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自由VS風紀

 空は快晴。屋上では、焼きそばやたこ焼きの香ばしい匂いが立ちのぼり、着たいように制服を着たり、私服でいる生徒達の笑い声があふれていた。バンドを組んでいる生徒の演奏が響き、異常な盛り上がりを見せていた。



 ――その時。

 風紀委員会、到着。

 先頭に立つ神津レンヤは、もはやカリスマ経営者のような風格がある。

「この場を、不正規イベントと認定。直ちに解散を要求する」


 一人の生徒が叫ぶ。

「えー!これは生徒同士の文化的交流でしょ!」


 レンヤの目が光る。

「風紀委員、制圧行動開始――」


 だが、その瞬間。「ストッーーープ!!」


 割って入ったのはソウタだった。

 彼の手には、ある証拠のスクリーンがあった。

「これ、見てください。風紀委員会が制定した校則の文章!!」


【第5条:服装は品位を保つこと。ただし、品位の定義はその都度見直すことがある】


「見直すことがあるって文言、つまり自由の余地、残ってますよね?」


【第10条:学生同士が協力と連帯感を深め、人間関係を築く】


「このイベントは、10条と理念に一致しています!」



 風紀委員たちがざわつく。

 レンヤも一瞬、表情が固まる。


 ソウタは言った。

「お前らは、守ることに必死で、見直すことを恐れてるだけだ。でも、見直しって破壊じゃない。進化なんだよ」


 一瞬、沈黙。


 それでもレンヤは、毅然と答える。

「進化の先に、混乱があるなら――私は、選ばない」

 だがその時、1人の生徒がぽつりと言った。

「でもさ…校則が進化しないなら、俺らの人生って、既製品みたいじゃない?」


 その言葉は、風紀委員たちの心に響いた。

 かつて、自分たちも“自由”を語っていた時代を思い出す。

「委員長…本当にこれ、止めますか?」

 レンヤは少しだけ、目を伏せた。


 そして――

「……開催時間、17時までです。それを過ぎたら、全員、茶道室で反省!」


「はーい! ありがとうございま~す♪」

 ミクは満面の笑みで飛び跳ねる。

 こうして――

 史上初、風紀委員公認の自由イベントが開催されたのであった。



 イベント終了後、校舎の屋上は静まり返っていた。

 喧騒が嘘のように消え、レンヤは1人、風に吹かれていた。

「終了時間、守ったな。まったく、妙な奴らだ」

 そう呟きながらも、どこか口元が緩んでいる自分に気づく。

 笑った? いや、まさか。

【第30条:生徒は整った笑顔のみを許可する。下品な大笑い・露骨なニヤニヤは軽薄とみなす】と、あるのに。


 その夜。レンヤは久しぶりに、封印していた“あのノート”を開いた。

 風紀委員に入ったばかりの1年生の頃、彼が書いていた「理想の風紀委員像」がびっしりと綴られている。


「生徒全員が、自分の個性を信じられるような空間を作る」

「ルールは、みんなが“共に決めたもの”であるべき」

「“罰する風紀”ではなく、“支える風紀”を目指す」


 ページをめくるごとに、今の自分がいかに遠くへ来てしまったかを思い知らされる。

 そして最後のページ。

 そこには、かつての委員長・友川マコトからの手紙がテープで貼られていた。

「もしお前が風紀委員長になったら――全員を同じ制服にするような風紀だけはやめてくれ。自由を縫い合わせるのが、風紀だ。切り捨てるんじゃない。つなげてくれ」


 レンヤの手が震えた。

「マコトさん…俺、全部…逆をやってた…」


 その時、コンコンとノックの音。


 ドアを開けると、そこにはミクがいた。

 相変わらず制服の着方は崩れていて、笑顔は自由そのもの。


「やっほー、委員長。日記読んで泣いてるとか、青春っぽいじゃん」


「……覗くな」


「だって気になるじゃん。で、思い出した? 最初に風紀に入った理由」


 レンヤは静かに、ミクを見る。

「君は…どうして“自由”にこだわる?」


 するとミクは、

「自由って、怖いんだよ。でも、怖いからこそ、笑って向き合うのが…あたしのやり方なの」


 彼女の目が、一瞬だけ真剣な色を帯びた。


「委員長。あたしがバカやってるの、ただの反抗じゃないよ。あたしだってさ――この学園、守りたいんだ」


 沈黙。でもその沈黙には、どこか温もりがあった。

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