表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

我々は帰ってきた

それは、突然訪れるのだった。


見たことも無い航空機。見たことも無い軍艦。見たことも無い車両。それが、突然南半球全域に現れ、地を焼き、空を焼き、海を焼いた。



-アメリカ海軍 空母『ジェネラル・R・フォード』-


「一体、どういう事なの!?」


南大西洋を航行する空母の飛行甲板で、艦魂のフォードは我が目を疑う。護衛する艦艇が、まるで紙みたいに簡単に沈められていく。


「あの軍は、一体なんなの?我々アメリカに、真っ向から挑んで、勝っている?」


アメリカが世界最強だと思っているフォードにとって、目の前の光景はとても受け入れられない。艦載機を飛ばす間もなく攻撃され、護衛艦は全滅。


「私一人を残して、どうする積りなの?」


そう言った時、体が悟る。彼女はこの艦の化身でもある。自分の艦のレーダーやソナー、その他、この空母が捉えた物すべてを感じる事が出来る。


「近づいてくる。低速だけど、何かが、近づいてくる。」


レーダーに映し出される光点。それは、低速と言えば低速。しかし、その物を考えると速い。



「♪我らは、地の底から。蘇りし亡者。死を見た人間に、死は恐怖の対象ではない♪」


鼻歌交じりに、歌を歌っている。操縦席には誰も居ない。完全に自動操縦のヘリである。


「♪これは、我々の復活の証。我々は帰ってきた♪」


たった、一人。ヘリにはたった一人しか乗っていない。通常よりも長い、マスケット銃を持った人間。


「♪世は変わっても、我々は変わらない。我々は進む、勝利に向かって。我々は進む、地獄に向かって。我々は進む、無限の歓喜の道を♪」


ヘリは低空低速でジェネラル・R・フォードの周りを一回旋回する。


「防御射撃なし。そりゃあ、海面スレスレじゃあ、レーダーには捉えられても。射撃レーダーには映らないわ。」


ヘリは飛行甲板に、堂々と着艦する。



-ジェネラル・R・フォード-


「大胆な奴。」


飛行甲板で見ていたフォードは、敵の大胆さに驚く。


「軍人として、その大胆さは称賛に値する。でも、大胆でも無謀。たった一人で、この空母乗組員全員を相手にするの?」


甲板には、次々と武装した兵士たちが出てくる。


「ぎゃあ!!」


しかし、マスケット銃から銃声一発が轟いただけで。出てきた兵士12名が血を吹きだして死亡。


「馬鹿な!?。」



「私たち、『超人計画』によって生み出された優良人種を舐めないで貰える?貴方達が何千、何万、何億が束になっても。私たちには敵わない。」


軍帽を取り、スーツを脱ぐ。その下は、見覚えのある軍服だった。


「分かったら、全員海に飛び込みなさい。」


マスケット銃を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべながら言う。


「分からないで立ち向かってきたなら。軍人としては勇敢。でも、同時に無謀。」


再び発砲し、艦橋に入る入り口の所の壁に隠れていた武装している兵士30名が一瞬で死亡する。


「私は魔弾の使い手。分かりやすく言うと、魔弾の射手。お見知りおきを。」


まるで、公演が終わった後の主役の舞台挨拶の終わりを締めくくる礼である。


「装弾数7発。内、6発は私の願った所。最後の1発は悪魔の望んだ所。つまり、私の頭部。」


マスケット銃をクルクル回して、再び肩に担ぐ。


「だから私は6発撃ったら銃本体を変える。」


今度はマスケット銃を甲板に突き立てた。


「分かったら、降りなさい。」


声は小さいが、その声には迫力があった。乗組員も、フォードも威圧される。渋々、乗組員は退艦する。フォードも、その場から逃げ出したかったが、彼女は空母の化身。本艦からあまり離れることが出来ない。



「それで、貴女は何です。」


ふち無し眼鏡、長身、そして見覚えのある軍服。そして何より、長い特徴的なマスケット銃。その銃にはこれもまた見覚えのある刻印が刻まれている。


「貴方、私が見えるの?」


フォードは、突然この空母をたった一人で占領した人間に問う。男性か、女性かパッと見では判断が出来ない。しかし、話し方から女性であることが分かった。


「見えるの?って事は。貴方は、水兵たちが言っている艦の魂ね。確か、艦魂と呼ばれている。」


「そうよ。私はアメリカ合衆国海軍が誇る、原子力航空母艦ジェネラル・R・フォードの艦魂、フォードよ。それよりも、貴方は何者なの?」


目の前の女性は眼鏡を直す仕草をする。


「そうね、この空母は世界に対して情報を発信できる。それに繋いでもらえるかしら?」


その女性は、アメリカ国防省に通じる戦術情報通信ネットワークとそれを使った世界通信システムへのアクセスを要求する。


「それをどうする積り?」


「貴方の質問に答えるの。それも、親切に世界中に対してね。」


「わ、分かったわ。」


フォードはそのシステムにアクセス。回線を開いた。


「出来たわよ。」


「いい子ね。」


そう言って一度咳払いをし、


「全世界に通告する。我々を忘却の世界に追いやった全世界に通告する。我々は、目的を達成するため帰ってきた。繰り返す。我々は、帰ってきた。」


その軍服、そしてマスケット銃に刻まれた刻印。呪われた『鉤十字(ハーケンクロイツ)』が、マスケット銃と軍服に刻まれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ