風紀委員長の秘密
風紀委員会本部は、旧校舎の一角を占めている。
そして、その屋根裏部屋に「委員長室」が存在していた。
その部屋には、大量の記録ファイル。
校則の制定履歴、違反者リスト、風紀委員の内部マニュアル。
そして――写真が一枚、額に入って飾られていた。
風紀委員に入ったばかりのレンヤと、笑っている数人の仲間たち。
彼はその写真を見つめながら、小さく呟いた。
「安心は、誰かが犠牲にならなければ、守れないんだ…」
数年前――風紀委員会は、今とはまるで違う空気だった。委員たちは皆、明るく、ちょっと抜けていて、それでいて、何よりも「自由」を大切にしていた。
「ルールってのはさ、守らせるためじゃなくて、守りたくなるものであるべきだよね」
当時の委員長――友川マコトは、そう言って笑った。
「違反者を罰するんじゃなくて、気づかせるのが、風紀の役目なんだってば」
その姿に、レンヤは憧れていた。
だがある日――
突然、風紀委員会が突如炎上した。SNSで、ある誤解が拡散されていたのだ。
「風紀委員は生徒をえこひいきしている!」
「裏で決めたルールで好き勝手やってる!」
事実無根だった。
だが、拡散スピードは止められなかった。
生徒たちは委員会に不信感を持ち、当時の委員たちはバッシングされ、次々に辞めていった。
マコトは最後の日、レンヤに言った。
「俺たちは、信じるってことを信じすぎたんだな。でも…お前なら、いつか本当の風紀を…」
それが、マコトの最後の言葉だった。
それ以来、レンヤは変わった。
一切の感情を切り捨て、ルールを守ることに徹した。
「誰にも傷つかせないシステム」を作ることこそが、風紀委員の使命だと信じて。それがどれだけ、笑顔や自由を犠牲にしていようとも。
レンヤは鏡の前でネクタイを締めながら、自分に言い聞かせた。「大丈夫だ。神津レンヤ、お前が犠牲になることで、学園は守られている」
そして、今、何とかしなければならないのは、桜井だ。なのに、どうしたら彼女が笑顔になるかを考えてしまう…
その時、風紀委員会の通信端末が鳴った。
【緊急事案発生。上にて、自由連合による学園祭が開催中】
レンヤは静かに頷いた。
「……来たか。自由の亡霊どもが」




