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いびつな絆

 次の日、学校へ行くとクラスメイト達は以前と変わりなく広本の存在を無視していた。

しかし、広本は岡崎という友達ができた事で、以前のような疎外感を抱く事は無くなっていた。


 朝の会の始まりを告げるチャイムが鳴る。

今朝もまた岡崎の姿がなかった。

 朝の会が終わる頃に、ようやっと岡崎が教室に入って来た。

「すいません!道に迷っていたお婆ちゃんがいたのでーーー」

「岡崎君、もういいから席に座って下さい」

岡崎の言い訳を遮って担任が言った。

岡崎は、はっとした表情をしたが、すぐさまふくれっ面に変わり、席に着いた。

気まずい朝の始まりだった。



 その日の昼休み

「岡崎君、お話がありますので先生と一緒に職員室へ来てください」

担任は岡崎を連れて教室を後にした。


 岡崎は、五時間目の授業が始まるギリギリまで戻って来なかった。

広本は岡崎と早く話がしたくて、放課後が待ち切れず、そわそわと落ち着かない気持ちでいた。



 やっと帰りの会が終わり、広本は急いで帰り支度をして岡崎の元へと駆け寄った。

「先生の話、何だったの?」

広本の問いに岡崎は答えずに、教室を後にした。

広本は動揺して、岡崎の後を追った。

「ねえ、岡崎君怒ってるの?」

「うるせえな。ついてくるんじゃねえよ」

岡崎の機嫌は悪かった。

先生に叱られた事で八つ当たりをしているのか、広本に対して怒っているのか見当が付かず、広本は混乱していた。

広本は黙って岡崎の後を歩いた。


 下校途中にある公園の前に差し掛かった時、岡崎が立ち止まった。

「ちょっとこっちに来て」

広本は岡崎に促されるままに、公園の中へと進み、トイレの裏手へと誘導された。

トイレの裏手には木が生い茂り、周囲からは死角になっていた。


 岡崎は突然広本に蹴りを入れた。

広本はこの行動で、岡崎の怒りは自分への怒りだと理解した。

「痛っ!岡崎君なんで?」

「てめえ、先生にチクりやがって!昨日、寄り道したって、散々怒られたんだぞ!友達を裏切りやがって!このクズ野郎っ!」

広本に罵声を浴びせ、また蹴りを入れた。

「やめてよ!きっと、お母さんが勝手に学校に電話したんだ。俺は知らなかった事なんだよ。お願い!怒らないで!」

泣きながら岡崎にすがりついた。

岡崎は、広本の胸ぐらを掴み、自分へと引き寄せた。

「広本、いじめから救ってくれたのは誰だ?俺だろ?俺は、お前の恩人だろ?俺と一緒に居たら、いじめてくる奴なんていないし、お前にとってたった一人の友達なんだぜ?」

顔と顔をギリギリまで近づけて、静かに低い声で言った。

広本は言い知れぬ恐怖を感じた。

「うん。これからはこんな事がないようにするから許して」

「二回目はないからな!気を付けろよ。俺はお前を守るし、お前は俺を守るんだぞ?わかったな?」

岡崎はポンポンと広本の肩を叩いた。

「じゃ、帰ろうぜ。あ、俺に“君″はいらなから!友達だろ?」

と岡崎はニヤリと笑った。

「え?うん。じゃあ、岡崎って呼ぶね」

「うん。今から家行っても良い?」

広本は困った。

「岡崎ごめん。お母さんにまた学校に電話されたら困るからさ」

再び岡崎が怒り出すのではないかと、恐る恐る広本は言った。

「わかったよ。親にちゃんと話しておいて!」

岡崎は以外にも素直に聞き入れ、広本は安堵した。


 帰宅すると広本は母親に食ってかかった。

「お母さん!なんで岡崎が寄り道した事を先生に報告したの!お母さんのせいで岡崎は先生から怒られたんだから!」

「歩夢、お母さんは岡崎君を叱ってほしくて学校に連絡したわけじゃないの!学校から家に帰って来なかったら、岡崎君のお母さんが心配するでしょ?だから、心配しないように『うちに来てますよ』って連絡してあげたんだよ。それからね、歩夢、あの子はあまり良い子とは思えないな。学校だけのお友達にしてくれないかな?家にもう連れて来ないようにね!」

「お母さんまでそんなこと言って!!みんな何もわかってないくせに岡崎の事悪く言って」

広本はしゃくり上げて泣きながら自室へと籠った。

 

 広本は夕食も食べずに部屋から一歩も出て来なっかった。

父親が広本を説得しようと部屋に入ると、広本は布団をかぶって泣いていた。

「歩夢?お母さんから話は聞いたよ。せっかっく仲良くなった友達のなのに悪く言われたら悲しくなるよね。だけどさ、家のルールってのもあるんだよね。歩夢だけの家じゃないんだから、勝手に誰でも連れて来ちゃダメなんだよ。これは、歩夢だけじゃなくて他の兄弟達も同じだからね。なにも、友達をやめなさいとは言ってないんだから、遊び場所は家以外にもあるでしょ?」

泣きはらして目を赤くした、広本が布団から顔を出した。

「お父さん、岡崎に『また遊びにおいで』って言ってたけど」

と、かすれた声で反論した。

「あ、あぁ、言ったね。あれはお父さんが間違ってた。ごめん。ごめん・・・・・・腹減ってないの?飯食えよ!」

父親はドギマギしてごまかした。

広本は少しうつむいた後、「おしっこしたい」とポツリと言った。

「トイレ行ってこい」

父親は笑った。

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