~妹に会ってみましょう~
~妹に会ってみましょう~
ムネリに紹介をしてもらったけれど不完全燃焼だった。
「そうですね。もう少し説明すべきでした」
ムネリにそう言われた。説明?レイリーという人間性についてだと思ったら違った。
私が面会をするものは全て記録されており、どういう話しをしたのか報告をする必要があるのだと。
今回レイリーが報告するのは収穫量の落ちている他領についての確認と冷害に強い小麦の話しをしたということだという。
だが、レイリー自身は話しを聞くことができたとしても決定できる立場にはない。そして、聞いた内容を上司に報告した場合にどうなるのか。
今回はレイリーとムネリが同じ師から教わったという事でたまたまムネリと話していた時に私に話しが伝わったということになるらしい。
近いうちにレイリーの上司が私に面会を申し込むとのことだ。
「その場合はどうすればいいのかしら?」
「冷害に強い小麦の話しと苗の提供をすれば宜しいかと。種まき用についてはある程度こちらに持ち運んでおります。すでに発芽までさせているため食用には向きませんが」
ムネリがそう教えてくれた。
後日、レイリーの上司という人が事前にアポイントを取って訪問してきた。私が相手をする必要はないとのことだったのでムネリに対応を任せた。
「あれは小物ですし、恩義を感じるような性格でもありませんのでお嬢様が相手をする必要はありません」
そう言われた。小麦の苗を提供してスムーズに終わったのだそうだ。恩は巡り巡って戻ってくるから問題ないとムネリに言われた。
確かにあの小麦ってちょっと育成にも癖があるんだよね。その情報は小物感丸出しの上司には伝えなかったのだと。
「レイリー経由で広めてもらいます。レイリーの立場もよくなるでしょう」
私自身あのレイリーの性格はちょっと受け入れにくいなって思っていたけれど、ムネリからは「個性的ではありますが優秀なので安心してください」と言われた。
うん、心配すぎる。レイリーがこれからの実績に期待しよう。
後ずっと気になっていたのだが、ムネリとレイリーの師匠って人はどういう人なのだろう?
「あの人と会うのは難しいですね。今、お嬢様はこの離宮から外に出ることができません。そのため、会える人はこの離宮に来られる人のみです。我が師は足が不自由なため移動が困難なのです」
なんだろう。リーリカが行ったように足を誰かに切断でもされたのだろうか?
「ええ、無実の罪で足を切断されました」
どこかの貴族の怒りを買ったのだと思った。もしくは誰かの代わりに罰せられたのだろう。
「わかりました。では、次にムネリが言っていた人についてですが、書簡を送りましたが反応はいかがでしょうか?」
ムネリが次に交流を持つべきと言って来たのは私の腹違いの妹についてだ。
この妹についてはアネモネ時代でもどうなったのか情報がまったくなかったのだ。
第四王妃の『セリナ』王妃とその娘であり私の妹であるケイトはかなり肩身の狭い思いをしているという。
そしてセリナの実家であるミストラル子爵家もまた肩身が狭いという。ミストラル家は領地を持っている貴族派であるが、男児を埋めなかったということだけで第二王子であるレストールから見放されているという。
なのでまずは普通にこの親娘をお茶会に誘ったのだ。調べると当たり前だが、この二人をお茶会に誘うような貴族は誰もいなかった。
「さっちゃんに聞きたいのだけれど、ミストラル子爵領ってどの辺にあって、何か名産はあるのかしら?」
お茶会で設定する前に相手のことを知っておかないと踏まなくていい地雷を踏みそうだものね。
「ミストラル子爵領は王都から北東に位置していて、主要街道から離れた場所です。山岳地帯ではありますが木材、木工加工などを得意としています。畑は斜面を活用してはいますが、標高の高いところだと寒気のためなかなか小麦が育ちにくいとのことです」
なるほど。では、小麦の提供と木工加工品がどのようなものがあるのかを確認するのがいいかしら。
テーブルとか棚とかそういうのだったらどうしようとか思った。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
セリナ王妃はなんというか薄幸そうな感じの人だ。まず、全体的に顔が薄いのだ。目も小さ目、唇も小さ目で薄い感じなのだ。髪は少し黒っぽい金髪のロングでウェーブがかかっている。目に付いたのは髪をまとめているバレッタがかなりおしゃれなのだ。
木製なのは見てわかる。形状はリボンの形をしているのだが、その色味が格子状になっているのだ。木の元の色味をつかいつつアレンジをしている。つい目が奪われるのだ。
横にいるケイトも顔立ちはすごくセリナ王妃に似ている。なんというか薄幸で守ってあげたくなる感じの小動物って感じなのだ。
ただ、セリナ王妃との違いは眉が黒く、太いので意思が強そうに見える。後は目鼻立ちも目立たずひっそりとしているのだ。
背も低く本当に小動物って感じの二人。ケイトが着けているバレッタの形状は普通なのだが、中央に黒いラインが入っていて、真ん中に小さなエメラルドが埋め込まれていた。
シンプルなのに目が奪われる。そういうものだった。
「はじめまして、エリザベート・フォン・イレスティアです。そのバレッタ素敵ですね」
そこからバレッタについて、他にどういうものがあるのかで話しが盛り上がった。
そして、次に寒い地域でも育つ小麦についても話しをしたらセリナ王妃が「そういう小麦があるのなら実家なら喜ぶと思うわ」という話しになった。
話しが盛り上がっていた後にケイトからこう言われた。
「どうしてお茶会に呼んでいただけたんですか?」
「そうね。私には友達がいないのよ。だから、お友達になりたかったのよ。それに私は母親とも距離を取られていますからね」
私がそう言うとセリナ王妃はなんだか納得した表情になった。
「そうね、エリザベート王女殿下のご母堂は少し個性的な方ですからね」
何か思う所があるのだと思った。
「なんだか母がご迷惑をおかけして申し訳ございません」
とりあえず謝罪をした。
「いえ、気にしないで。私も誤解していたわ。あなたの悪い噂ばかりを信じていたから。でも、普通の女の子だったのね」
セリナ王妃にそう言われたら、なんだか後ろで控えていたミューズの挙動がおかしくなった。疲れているのかしら?
「噂があるのは存じています。けれど、私はそのことについて私の口から説明することができません。それが全てです」
この表現は、真実は別にあるけれど、それは言えないということを意味するんだよね。そして、この事は触れないでというお約束でもある。
「そうだったのですね。確かに王都の一部ではあなたの事を悪く言わない人たちもいましたから」
え?そうなの?そんな人いたっけ?
「それはどちらの方ですか?」
「神殿の方です」
オムスリ神殿長か。そう言えば、彼も王都に居る間に会っておきたいけれど、流石に神殿長を離宮に呼び出す用事がない。
ただ、王都で気軽にお茶会を開ける相手ができてよかったと思った。そう、平和だと思っていたんだ。
まあ、刺客は定期的にリーリカたちが排除してくれていたから。けれど、お茶会でるんるんだった次の日にアポなしでやってきた相手がいたんだ。
「なんで、俺を無視してあんな奴と会っているんだ!」
同腹の弟がやってきたのだ。母であるカーラ王妃を連れて。




