~イレスティア王都に戻る前に気をつけましょう~
~イレスティア王都に戻る前に気をつけましょう~
ミルザ王国からのイレスティア王国への帰還はひっそりと行われた。王都が何者かの襲撃を受けたことを隠すためでもあるし、何名もの騎士が今も臥せっていることもあり、パレードをするには護衛が足りないと言うこともあった。
別に私はパレードや夜会がしたいわけじゃない。正直イスファと入れたらそれでいいのだ。それにイスファも気丈に振舞っているが、かなり苦しそうなのがわかる。
「大丈夫?」
そう聞いても「大丈夫だよ」と返ってくるのがわかっているから何も言わない。私も回復魔法が使えたらいいのにと本気で思う。
というか、なかなか教えてもらう機会も見る機会もないのだ。ちょっとだけ、最初だけでもいいから見せてくれてもいいのに。
神官にも神殿長にもお願いしたが断れた。いっそ、私が怪我でもしたら回復魔法を見れるのかもと思ったが、リーリカに止められた。
リーリカの防衛を突破するのは難しい。ってか、イスファの事があったからか、かなりリーリカが気合い入っているんだよね。ミューズなんかずっと私を抱えているし。
ムネリとさっちゃんは二人で何かを話している。そして、ずっと鬱状態で塞ぎこんでいるのがブルーノだ。
自信家だったものね。失敗で凹むとか子供みたい。あ、子供だったわ。何か声をかけた方がいいのかと思ったけれど、かける言葉が思いつかなかった。
それにブルーノの暴走が無かったらどうなっていたのか。このミルザ王国の王都を襲った襲撃犯が暴れていた時、私は王都から離れていた。だからある意味安全だったとも言える。それが解っているから誰もブルーノを責めはしない。ただ、私は納得いかない。だって、ブルーノが考えた策は誰にも話していなかったし、それにミルザ王国が犠牲になるものだったからだ。
イスファは何も言わなかったからこそ余計にブルーノは責任を感じているんだろう。まあ、イスファが許しても私は許せる気はしない。まあ、だからといって苛めたりするつもりもない。ミスを受け止めることが大事だとラナさんが言っていたからだ。怒りをぶつけてもいい事はない。わかっているが、ブルーノの今のうじうじしている状況は腹が立つ。
だから絡まないことにした。見ない事にした。存在しないことにした。それにそれをブルーノが望んでいるしね。
だから誰もがスルーをし続けている。そのままベルティック侯爵領にたどり着いた。
「おぉ~、大変お疲れでしたぁ。このクロース・フォン・ベルティック感謝しかございませんぞぉぉぉぉ!!!!」
そう言いながらベルティック侯爵は回転しながら私に近づいてきた。うん、わかっているけれど、かなり濃ゆい。
「それにぃ、ブルーノがかなりご迷惑をかけたと聞いておりますぅぅぅ。こやつに変わりぃ、お詫びぃいたしますぅぅぅぅ」
そう言っていきなり土下座してきた。更に、横でぼーっとしていたブルーノを叩いたかと思うと頭を掴み地面に叩きつけた。
「何だその態度はぁぁぁ!!!!死んで詫びるかぁぁぁ!!!おい、わかってるんかぁ!!!お前がぁ!!お前がぁ!!!」
そう言いながら何度も何度もブルーノの頭を地面に叩きつけていた。というか、額が割れて血だらけになっている。すごい状況だ。ってか、この豹変が怖かった。
「え~と、別にここでブルーノが死んだとしても何も変わりません。そういう芝居がかったのは不要です」
言いながら、ずっとこのベルティック侯爵は歌劇的な行動をする人だったのだと思いだした。今回のこの行動もおそらく演技なんだろうな。怖い。
「そ、そうですか。ならばぁ、ベルディック領でぇぇ、ブルーノを再教育いたしますぅぅぅ!!!」
うん、暑苦しい。というか、なんかそういうエフェクトが出ている気がする。怖すぎだわ。
「ではお願いしますね」
私がそう言うとベルティック侯爵は近づきハグをしてきた。その時小声でこう言われた。
「王都に戻られたら宰相には気を付けてください。彼は第二王子に王位を継承させることに注力しています」
はい?ひょっとしてこの事を言いたいためにあそこまでやったと言うの?うん、やっぱりこのベルティック侯爵って怖いわ。
でも、宰相ね。どの人なのかいまいちわかっていないんですけれど。おっさんってあんまり区別つかないんですよね。




