~悪夢から醒めましょう~
~悪夢から醒めましょう~
なんかぼんやりと意識がある。なんだろう。この世界は。少しだけ色がくすんだ世界が目の前に広がっていた。
目の前にいるのは幼少期、離宮に居た時の私だった。
「なんで、私だけこんな目に遭うのよ!」
ああ、覚えている。覚えている?何を?
そう、これは『女神の祝福の儀』から帰ってきた後だ。私は『全属性』を発現させたはずなのに、『火』だけという事に『なってしまった』のだ。
理由はわからない。けれど、『全属性』ではない『王族』は『王位継承権』がなくなる。
いや、正確には『正当』な『王位継承者』が全ていなくなってからでないと王位が継承できないのだ。
だから離宮にいたものはエリザベートを、私を正しく扱った。それまではエリザベートがどんなわがままを言っても、周囲のものは全て叶えていた。
だが、この時以降世界が変わったのだ。幼いエリザベートはその事が理解できなかった。自分に問題があると思い、自分の行動の何かが悪いのだと思った。勉強を頑張り、わがままを言わず、執事、侍女の機嫌を取るようになった。
結果、執事が多大な権限を持ち、本来離宮の運用に充てられている費用を横領、最悪なことに『魔薬』にまで手を出していたことが発覚。
事態を重く見た王家は離宮に関わる人間をすべて排除し、焼き払った。
「どうして?どうして?私いい子にしていたのに」
5歳だったエリザベートにはわからなかった。いい子にしていたのに、自分は関係がないのに、自分が魔法を暴走させたと言われ、攻め続けられた。
「ちがうもん、ちがうもん」
だが、エリザベートの魔力量は桁外れに多かった。この時エリザベートは精神の不安定さから何度も魔力暴走し、周囲を焼き払うことを何度もした。
「やはり、あの噂は本当だったのか」
「忌み子だ。呪いの子だ」
「魔力も制御できぬ子など害悪でしかない」
貴族からの声が広がる。ちょうど問題があり、領主が不在となっていた辺境であるカージェス領に降家させることになった。
少し私の記憶とは違う。けれど、覚えている。ああ、これはアネモネじゃなくエリザベート自身の記憶か。
ああ、この時に焼死体だったマリーリカを見つけてネクロマンシーを使ったのか。エルリックは自力で助かったみたいだったのね。
私はその様子をただ見ていることしかできなかった。わかっていることはエリザベートがこの時から世界に対して不満や嫉妬、妬み、恨みを持っていたことがわかった。
カージェス領へやってきた時のエリザベートは周囲への警戒を強く持っていた。
いい子にしているだけでは救われない。狡猾に生きなくては。そう思うようになっていったのだ。
友と呼べるのはリーリカだけ。保護するはずの代官は『魔薬』の素となる『ヒポポリ草』を密造し、販売していることがわかった。
だが、エリザベートは学んだ。このままただ父親に伝えても、いや、監視者が見つけてもまた罪をなすりつけられると。
だから、監視者が自ら発見できるように誘導した。結果は散々だった。
監視者として男女の騎士は殉職した。唯一御者をしていた中年男性が生き残り、王都に報告に行ったが、そのまま戻ってこなかった。
次にやってきた監視者の指示で辺り一帯を焼き払った。指示に従っただけだったが私がまた魔力暴走をした話しになった。
私が嘆いていたら、ダークエルフがその監視者を焼き殺した。
「ふむ、いやらしい波動を感じたから焼き払った。褒めるがよい」
目の前にいたダークエルフの魔力を浴びて何人かはそのまま死滅した。結果的に二つの村がほぼ壊滅したので、一つに集約をした。
起きたことは全てエリザベートのせいにされ、次が国外追放となった。その時国王からこう言われた。
「お前も同世代のものと触れ合えば自分の異常性に気が付くだろう」
異常性って何?罪を押し付けられること?意味がわからない。けれど、環境は変えたかった。
変えた先でもエリザベートは『赤い悪魔』という名で脅えられていた。
その中でもエリザベートに話しかけていたかわいい男の子がいた。イスファン・ドゥ・ミルザ。彼が居たからエリザベートは壊れずに済んだ。
私の中にイスファへの想いがずっとあったのはこの気持ちだったのか。
エリザベートはイスファに依存していった。だが、イスファもまた不安定だった。異母姉弟の二人に苛められ、また、イスファよりも優秀な実の弟のタリークもいる。
誰かに比較され、自分の良さをイスファは見失っていた。このままだとイスファが壊れると思った。誰にも相談できる相手もいないエリザベートはイスファを誘拐することしか思いつかなかった。
いや、ちょっと待って。ちゃんと相談したらなんとかなったでしょ。
ってか、私ってひょっとしたら結構運がよかったんじゃないかな?だって、リーリカだけじゃなく、ミューズもいるし、リムバもムネリもいる。
それにさっちゃんが居てくれるのが大きい。だから大丈夫だよ。
そんなに脅えなくても。だから私に任せて。悪夢はもう終わりだから。
そうエリザベートに伝えた。
ソウカンタンニ アキラメラレテモ コマルノダヨ。
なんだか低いくぐもった男性の声がどこからかした。
どこかで聞いたことあるような声だったが思い出せなかった。う~ん、最近じゃなく結構前に聞いた気がする声なんだよね。
しかもなんというか、一方的に伝えてくるというか主張してくるような感じだし。
うん、わからないから無視しよ。
ってか、夢からってどうやったら起きられるんだろう。
う~ん、この世界から脱出すればいいのかしら?
周囲はセピア色に染まっているけれど、なんというかどこか平面的にも見えるんだよね。
強引に突っ切ってみるか。
手ではつかめなかったので、魔力を込める。なんか魔法は発動しなかったけれど、代わりに魔力そのものが放出されて爆発した。
ア、アリエナイ。コンナ ゴウインナ ホウホウデ。
「お嬢様!お嬢様!」
目の前にミューズがいた。
「あれ?私は?どうして?何かあったの?」
「お風呂でのぼせられたんです。無理しないでください」
いや、心配してくれているのはわかるけれど、なぜにお腹をぷにぷにする。あれ?まだなんか意識を保てない感じだ。
まあ、次も同じような世界だったら魔力をぶつければいいか。ってか、あの魔力そのものの放出ってどうやったんだろう?
でも、大爆発したから簡単に試せないよね。
とりあえず、寝るか。疲れているみたいだし。




