店のおすすめはワンタン麺
深夜の東京。
雨とネオンでテカテカの路地に、汚いけど流行っている小さなラーメン屋がある。
店主は柴犬だ。
なぜか誰もつっこまない。
理由は簡単で、美味いから。
といっても初めて来た客ですら誰も驚かない。
この辺では、終電を逃すと大体どうでもよくなる。
柴犬は黙って麺を茹で、黙って器を出す。
前足で箸を持つが、落とさない。
客より姿勢がいい。
常連が聞いた。
「なんで犬がラーメン屋やってんの?」
柴犬は一瞬だけ考え、
寸胴を見て、
路地を見て、
雨を見て、
一言だけ言った。
「…ワン。」
その夜もラーメンはうまかった。
理由は分からない。
でも東京は、
だいたいそんな理由で回っている。




