~しっかり断りましょう~
~しっかり断りましょう~
記憶の中の母はこんな顔だっただろうか?
5歳の時、全属性でないと知ると私と一切の関わりを持たなくなった母。
そのため、顔について全然思い出せなかった。
カーラ王妃についてはさっちゃんが面談前に情報をくれた。
カーラ王妃は第三王妃である。イレスティア王国では、王妃は男児を産んだ場合二児をもうけない風習があるそうだ。よくわからないね。
だから、第一王子の母と第二王子の母は別である。私には後姉と弟と妹がいるが姉は第一王妃の子、弟は私と同じカーラ王妃の子だが、妹は第四王妃の子だ。第四王妃はその後男児を産むことがなかったため、石女と呼ばれている。
王妃は男児を埋めれば価値があると言われ、男児を埋めなかった王妃は位が下がるが、これが全属性だと話しが変わる。
私の妹は水属性のみに特化していると聞いている。私の事もあるため全てをそのまま信じるわけにはいかないがこの妹についてはアネモネ時代にも行方が分からなかったのでそこまで気にしていない。
カーラ王妃だ。今さらどうして会いに来たのだろうか?純粋に私のことを思って会いに来たとはあまり思えない。
「いきなりカーラ王妃が訪問してくる理由って何だと思う?」
こういう時は他人に聞くのが一番だ。まずはイレスティア王国内の貴族関係をすべて記憶したさっちゃんに確認する。
「そうですね。カーラ王妃の生家である『ミズガルド侯爵』はかなり借金を抱えているようですね。だから今回のミルザ王国からの結納金のことをどこかから聞いて来られたのではないでしょうか?」
まじかぁ。そういう背景があるのか。ミューズを見る。
「そうだな。乳母のミレイ殿の実家のノジン子爵はリッツハルト侯爵から支援を受けています。おそらく懐柔されているかと」
まじかぁ。ということは第二王子派閥なのね。ミレイは私によくしてくれていた記憶があるのだけれど、頼ることはできないのか。
「わかったわ。その情報を元に二人とこれから会うわ。さっちゃんは侍女として私の近くに居て。ミューズは」
「私はその場に居ない方がいいでしょう。相手側が警戒しますから。それに、私も実家から色々と言われても居ます」
まじかぁ。
「でも、裏切りませんから。私の忠誠はエリザベート様に捧げていますから」
ミューズさん。なぜ私の顔ではなくお腹を見ながらそう言い切るのですか?
「ご安心ください。私の忠誠も同じくエリザベート様に捧げております」
ムネリは土下座をしながら私の太ももと凝視している。いや、あなた達の忠誠って一体何ですかね?ちょっと問いただしたいです。
ほら、さっちゃんが冷ややかな目で二人を見ていますよ。
「お二人がお待ちなので早く準備してください!」
見慣れない侍女に急かされたので私は二人を待たせている部屋に向かった。
「お待たせいたしまた」
二人には待っている間にお茶とお菓子を提供してもらっていた。だが、二人とも表情が険しい。
「久しぶりね。エリザベート」
まず、母であるカーラ王妃が口を開いた。まあ、主導権はカーラ王妃になるだろうと思っていた。ミレイは目礼のみ。しかも二人とも座ったままだ。
「お久しぶりです。カーラ王妃、それにミレイ様」
世間話から入った。これで終わればいいのだが、そんな事もないのはわかっている。
「そこでね、ちょっとエリザベートにお願いがあるのよ」
はい、きました。絶対に断ってやる。
「あなたが治めているカージェス領なんだけれど、すごく景気がいいんですって?」
あれ?そっち?ミルザ王国からの結納金をかすめ取ろうとして来るのかと思っていた。
「カージェス領は多くの方が尽力していただいた結果ですわ」
「そうなのね。それでね。私のお友達がね、カージェス領で商売をしたいと言っているのよ。けれど、なかなか承認が得られないみたいなのよね。だから便宜を図って頂戴」
リムバは怪しいところは受け付けないだろうし、それにカージェス領はももちゃんのお父さんが運営している商会に任せているしね。
「そうなんですね。商会の参入については現場に任せておりますので。正規の手続きでお願いします」
「あんたが領主でしょ!だったらちょっとくらい配慮しなさいよ。それくらいできるでしょ?」
なんかいきなりカーラ王妃が豹変した。怖いわ。何これ?
「ルールを守るが領主の勤めです」
「何よ。母親のいう事が聞けないというの!」
「ルールを破れと言うのが王妃としての命令であるのなら書面でいただけますか?王妃印を押したもので通達していただければ対応いたします!」
王妃印を押した書面は王妃だけの独断では発行できない。それを実行するためには王宮にいる文官にも通知しないといけないし、記録も残さないといけない。そう簡単なものではないのだ。
「少し落ち着いたらどうかしら?」
横にいたミレイがそう言って来た。
「エリザベート。別にね私たちそこまで無理なお願いをしているわけじゃないのよ。手続きに時間がかかっているのようだからどうにかしてほしいとお願いしているだけなのよ。わかってくれないかしら?」
なぜ、ここまで食い下がるのだろうか?おそらく手続きが不受理になっているということは、保証金か保証となる貴族のどちらかが足りていないのだろう。
「商会を受け入れるというのならばお二人が後見人となっていただい、手付金をいただければいいのでは?」
私がそう言うと次はミレイが豹変した。
「は?なんでたかが商会ごときのために後見人にならないといけないのかしら?後見人になんかなったりしたら、もしその商会が問題を起こしたら連座で責任を追わないといけないじゃな!」
いや、そのための後見人制度ですからね。
「それに、手付金なんて商会が払えばいいだけじゃない。ああ、そうだ。いいこと思いついた。商会が出店してあげるのだから未来に向けて利益がでるでしょ。そのお金を手付金とすればいいじゃない!」
ミレイにかぶさるようにカーラ王妃がいい事思いついたみたいに言って来た。いやね、私でもわかるよ。それは手付金ではないし、利益が出た上で納めるのは税金だ。
「手付金の意味をお調べになってから言われるといいと思いますわよ。とりあえず、私は便宜を図ることはありません」
それに、こんなやり方でカージェス領にやってくるなんて絶対にまともな事とは思えない。
「あなたどうなっても知らないからね!」
なんかそう言って二人は去って行った。何がどうなるのかなんてわかっていなかったけれど、翌日接点がない人からの来客が来たのだ。その来客はウィンザー公爵だった。




