史上最年少の艦隊司令長官
-黎明島-
「止まって下さい。」
武装した日本海軍の歩哨が、手を出して車を止める。
「すみません。ここは、海軍の島なので民間人は立ち入る事が出来ないんです。」
一人がゲートの所で、10式自動小銃を持って立っている。
「海軍の関係者を。陛下と、軍令部の許可も取り付けている。」
そう言って、初瀬は許可証と身分証を見せる。
「ハッ、初瀬殿。どうぞ、御通りください。」
そう言って、ゲートを開けさせる。三隈はアクセルを踏んで、車を走らせた。
「それにしても、凄い警備だな。」
橋の上には、戦車も配備されている。それに、渡った所には重機関銃を備えられた銃塔がある。海には、武装艇も哨戒している。
「当然よ。ここは、海軍どころか国家機密レベル。そう易々と、こういう物は他国に開示出来ないのが、政治って物よ。」
「僕って、一応まだ新聞記者なんですけど。」
「貴方は本日付で海軍報道官になりました。新聞社は退社届けを出しておきましたので。」
「ひ、酷い。そんな勝手に。」
「国のする事は、絶対権力よ。」
「横暴だ。」
またしても、初瀬の行動で三隈が被害を受ける。
(ウ、ウ。なんで、こんな仕事を引き受けたんだろう。)
心底、心から悔やんだ。
(会った時は、年に似合わず大人っぽいと思ったけど、やる事は大人以上に酷い。)
「止めて。」
初瀬の合図で、車を黎明島海軍鎮守府で止める。その横には港が広がっており、多数の軍艦が停泊している。
「あの大きな艦は何ですか?」
その中でも一際目を引くのが、一番奥で係留されている巨大な軍艦だった。
「軍事機密だけど、一応貴方も軍属の身だから教えとくわ。ヴォルケンクラッツァー2。今では象徴艦となっているわ。」
「ふーん。」
-黎明島海軍鎮守府-
「貴方はそこの休憩室で待ってて下さい。私は司令長官と話があるから。」
そう言って、休憩室を指差す。
「あ、ああ。分かった。」
もう、敬語を使う事は少なくなっている。打ち解けたと言えば正しい。
「ふう。」
煙草に火を付け、少し寛いでいると、
「見かけない顔ね。」
黒い、長髪の女性が話しかけてくる。
「一応、軍属の人間だけど。」
「そう。もしかして、取材?。そのカメラ見るに、報道官でしょう?。」
「一応は。」
「それで、アメリカの現状はどうなの?」
初瀬は海軍軍服に着替え、司令長官の部屋に訪れている。
「首都は壊滅した。これが、偵察衛星が捉えた8時間前のワシントンだ。」
机の上に置かれた写真を初瀬は見る。
「手の込んだ事をするわね。炎で鉤十字を描くなんて。」
ワシントンが攻撃されてから暫くした後に撮影された衛星写真には、火災で鉤十字を描いている。
「連中はよっぽど自分たちの旗を世界に示したいらしい。」
「それが、奴らにとって国旗みたいな物だからね。」
「しかし、何にせよ不味い現状だ。アメリカの艦艇は今やまともに戦える艦は殆ど残っていない。それに加えて首都はこの惨状。暫く、アメリカは再起不能だな。」
「フォードを返還して、何処まで戦えると思います?」
初瀬はドック内で修理されているジェネラル・R・フォードを見て、言う。
「護衛する艦艇が殆どいない。戦えるかどうかは微妙な所だ。どちらにせよ、修理がまだ終えていない。3ヶ月は修理に掛かる。それまでに、アメリカは護衛艦群を再編して基盤を整えれば話は別だが、首都はあの惨状。」
「どちらにせよ、難しいって事ね。」
初瀬は溜め息を付く。
「アメリカが工業力をフル稼働して艦艇を整えても、空母は3年か掛かる。護衛する艦は戦時と言うこともあり、各種試験を早めても1年。残存艦艇の再編から始めるだろうが、1年半は難しい。」
「1年半。それまで、こっちが耐えるしかないのですね。」
「良い事に、連中は進軍をやめた。一斉攻撃の無理がでたのか、陸軍の方は損失が大きいみたいだ。今後は暫く海上と大空が主戦場となるだろう。」
「空と海か。空母が大活躍しそうですね。」
「確かに、空母は海で戦いながらも大空での戦いが可能だ。活躍はすると思うぞ。また、君の叔父上の後を継ぐ事なるのだが。」
言い渋っていた司令長官は、机の引き出しから一枚の紙を出す。
「あの時、君が頑として拒否した命令書だ。また、御国の為に働く事になるぞ。」
「御国に尽くすのは大歓迎でしたが、」
そう言って紙を受け取り、
「艦隊司令長官は反対でした。」
司令長官に言う。
「だが、君はその命令書を受け取った。それは、受諾と受け取るぞ。」
「もう、今では抗命罪が付きますから。」
「それでね、葦原がね・・・・。」
「そうなんだ。」
その黒髪長髪の女性と話っきりであった三隈はすっかり寛ぐ事が出来た。
「三隈さん、軍服に・・・・何故貴方がここに居るの?」
初瀬が戻ってきて、黒髪長髪女性に向かって言う。
「え?知り合い?。」
「知り合いも何も。私が練習航海に出た時に乗艦していた艦の艦魂ですから。」
「あら、初瀬ちゃん。大きくなったわね。」
「え?えええ!?」
三隈は驚く。今まで話していた女性が、艦魂だったとは想像していなかった。
「その様子だと、ようやく叔父上の跡を継ぐことにしたのですね。」
「次郎叔父様の跡を継ぐことになりますわね。結果的に。」
「嬉しいわよ。また、海で一緒に過ごせるなんて。それと、この次郎さん似の殿方は誰ですか?」
艦魂は三隈の方を見ながら言う。
「天原、その人は三隈優。現在は海軍報道官。大尉相当官よ。」
「覚えててくれたのね、その名。ふ~ん、三隈ね。」
「天原?」
「あ~、違う違う。艦魂からそう呼ばれているだけで、本名は『高天原』。」
「神話の土地をその名に持つ空母よ。別に珍しくもないけど。今の大和には。」
「なるほど。」
「そんな事よりも急ぐわよ。フィリピンから残りの人たちを脱出させないと。空は敵に奪われ、それまでに脱出できていた者は良いけど、まだ数百名が取り残されているわ。」
「それを救助に行くのね。久しぶりに、血が騒ぐわ。軍艦としての血がね。」
「何か、物騒なことになっているんですけど。」
三隈はそう言いながらも、自分が少しではあるが歴史に関り始めていることを実感し始めている。もはや、自分は世界に、歴史に、国家に無関係な人間では無くなったのであった。
-南極『虹の都』 赤の都市 総統官邸-
ナチス第四帝国は南極の大陸の内部にある。虹の都と呼ばれているここは、七つの都市によって構成されており、都市の名も虹を構成する色で呼ばれている。赤の都市は、別名『ニューベルリン』と呼ばれている。
「ハイル・ヒトラー!!。」
総統の座る王座の前で、トールはナチス式敬礼を行う。
「うむ、ご苦労だった。アメリカへの大打撃。奴らは少なくとも一年はまともな行動を行えない。」
「ありがとうございます。」
「総統閣下も甘いですね。」
誰も居なかった筈の右の壁際に、ロキとフェンリルが現れる。
「ロキ、神出鬼没にも程があるぞ。」
「御免なさい、総統閣下。でも、フェンリルには怒らないんですね。」
「言っても返事しないからな。それに、どうせお前が連れてきたんだろう。」
「だって、フェンリルは何にも言わないんだもん。」
「まあ良い。確かに、甘いのかもしれんな。だが、けじめは確りと付けて貰う。」
そう言って、トールの頭を銃で撃ち抜いた。
「ザミエルも痛がってたよ。それ。」
ラドムVISWZ1935をモデルに15mm50口径弾を撃てるように改造した化物拳銃。もはや、常人には扱うことが出来ない。
「装弾数4発。銃撃戦には不向きだよ。」
床では、トール中将が悶えている。
「ロキ少将、フィリピンへ向かってくれ。そこを占領する。超人部隊を率いて、な。」
「仰せのままに、総統閣下。」
そう言って、ロキとフェンリルは消える。
作者「ようやく、日本の一人(?)目の艦魂が登場した。」
高天原「やっと、出してくれましたね。」
作者「プロローグを予定より伸ばしたから。その分登場が遅れた。」
高天原「それと、超人はどうやったら死ぬのかって、疑問のメールが10通近く来たとか来ないとか。」
作者「頭ではないんだよね。もう書いてるけど。まあ、別に分かるだろうから書かないけど。」
高天原「分かりました。では、次回の予告を」
作者「次回はフィリピン撤退戦を書きます『フィリピンからの後退』です。」




