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~プロローグ~

~プロローグ~


 悪辣女王のエピソードには、ミルザ王国第一王子を誘拐したとある。


 一般兵だった私でも知っているエピソードだ。


 嫌がる第一王子を無理やりイレスティア王国に連れ去り、結納金として金銭と食糧を毎年求めたと言う。


 その要求に応えることができなくなり、ミルザ王国はイレスティア王国と国交を断絶。その後、イレスティア王国の南部と連携し国力を増強した。


 ただ、その時のミルザ王国の国王は当たり前だが、イスファンではなかったし、タリークでもなかった。


 そう、愚王と呼ばれていたナジーブラが国王をしていたのだ。


 私はイスファに紹介されてから何度か話しをしたが、イスファの弟のタリークは本当に優秀だ。


 ミルザ王国内の各貴族の事を把握しているし、領内の特徴、特産も把握している。


 どれくらいの税収が見込め、何に投資をすべきなのか、特に喫緊で行う計画なのか、中長期で行う計画のか、すべてを把握しているのだ。


 私が冷害の恐れや、飢饉についての懸念を伝えた所、タリークはミルザ王国内での過去あの対応事例を教えてくれた。


 もちろん、その場には私の腹心であるさっちゃんもいる。


 さっちゃんもタリークの知識の対応力について絶賛していた。

 だからこそ思う。


 アネモネ時代のミルザ王国にはタリークはいなかったのだろうと。もし、タリークが国政に参加していればミルザ王国はもっと食糧を生産できていただろうし、その食糧をイレスティア王国は購入することもできたはずだ。


 他殺か事故死か病死か。


 なんらかの形でタリークはアネモネ時代にはいなかったのだ。


 だったら、何か起きる前にタリークを守る組織が必要だと。



「一番大事なのはお嬢様です。次にイスファン王子殿下です。私たちはそのように動きます」


 ミューズに相談したらそう言われた。まあ、そうなるよね。


 実際、まだイレスティア王国のウィンザー公爵は力を持っているし、ディートリンデ王妃も私たちに対して警戒をしているが、権力を諦めているわけではない。


 どうにか落としどころを探っているのがわかる。一番面倒なのがこいつだ。


「ふん、あんた達の悪事はすべてお見通しなんだから!」


 フェリアル・ドゥ・ミルザ。


 猪突猛進的な動きをする、イスファの腹違いの姉。ただ、このフェリアルが面倒なのは勘に頼っているが結構正解に近い行動を取るのだ。


「ちょっと、そこの衛兵。あの紫の髪の従者の側に行きなさい。あいつはたまに禁止エリアに入ろうとしているわ。あれはわざとよ。あれはバカなフリをしているだけだから、騙されないで!」


 ミルザ王国に入国前に同行することになった、ピエロみたいな出で立ちで『変わり者』と名高い、行動が歌劇的なクロース・フォン・ベルティックの従弟であるブルーノ・フォン・ベルティックを指差してこういってのけたのだ。


 このブルーノは功績を焦っている感じがする。おそらく、クロースが何か指示を個別に出しているのだろう。


 敵ではないのがわかるが、私はまだこのブルーノを信頼していない。いつも目を離すとふらっとどこかに行こうとするのだ。


 歌劇的な振る舞いを辞めさせたら、次は不思議キャラで行くようなのだ。


「え?ちょっとわからなくて迷子になっちゃいました」


 妖艶な顔立ちをしているブルーノがそう言うと庇護欲が出るらしい。私にはただのあざいとだけに見えるのだが、ミルザ王国の侍女のうち大半はこのブルーノの笑顔に騙されている。


 ミューズあたりは嫌悪感を抱いている。さっちゃんは「あんな風にする方法もあるのか」と記憶をしていた。


 これ以上さっちゃんが壊れない事を祈りたい。


 ムネリについては「男に興味はない。俺の興味はふとももだけだ」とか言っていたから平常運転なんだと思った。


 ミルザ国王との謁見も終わったので、このまま数日滞在してその後イレスティア王国に戻るだけと思っていたら事件が起きた。


「あなたたちでしょ!私の弟を誘拐したのは!」


 フェリアルが殴りこんできた。同じタイミングでイスファもやってきた。


「弟のタリークの行方がわからなくなったんだ!」


 いや、誘拐されすぎでしょ。ってか、悪辣女王のエピソードではエリザベートがイスファンを誘拐したのであって、他の二人の王子については知りませんからね。


 ちなみに、イスファも誘拐されそうになったのだが、リーリカが相手を撃退してくれた。ただ、相手についてはうまく認識できなかったらしい。


 フェリアルが騒ぐため私たちはしばらくミルザ王国に滞在することが決まってしまったのだ。


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