ?いい?」
と言う風に聞いてきた。
浩介はそれに対して頷き、
「じゃあ分かった。説明するよ。最初の質問は少し難しいから2つ目から言うよ。まわりの風景は僕がやった・・・いや、ここの空間だから僕でもすることが出来た。この空間は生と死の狭間と言う所で、中途半端に生き、中途半端に死んでいる者しか訪れることが出来ない場所だよ。だからそこのことを誰かに話したとしても話半分に受け流されるか、頭がおかしいと思われるのがオチだね。そしてその空間は、元々いた空間とは時間の流れが何故か違う。例えるのならば地上と宇宙の時間の流れ方に近いね。その性質を利用して時間軸に干渉し、ジャック、そして好きなように時間の流れを変えているわけ。そのせいでまわりの風景が違うわけ。因みに地上とは時間が10万倍の速さで進んでいるよ。」
そう言い、説明が一つ終わった。
話長い。
違う。思うことはそこじゃない。
ていうか、時間軸に干渉するって何?というか僕でもって言ったけど、普通出来ねぇよ!!
「さて、じゃあ、一つ目の質問に答えるよ。
僕は君のいた世界の住民じゃ無い。この角を見るとおりにね。」
と言う。
そして浩介はそれに対して、
「転生か何か?」
よく読んでいた転生系の本を思い出してそう聞いた。
本当なら馬鹿げてるまたは馬鹿馬鹿しいとでも思っただろう。
浩介も転生なんて夢物語だと思っていたのだから。
「うーん。どっちかって言うと転移かな?この世界の本とかで言う。」
目の前の男はそう修正してきた。しかし異世界から来たということは確認できた。
でも・・・
「まぁ、転移云々は信じる信じないはともかく何で俺の所に来たんだ。それと、何でお前がこんな所にいるんだ?」
気になった所があったので追求した。
俺はごく普通の中学生だ。異世界から来たのならその俺の所に何故来たのか。
そしてその男によるとここは生と死の狭間だ。
何故転移してきた奴がこんな所にいるのか。
それらの疑問がわいてきた。
そんな疑問を抱いた俺に対し、
「何で来たのか?君がたまたま僕のいるところに入ってきたからだよ。最も、そういう人を待っていたのだけど。それと何でここにいるのかは、僕の魂が限界に近いからだよ。」
限界に近い?
そう思い、声に出そうとしたときに、
「向こうでちょっとやらかしてね。色々あったんだよ。それよりも、ちょっと相談があるんだけど・・・・」
それを遮ってこう言った。
「あっちの僕の体とこっちの君の体、交換しない?」
そう提案をしてきた。
言いたいことは分かった。
しかし、
はぁ?とそう思ったときに、
「いっておくけど、君はもとの体には戻れない。それはこの世界では死んだものとして認識されてしまっているから。けど、僕がそれに入れば、元々この世界の住民ではないからそれを潜り抜けられる。そして君が向こうに行けば、僕がやろうとしていることが適用出来て、向こうで生きられる。でも、これを君がもし蹴ったならば、君は全てをリセットされて、何万年もの時を過ごして新しい体を手に入れる。そのときには君という魂は存在せず、真っ赤な他人として元の世界に生まれるだろう。因みにあまり質問は受け付けられない。君の魂の実体時間と僕の魂の実体時間がもう殆どないからね。だから質問も簡単なのを一つだけにしてくれ。」
と早口で言ってきた。
何を言っているのかはさっぱり分からない。
よく考えれば、詳しいことは何も話されていない気がするからだ。
だが、これを蹴ると俺は完全に死ぬらしい。
それだけは分かった。
だから一つだけ、これだけを聞いておくこれは普通は二つと認識されてしまうかもしれないが。
「とりあえずお前の提案を受けるとして、ちゃんと説明はあり、俺の記憶や人格はちゃんと存在するのか。」
「二つの気がするけど・・・それくらいなら、うん。まぁ、向こうの方で僕の記憶のコピーを用意してあるからそれを見てもらう事になるけどあるし、君がその体の所有権を持つことになるからちゃんと記憶も人格も残るよ。」
つまり、後のお楽しみという感じか。
そう思った浩介は少し悩み、
「分かった。そうしよう。」
提案を受けた。
正直悪魔のような奴の提案なんて不安しかない。
けれど、満足しないまま死ぬのは嫌だ。
だったら一か八か賭けてみよう。
「うん。分かった。それじゃあ早速はじめよう。」
男が笑いそう言った途端、目眩がし、視界が暗くなっていく。
そして、
「向こうの方でちゃんと君の記憶として僕の記憶があるからそれから色々知ってくれ。」
最後にそう言う声が暗闇の中、延々と響いていた。