両国の奔走
-フィリピン-
「あら、ロキ少将。」
「ザミエル大佐。いや、今は少将だな。ベトナム陥落の功績を称えられて少将に就任したんだ。総統閣下の心の広さに感謝するんだな。」
ロキ少将はそう言いながら、ザミエルと一緒に居るもう一人の方を見る。
「お待ちしておりました。チュール中将。」
片膝を着き、立膝の体制で挨拶をする。
「ロキ少将、敵を逃がしたようだな。まあ、そんな事は別に構わんのだが。占領できたようだしな。」
「寛大なお心遣い、感謝の極み。」
「フェンリル中将は大丈夫だな。彼は我々四天王中でも最強に値する者。失ってはならないからな。」
チュールはSSの所謂黒服と呼ばれる制服を着ている。そして、フード付きマントと謎の動物。カラスみたいな動物の面で顔を隠している。
「はい。あの黒豹に助けられました。」
「あの戦車は我々超人部隊だけが扱える戦車。それ故に大量生産しないからこれ以上ないほど頑丈に出来ている。」
「はい。私も、あの戦車に救われました。」
-赤の都市-
「ロキとフェンリルは作戦を達成したか。」
ヒトラーの後ろに居るカラス『フギン』と『ムニン』。いずれも、北欧神話に出てくるワタリガラスである。それが、ヒトラーに状況を伝えた。
「日本がフィリピン撤退を支援したようだな。やはり、奴らは我らの下に降らんかったか。そうでなくては困るのだがな。」
ヒトラーは王座に座る。赤の都市、ニューベルリン。そこは、ヒトラーがいずれ世界を支配したとき、世界政府の中心。そして、世界の王になる場所だった。
「我ら第四帝国は、世界を統べる。そして、その為には第三帝国を一度滅ぼさねばならなかった。滅ぼさねば、次の繁栄は来ない。そして、選ばれた者だけがこの繁栄を掴む事ができる。」
ヒトラーは世界地図を見る。それは、南極の虹の都市を中心に描かれた世界地図だった。
「1世紀ほど前の愚かな部下はこの場所にもはや存在しない。やはり、無能どもではなく有能な人間達。超人だけが支配する世界が正しいのだ。」
-皇居-
「まずは撤退の成功、ご苦労でした。」
玉座に座る、三笠天皇陛下は、初瀬と三隈を皇居に呼んだ。
「そして、フィリピン亡命政府の皆様方。」
先に専用機で脱出していたフィリピン政府の面々は、亡命政府設立に動いていた。そして、その様子を見て天皇陛下は皇居に呼んだのだった。
「はい。この度は我々と、そして国民を受け入れて頂き、感謝のしようがありません。」
「そんな事はありません。私が願っていることは、一刻も早い貴方がたの帰国です。」
「はい。そして、この度の自由フィリピン政府の承認を心から感謝いたします。亡命政府の身ですが、これからも貴国と永久友好をさせて頂きます。」
自由フィリピン政府は、大和が最初に承認した。そして、まだ自国に政府が残っている国は次々に承認した。他にも、自由ベトナム政府や自由タイ政府などが各国に作られ、そして承認されていった。
-黎明島 海軍鎮守府-
「これで、北緯15°以南の国は完全に陥落したわね。」
初瀬が北緯15°線上をマーカーで線を引く。
「これ以南には、我が海軍の潜水戦隊と軽水上戦隊が作戦行動を行っている。任務は、敵占領地の偵察と通商破壊、泊地奇襲等。でも、未だに敵の輸送船部隊を確認できていないらしいの。」
「妙ですねえ。敵は物資を自国に運んでいないのでしょうか?。」
三隈は可笑しいと思う。普通、占領したら輸送船でそこの資源を自国に運ぶ必要がある。そうでなくとも、輸送船で守備隊を運ぶのが普通だった。
「輸送機も捉えていないらしいし。敵は一体、どうやって運んでいるのかしら?。」
「考えられるのは、海中。ソナーの反応はあったんですか?」
海上も空中も違うなら、残りは海中しかない。
「いえ。ソナーには反応がないそうよ。不気味ね。潜水艦まで全く活動していないなんて。」
「もしくは、活動していても捉えていない。彼らは、悔しいが潜水艦技術では30年以上は離されている。彼らが無音航行装置を開発していても、不思議じゃない。」
実際、現在の水中高速化時代を切り開いた国もドイツが初めてだった。日本も持っていたが、まだまだ問題は山積みだった。
「結局、敵を捉えるのは困難って訳ね。仕方ない。まだ実験段階だけど、投入するしかないわね。」
初瀬は、窓から港を見る。港には、幾つか潜水艦が並べられている。殆ど作戦行動中である為、泊地にいる艦艇は少ない。
「あの潜水艦ですか?」
潜水艦は艦橋などのハッチのところには他から見えないようにシートを立てている。潜水艦は、専門家がハッチの厚さを見ると、大体どの深度まで潜れるか分かるものだ。
「実験段階なんだけど。超音波対潜ソナーなど、潜水艦ハンターとして強力な索敵装備を備えさせた潜水艦よ。E機関採用で電波サイトが残っている限り航続距離は無限。もし破壊されても、ディーゼルで脱出できるギリギリの燃料も積んでいるわ。」
E機関とは、大東亜共栄圏内で採用している。発電所で電気を発電し、それを電波に変えて一旦は宇宙空間の衛星に発信する。そして、それを衛星が受け取ったら、アジア各国のアンテナに送信し、後はそのアンテナから受信機を装備している物に発信。そこで電気に変えている。
「まだ、このE機関を軍事転用したのは我々大和だけ。他の国はまだ実験段階。」
「それを投入するんですか?」
「そう。とにかく、敵がどんな手段で輸送を行っているか確かめないと。」
初瀬は南極の方角を見ながら、言った。
作者「最近、疲れてばかり。」
高天原「今回、出番なし。」
作者「御免。でも、次は戦闘があるから、我慢して。」
高天原「じゃあ、早く次回予告して。」
作者「次回は、敵艦隊と中華民国沖で海戦を行う『中華民国沖海戦』です。」
高天原「それと、今回の題名、奔走って程でも無かったんじゃ。」
作者「(聞こえなかったフリして)次回もお楽しみに。」
高天原「無視するな!!」




