光の祝福1
「う~ん。いい朝♪」
私はベットの中で大きく伸びをした。
昨夜の悪夢が嘘みたいに、すっごく気分のいい朝だった。陽の光がカーテンから差込、鳥の囀りが聞こえる。なんだか爽快、いい日になりそう。
「今日も精霊の恵みがあらんことを。全てのモノに日と月と大地と大気の恵みが絶えませんように」
朝のお祈りを済ますと一日が始まる。
目が醒めると、其処にはグレイは居なかった。けれど、ベットの傍には昨夜グレイが引寄せた椅子が確かにあったし、寝相の悪い私がキチンとを毛布をかけて眠っていたし、それより何より、目覚めた時とっても温かな感覚があったからちゃんと約束してくれた通りに傍にいてくれたのは夢じゃなかったと思えた。
だから、とりあえずちょっぴりまだ旅を続ける自信をもらって目が醒めた。
◇ ◇ ◇
「う~ん。どこから探したらいいんだろう…」
ということで自分のできることから始めなくてはと決意も新に、まずは昨夜紹介してもらった仕事を始める。おじいさんがくれたお仕事は『迷子の子犬探し』!という基本中の基本。期間は一週間、仕事料は安いけれど、ありがたいことにその間おじいさんのおうちで寝泊りしていいし、お食事もつくのだ。本当に感謝、感謝だ。
だから尚更、子犬を探し出しておじいさんに喜んでもらいたいけど、土地感はないし、闇雲に探すには時間もないし、第一、町の外は危険も多い。
「そんなこと、探査の魔法を使えばよいことではないですか?」
うっ…
失せモノ探しの探査の魔法はその失ったモノの正確なイメージかその軌跡なんかが残っていれば大して難しいものではない。この場合は子犬が使っていた道具なんかが残っていれば簡単にできる。レベルとしては闇の精霊魔法の初級ってとこかなぁ~
この探査の魔法は旅に出る魔道師たちに人気がある。初級レベルなら精霊さんの力を借りずにできるし、更に精霊さんの力を借りて高度な魔法が使えるようになると見たこともないお宝!さえ発見できると言われてるのだ―――勿論術者のレベル次第だけどね…
でもさぁ~
「…できない…んだよね…その魔法…」
そう言うとグレイは思いっきり目を瞠って…ああ、呆れてるぅ~
「本当ですか?あんな基本中の基本の魔法」
「し、仕方ないじゃないのよぉ~、人には向き不向きってのがあるんだからね!」
「向き不向きというレベルの魔法という気はしないのですが…。では、貴女に向いている魔法とは何なのですか?今後の為に聞かせてください」
ううっ…
「む、向いているって言うかぁ~できるのはぁ~体力を回復できるのと毒治療とぉ~攻撃魔法だったらファイアーボムぐらいかな…」
と、にっぱと誤魔化し笑いをしながら応えてみた。
私のできるのはとりあえず、その3つだけなのだ。水の精霊界の癒しの魔法の超初級レベルの回復魔法は小さな怪我とか疲れを回復するもの。大地の精霊界の毒治療の魔法は大地に根付くものの毒を回復するもの、実は魔物の毒は治癒できなかったり。火の界の攻撃魔法は、学院で最初に習う一番簡単な攻撃魔法だったりする。
ちなみに普通魔道師は学院を卒業するまでに初級レベル(精霊さんの力を借りない魔法)は殆んど全て覚える。だから大体10くらいは覚えてるものなのだけれどね。お兄ちゃんなんて在学中に精霊さんを召還して中級レベルの魔法を覚えたらしい(らしいというのは忙しそうで殆んど会えなかったから)上に、魔法と剣の複合技を自分の力で復活させて先生たちを感動させていたんだけど。
「…。」
グレイが表情を変えずに無言で私をじっと見ている。呆れて言葉もないらしい…
「では益々このようなところでのんびりしていることはできませんね」
っへ?
「今日のところは私が探査してみましょう。それと、その場所の危険性もある程度見通しておいた方がよさそうですね」
小さな溜息とともに呟かれる言葉に驚いた。
「ええ?そんなことできるの?だって二つとも力の源が違うよぉ~!」
じろりとグレイは私の叫びをその一瞥で制して言う。
「普通はしませんね、というかできませんよ。私くらいの上級精霊ならできないことはありませんが、精霊が人間界で魔法を直接使うのは疲れます、しかも、違う根源の魔法はね」
更に言葉は続く。
「早くこのくらいの魔法覚えてくださいね」
例の愛想のむちゃくちゃ良さげな笑いつきで。
「はいぃぃぃぃ~」
ううううぅ~気分のいい朝だと思ったのに~結局はこうなのね…
「あ、それから」
な、なんでしょう?まだあるんですか?
「その二つを使うと精神力を相当使うので今日は私の力をアテにしないでくださいね」
それはそれは綺麗な笑顔でグレイが笑う。
「丁度いいでしょう?鍛えられると思いますよ」
…。
うわ~ん。爽やかな朝を返せ~~!!