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~何が起きたのか確認しましょう~

~何が起きたのか確認しましょう~


 アルダーブ公爵邸についたが、邸宅内はかなり騒然としていた。最初は私が誘拐されたことでばたついているのかと思ったが、どうも違ったみたいだ。


 まず、ムネリもミューズも負傷していた。


「何があったの?」

「お嬢様が攫われた時と同じく館の中に賊が侵入しました。それが、なんというか褐色の肌の女性でした。その」


 そこでムネリが小声になり私に近づいてきた。


「リーリカ殿のような雰囲気の女性でした。影は渡りませんでしたが」


 そう教えてくれた。だが、ミューズを見るとその表情はまるで死人を見たような表情になっていた。


「一体何があった?大丈夫?」


 私がミューズに向かってそう声をかけて。ミューズは中庭で布を掛けている方を指差した。


「ありえない。ありえないのよ」


 見たいわけじゃない。死体なんて見て気分がいいものじゃない。だが、ミューズがここまで不安になる原因が知りたかった。


 布を取り、死体の顔を見て、私は心臓が止まるかと思った。忘れることができない顔。

 その愛くるしく、男性に好まれる顔立ちの女性。オリビアだった。


「死んだはずなのに。確かに救えなかったけれど、でもあれは仕方がなかったことよ」


 震えているミューズを私は抱きしめた。ミューズが抱き返してくれた。さらにお腹をぷにぷにしている。あ、これ、大丈夫だわ。


 ミューズの頭を撫でて私は周囲を見る。まずさっちゃんだ。さっちゃんの表情も悪い。何か思う事があるのだろうか。だが、それ以上にうずくまり何かぶつぶつ言っている男がいた。ブルーノだ。


「ブルーノ。どうしたの?」


 ずっとブルーノは「こんなはずじゃなかった」と言い続けていたからだ。


「一体何があったのよ!というか、あんたは何をしたの?」


 不思議だった。私が誘拐されたことについてだ。確かにオーゴは強かった。けれど、ムネリ、ミューズにリーリカが居れば防げたはずだ。いや、ムネリとリーリカはオリビアの対応をしていたのかもしれないが、そもそも私の寝室にはミューズが居て、リーリカが護衛としていたからだ。


「ああ、敵を誘い出すために少しだけ様子を見て欲しいと言ったんだ。人外なんてそうそういないはずだからね。けれど、なんだよ。なんだよ。あんなの反則じゃないか!」


 なんだこれ?子供みたいに駄々をこねているだけじゃない。それに人外なんていっぱいいる。ダークエルフを見た私にとって、いや、転生するきっかけとなった時に出会った悪辣女王だって即死してもおかしくないのに動いていた。


 普通じゃない存在なんて腐るほどいる。目を合わせないブルーノの頬を叩いた。力いっぱい。あ、強すぎてちょっと吹っ飛んだ。まあ、ぴくぴくしているけれど動いているから大丈夫だろう。


「何よ。推測したことと違う事なんてあるに決まっているじゃない。それに人外なんていっぱいいるわよ。でも、ここにいる皆無事よ。私だって大丈夫だったじゃない。まあ、私を囮にした事はムカつくけれど、あれは私だから倒せたと思うしまあいいわ」


 ブルーノは自信家だったしね。まあ、何をミスしたのかわからないけれど何なんだろう?「あんなの想像できないだろう。あんな化け物がいるなんて。無理だろう」


 化け物?オリビアがそうだったのかな?倒せているけれど怖かったのかしら?


「本当にすまなかった。助けられなくて」


 ん?助けられなかったってどういうこと?私は無事だし、ここにいる人も無事。誰が無事じゃないのだ?


「誰が助けられなかったのよ?みんな無事じゃない」

「イスファン王子殿下だ。今神殿で治療してもらっている」


 はい?何が起きたっていうのよ。私はすぐに飛び出して神殿に行こうとした。だが、ムネリに止められた。


「今、神殿は関係者しか入れません。私たちはこの国には来賓として来ています。連絡があるまでここで待機です。今行くと国際問題になります」


「・・・わかったわ。それで何があったのかだけ教えて!」

 


 ブルーノは今回の行方不明事件は連動していると思っていた。


 侍女が見つかっていないこともそうだが、紛失したものがそこまで希少価値がないものであったことからこの事件はフェイクだと見抜いたという。


 そのため、行方不明者が見つかったその日の夜に何か起きると。


 特に今回行方不明に関わった人以外が本命だとブルーノは考えていた。その相手は私かイスファのどちらかだと。


「エリゼベート殿下は建物の中で戦うのは苦手だけれど、屋外で一人なら無双するはず。だから外に連れ出そう」


 まず、私を囮にすることをブルーノは考えたという。そして、この誘拐を実現させるために、ムネリ、ミューズ、さっちゃんに睡眠薬を盛ったという。


「は?なんてことするのよ!」

「まあ、あまり効きませんでしたけれどね」(ムネリ)

「ちょっと怪我をしましたが、無理やり起きました」(ミューズ)

「頭がくらくらするけれど、大丈夫」(さっちゃん)


 いや、3人とも乗り切ったのか。


「エリザベート殿下にはリーリカ殿がいるので大丈夫と判断したらもう一人人外が現れたのです。その対応をリーリカ殿が行っている時にムネリさんとミューズさんが起きて参加。さらにサリナ殿がアルダーブ公爵邸のものに連絡したという感じです。これが私の一つ目のミスです」


 今思った。ブルーノが普通に話している。ああ、これが『素』の状態のブルーノなのね。何の特徴もないな。


「私がアルダーブ公爵邸の人に声をかけたら、アルダーブ公爵邸の人たちはそれどころじゃなかったんです。王宮が何者かに襲われていて、ひどい状況になっていると教えてもらいました。ただ、私たちはミルザ王国の王宮にこんな深夜に立ち入るわけには行きません。国際問題になってしまいます」


 さっちゃんがそう教えてくれた。こういうのって物語とかの主人公なら猪突猛進で突進するのにと思ったけれど、ちゃんとルールは守るんだ。


 特にミューズとか突進するかと思った。


「お嬢様が戻られる前に黒い影は倒し終わりました。ただ、その顔を見て私は心臓が止まるかと思いました」


 ミューズがそう言って来た。


「こんな死者を使うものはイース帝国にはいるの?」


 私がさっちゃんに聞くとさっちゃんはこう教えてくれた。


「イース帝国には色んな考えをもつものがいます。皇帝に権力が集中しているのですが、地方にいる貴族の中には現体制を良く思っていない人もいます。まあ、皇帝は『力こそすべて』といつも言っており、『皇帝の座を奪いたければ力で奪え!』とも言っている人です。ただ、皇帝とその周囲にはありえない力を持った者が多いです。その対抗として下法と呼ばれる魔道士を抱えているものがいます。死体を使った兵士を使ったり、人の意思というか、魂を奪う方法なんかもあると。この下法はこの世のものではなく『悪魔』と呼ばれるものの力を使っているとも言われていますが、詳細は不明です。あくまで噂レベルですが、今回『アレ』を見て思いました。即死レベルの攻撃を受けても、立ち上がり攻撃してくる死体兵士を見て」


 なんかよくわからないけれど、イース帝国が首謀者ってことなのね。


「それで、イスファの所にもこの死体兵士が向かったってことなの?」

「このレベルの奴だと思っていたんだ。だが、あれは何だろう。反則だ!」


 ブルーノは何を言っているのだ?というか、こいつは何を見てきたというのだ?


「ブルーノ。お前はどこで何を見て来たんだ?」

「僕は狙いをエリザベート殿下だと思っていた。けれど、違ったんだ。相手が狙っていたのはイスファン王子殿下だった。そして、やってきたのはこの死体を操っている親玉だ。こっそり王宮に忍び込んでみてきたがあればレベルが違う。あんなのはもう戦いでもなんでもない」


 なんだか何を言っているのかわからないのでとりあえずビンタしてみた。


「痛い!」

「そりゃ痛いでしょ。で、何を見てきたのよ」

「仲間同士で殺し合う場面。髪が黒くなったものは自我を失い暴れ狂っていた。王宮は地獄絵図だった」


 髪が黒くなるだけってどういうことだ?よくわからないけれど、髪が黒くなったら自我がなくなり周囲を攻撃する化け物になるってことなのかな?


「イスファン王子殿下も攻撃を受け髪が黒くなりかけていたんだ。僕はこんな展開を望んでいたわけじゃないんだ。わかってくれ!」


 もう一度ビンタした。


「わかった。それで、イスファンは神殿で治療を受けているということなのね。それで私たちはその報告を待っていると」


 状況は理解できた。この神殿で治せないのなら聖ブブロ王国に行って治療してもらおう。私はこの時はまだ軽く考えていたのだった。


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