フェイと無翼の天使
前回のあらすじ
女になってた
ふぅいつの間にか(幼)女になっていて混乱したが、かつての男としての記憶もどこか他人事なのですぐ落ち着けた。しかし、おそらく憑依したのに自我は天使さんよりに、記憶は岩崎なんとかさんに由来してウィム・ロストになったのだろう。うん、大分しっくりときた。
「落ち着いたようですし、話を再開しましょう」
「はい、ご迷惑をお掛けしました」
「では、あなたにはスキル関連のゴタゴタを調整をしてもらいます。やり方は私の世界に直接赴き、私が貸与する『創造』の力で良い感じにしてください。取り敢えずは以上です。なにか質問は?」
たしか名前を決める前になにか質問したいことがあったような…?
「あぁ、異世界での魔物やらモンスターやらについて考えていた気がしますね」
「そう、そうです!私は戦闘経験もありません。それでも成り立つような世界なのでしょうか?」
もし、戦闘力が前提にあるような世界であるならば、ろくにスキルを調整する前に死んでしまうだろう。翼もないらしいから飛んで逃げるなんてのも厳しそうだ。
「あっはは!」
「!」
女神様が笑った?それも何かバカにするようでなく意外なものでもみたような?何かそんなに変なことを言(思)ったか?
「ははは!ふうふふっ。あーいえ、あなたが、そんなことを言うのが面白くて。安心してください。そもそも記憶がなくなっていなくてもあなたを呼んでスキルの事をやってもらうつもりだったんですよ?」
確かに、最初にあったときに『目が覚めたのか』とかいっていたような。あれ?なんかおかしくないか?なんでこの体の天使さんはこの真っ白い空間で寝ていたんだ?もしかしてすんごい厄ネタなんじゃ…
「あ、ああその事ですか。その事はええっと…」
なんか女神様が動揺している!やっぱりこの体聞いちゃいけない何かが…?あ、いつの間に女神様が右手を上げてる。考えるときのルーティーンなのかもしれないけど、なんか少しピリッとするんだよなぁ。
あっ動揺が収まってスッとした顔してる。
「お待たせしました。言語化に手間取りまして。」
「いえいえ、誰にでもよくあることです。なんかコツでもあればいいんですけどね。」
「えぇ、そんな概念があれば欲しいです。
っと脱線するところでした。で、あなたのその体ですが、私の創った天使のひとりです。あなたは先の他の神との小競り合いで、運悪く大怪我をしてしまい私の『創造』で癒している最中でした」
「なるほど、でその最中に日本人、岩崎ホニャララが入ってしまったと、ゆうことですか?」
「だいたいはその通りです。補足するなら私と同じ体はすぐに『創造』できたのですが、頭を打ったのか目覚めなかったんですよ。そこで寝ている間に記憶を読み取り翼を『創造』しようとしたら別の記憶で上書きされて翼の無い天使、ウィム・ロストになった…というわけです」
…なんか色々と申し訳なってくる話だった。いや、私は岩崎の自覚はないので創造の神様に手間を掛けさせたことに。と言うか神同士の小競り合いとはスケール大きい話だ。あっそうだ。
「私のもとの名前を教えていただけますか?後、創造の神様の名前も」
これは聞いておかねばダメだろう。私は思い出さねばいけないのだ。そして今度こそ役立つために!
「えっとですね…あなたの名前は…名前は……」
あれ女神様?止まってしまった…。あ、もしかしたら天使の数が想像以上いて名前までは覚えていないのかもしれない…
「いえっ!あなた方天使の名前はしっかりと覚えていますよ!」
「しっ…失礼しました!」
そうだったこの方は神。覚えていないなんてあるわけ無い。そんなことは考えるだけで失礼だ。
「いえ、こちらこそ声を荒げてしまい失礼しました。そしてあなたの名前なのですが伝えないことも考えたのですが、教えることにしました」
「謝らないでください。私が悪いのです。そして教えてくれるのですね!」
伝えない選択も有ったらしいが教えていただけるのであれば過ぎた話だ。
「ですが約束があります」
「なんでしょうか」
「あえて伝えないことで新たな成長があると考えましたが、あなたには確かに無くした過去があります。それを知る権利を奪うのは違うと思ったので伝えます。ですが過去の名前に囚われても欲しくないので…。過去のあなたの名前はフェイ、ですが『フェイ』として生きようとしないでください。これが約束です。あなたはウィム。私の翼の無い天使、無翼の天使ウィム・ロストとしての生を生きてください。もう失ないたくないですから」
なるほど創造の神様はとことん私の事を考えてくれているらしい。約束されたからには答えねばなるまい。
「はい!私はかつてフェイとして生きた天使!
ですが、その名を棄てウィム・ロストと名乗りし無翼の天使です!」
私は名も翼も失なったが確かに得たものがあったらしい。