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~状況を整理しましょう~

~状況を整理しましょう~


「とりあえず、リーリカは誰にやられたの?」

 

 影に潜みながら攻撃ができるリーリカが苦戦する相手なんて思いつくのは同じく影を渡るものしか知らない。


 私の後悔の一つ。監視も兼ねていたけれど、護衛者だったオーゴを死なせてしまったことだ。


「まさか、影渡り?あいつはオーゴの仇よ。ミューズはいいの?」


 私を後ろから抱きしめているミューズを見上げるように見つめた。だが、ミューズからどのような感情も読み取れなかった。それだけで十分だ。


「リーリカ。教えて。何があったのか?」

「ワカリ、マシタ」


 リーリカは片言でしか話せないので、聞きだすのに時間がかかった。

 

 ・リーリカは普段は私の影に潜んでいるが、イスファの周囲も警戒している。

 ・昨日の夜、イスファが何者かに襲われていたので、助けに入った。

 ・敵は黒い服を着て立体的に動いていた。

 ・倒そうと思ったら速攻で聖水をかけられ、逆に倒されそうになった。


「聖水?ってことはリーリカの特徴を知っている相手ということかしら?」

「アブナカッタ、デス」


 影に消えたわけではないけれど、リーリカの弱点を知っているということは、あの襲撃者の関係者なのかもしれない。


「対処方法を知っている相手。偶然じゃないと思うんだけれど、さっちゃんはどう思う?」


 自分だけなら勘違いかもしれないため、他の人の意見も確認する。


「私は前回の戦いを知りませんし、私が言えることは過去にあった似たような事柄からの推測のみです。普通なら身内からの情報漏えいを疑うのですが、リーリカさんのことを知っている人は私、ミューズさん、リムバさん、ラナさん、モモハ嬢そして、ムネリとお嬢様信仰者のみです」


 ちょっと待って。そのお嬢様信仰者って何よ。おかしいでしょ。そんな変な宗教が流行っているの?ご本尊とかあるのかも気になる。絶対にお腹のぷにとふともものむちっと感が誇張されているに違いない。さっちゃんは続ける。


「この事から過去にリーリカさんが戦って倒せなかったものからの情報が共有されたと思うのが妥当だと思います」


 私だけじゃなかったのね。オーゴの無念を晴らしてやるんだから。そう思っていたら私を後ろから抱きしめながらお腹をぷにぷにしているミューズの手が止まった。


「オーゴはいいやつだった。だが、護衛と言う立場は任務の中で死というのは名誉なことでもある。私はかたき討ちなどの勝手な思いなどは持たない。だが、お嬢様を不快にさせる相手には容赦をするつもりはない」


 なるほど。これは私が義憤に駆られるのを注意しているのだと思った。


「そうか、僕はエリーに守られていたのだな。襲撃者に気が付いたからすぐに脱出路をつかって逃げたんだ」


 ミルザ王国の王城は色んな所に抜け道があるんだった。


「イスファが無事で良かった。けれど、リーリカも怪我をしたのならちゃんと報告してよね」

「ワカリ、マシタ」


 イスファが狙われたのはわかった。けれど、今起きているのはイスファの弟であるタリークと、どうでもいいけれど、もう一人の弟ナジーブラの行方がわからないのだ。


「とりあえず、こういう時は現場を見に行くのがセオリーでしょ。何か証拠が残っているかもしれないじゃない」


 そういうものじゃないのかしら?


「じゃあ、調べてきますね。お嬢様はこちらでお待ちください」


 ムネリにそう言われた。その時ドアがノックされた。誰が訪ねてきたのか確認すると訪問してきたのはブルーノだった。横にはヌーフがもうしわけなさそうな表情をしている。


 ブルーノがこう言い出した。


「んとね、行っても無駄だよ。だって、主がいない部屋をそのままにしている侍女や執事はいないものね。そうだよね。ヌーフさん」


 記憶の中に強く残っている歌劇的な話し方ではなく、どこか甘ったるく、舌たらずな話し方をしている。それがまた怖かった。ヌーフが微妙な表情のままこう話し出した。


「・・・その通りです。部屋はきれいに掃除し終えていました」


 ん?何かがひっかかった。


「終えていたってことは確認してきたってことなのかしら?」


 さっちゃんがそう確認している。


「もちろん、夜中をうるさかったから現場見に行っちゃったね。でも、一人だと場所がわからないから、ヌーフさんに案内してもらったんだ」


 なんか話し方がすごくふざけていて腹が立つ。平常心、平常心。


「それで、何かわかったんですか?」


 ムネリもイライラしているんだろう。なんだか怒りが伝わる話し方でブルーノに尋ねる。


「う~んとね、多分ヌーフさんは何かに気が付いたんじゃないかな?僕だとわからないことだらけだし。話しちゃってよ。気が付いたこと。ね、ね、ね」


 ああ、殴りたい。絶対にブルーノは気が付いているはずだ。しかもこのウザい感じが演技なのが解っているから本当に殴りたくなる。ヌーフさんのこめかみがぴくぴく動いている。うん、ヌーフさん。本当に紳士だ。


「そうですね。気が付いたことをお話しさせていただきます。カーペットにあった皺を見ると敵はこの王城のことをかなり詳しく知っているものだと思います」


 カーペットの皺って何?意味がわからないのですが。


「なるほど。迷いなく歩いていたということですか?だが、おかしいですね。夜の灯りの少ない中、歩けると言うのは何かあると思います」


 ムネリがそう話すけれど、確かに夜は部屋が暗いから迷いなく歩くのは無理だ。ずっと過ごしている部屋でも不安になる。


 イスファが手を上げてこう説明し出した。


「一ついいか?現在、王宮内では、派閥間による犯行か、誘拐の狂言かという論調なんだ。けれど、リーリカを追い詰められるようなものが、このミルザ王国にそういるとは思えないんだ。だから、手を貸して欲しいんだ。それと、関係のないものたちの疑惑を取り除いてほしい」


 なんか誰かが疑われているのね。イスファの仲が良い人なのかしら?


「疑われているのはどういう人なの?」


「アルダーブ公爵。この館の主だ。実は昨日からアルダーブ公爵の行方もわからないんだ」


 ちょっと待って。行方不明者多すぎでしょう。


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