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~自暴自棄な人の相手をしましょう~

~自暴自棄な人の相手をしましょう~


 倉庫の床の板をずらすと階段が現れました。火は離宮に結構回っているため、早めの避難が必要ですが、行く先が安全とも限りません。


 そのため、先行部隊を突入させることにしました。


「私たちでいいのでしょうか?」


 拘束を解いた男性二人を先行として歩かせ、その後から私の信者になった侍女たちが続く。


 リーリカが先行すると言って来たけれど、聖水だけじゃなく光魔法の照明を受けても弱体する。だから先行しないでほしいと伝えたら了承いただけた。


 というか、私を守るように付き従ってとお願いしたのだ。


 だが、私が殿をするのは認められず、殿は少年執事のエルリックが行うことになった。大丈夫なのだろうか?エルリックを見るとかなりやる気を燃やしていた。


 地下を通るため、長い剣は引っかかる可能性があるため、短剣と丸盾を身に付けている。同じような装備をしている人が多い。


 侍女も丸盾を身に付けているが、短剣ではなく、短槍を手に持っている。私にも丸盾を渡されたが武器は渡されていない。


「エリザベート様は前線に出ないでくださいね」


 多くの人からそう言われた。とりあえず、地下道への先行は行動が怪しかったものに丸盾だけを持たせて行わせた。多分大丈夫ですよね。



 なんて、思っていました。今ものすごく焦っています。


 だって、前から明らかに剣で戦っている音がするからです。


「お嬢様。どこかで身を隠してください。確認してきます」


 そう言って影からリーリカが前に行こうとする。いやいや、あなた私の護衛でしょ。ならば離れたらダメでしょうが。他にも侍女や執事たちがいるけれど、暗すぎて見えないのでリーリカに気づかれていない。


「灯りをつけます。これでは私たちは危なすぎです」


 侍女の一人がランタンに火をともした。周囲を明るくして後悔した。何名も切り付けられて倒れていたからだ。それも、首筋を狙い一撃で殺している。手練れがいる。それもゆっくり歩いてくるのがわかる。すぐにランタンを布で包んで光を隠したが遅かった。


「ほう、これはこれは。お嬢様じゃないですか。こんな地下で何をしているのですか?」


 そこに居たのは醜く顔が歪みきったスチュワートが居たのだ。


「スチュワート。あなたはお父様に身柄を確保されたはずでは?どうしてここに?」


 私はそう言いながら魔法を発動できるよう準備をする。


「協力者は色んな所にいるのだよ。だが、もう私は終わりだ。残りの魔薬を手にしたとしても売りさばく先がない。監視もつけられている。だがな、だがな、お前の首を持って行けば受け入れると言ってくださった人がいたのだよ。だから、私のために死んでくれ!」


 そう言ってスチュワートが突っ込んできた。目が血走っている。いや、違う暗闇でも見えるよう魔法で視力を増強しているのだ。


 あれは私が“アネモネ”だった時に革命軍で使うものがいたから知っている。だからこそこの魔法の弱点も知っている。


「スチュワート。あなたはちゃんと罰せられるべきよ!」


 そう言ってランタンにかけていた布を取り外した。


 この魔法は視力を強化している。そのため、いきなり明るくなると一瞬目の前が真っ白になるのだ。


 私はそのまま盾を構えてスチュワートに突進をし、岩壁にまでぶつけさせる。ついでに地面を2回踏んでリーリカに合図をする。


 リーリカは影から現れてスチュワートの股間を強打。男性って股間を強打されたら動けなくなるのよね。口から泡吹いている。


「今のうちにこいつを縛って!」


 すでにリーリカは地面の影に隠れている。一瞬だけだったから侍女や執事たちは気が付かなかったのだろう。


 いや、気が付いたかもしれないが私が何も言わないからスルーしてくれているだけなのかもしれない。


「とりあえず、危機は去ったわ。こいつを縛り上げて。私は生きている人を探すわ」


 だが、私たちより前に進んでいた人は誰ひとり生きていなかった。確実にスチュワートは殺していたのだ。ごめんなさい。救えなくて。



 しばらく歩くと扉が出てきた。


「この扉は私が開けます。お嬢様は後ろに下がっていてください」


 そう言ったのはしばらく私の侍女をしてくれていたサーシャだ。


 サーシャがそう言ったけれど、私は後ろからやってくるはずのエルリックたちを待ちたかった。なぜか遅れているのだ。気になっていたが、まずこの先が逃げ切れる場所なのか知る事の方が大事だ。


 サーシャが扉を開けたら騎士がいた。


「お前らは何者だ!」


 騎士がそう言って剣を向けてくる。サーシャはひるんで声もでない。


「私はエリザベート・フォン・イレスティアよ。あなた達こそ誰に剣を向けているのかわかっているのですかしら?不敬罪で死にたいのでしょうかしら?」


 言いながら思った。悪辣女王って感じだって。まあ、5歳ですけれど。


「階級は?所属は?言いなさい。それとも、剣を向けたことをなかったことにしてもらいたいのなら道を開けてお父様の所まで案内しないさい」


 そう言って更に私は前に一歩踏み出す。


「俺らが受けている指示は一人残らず殲滅だ。悪いが死んでもらう」


 サーシャはそのまま切り付けられた。え?どういうこと。どうしてお父様は私まで倒そうとするのだろう。


 私の後ろにいた執事たちが丸盾で騎士を後ろに押しやっている。騎士は剣を執事たちに突き立てているが、数の暴力で騎士を扉の奥に押しやることができた。


 横に居た侍女が扉のかんぬきをかける。


 扉がガンガン叩かれているが少しだけ落ち着いた。だが、サーシャも騎士を押しやった執事たちも血だらけになり、誰も生き残っていなかった。


 ただ、皆の顔が笑顔だった。胸が苦しい。ごめんね、助けられなくて。


 暗魔法の「ネクロマンシー」の発動を行おうとしたけれど、術は発動しなかった。何か発動に条件があるのだろうか?


 リーリカの時に用に死体に触れてみたが、やっぱり「ネクロマンシー」は発動しなかった。回数制限があるのだろうか?


 かんぬきを掛けたけれど扉がガンガン叩かれている。このままここに居たら危険だ。


 仕方が無い。後ろに戻るか。そう思って振り返ったら煙がかなり充満しているのがわかった。空気の流れがどこにもないのか。


 周囲にいるのは私のほかは侍女が3名だけとなった。


 地面を2回蹴り、リーリカに他に出口がないかを調べさせる。今回と同じことにならない様に扉を奥も身の安全を大事にすることを前提に調べることをお願いした。


 侍女の服にも血がべっとりついている。汗も土埃もあびていて肌がざらざらする。


 私は自分と侍女3人に「ウォッシュ」をかけた。少しだけ気分がましになった。ただ、煙が徐々に迫ってきている。煙が少ない方に向かって私たちは歩いて行った。


 ただ、後ろからくるはずのエルリックたちの足音は聞こえなかった。


 煙で息がしずらい。しゃがみながら布を口にあてて前に進む。振り返ると侍女3人が地面に倒れていた。


 このままだと私も助からない。どうにかしないと。その時地面からリーリカが出てきた。


「コノサキ、アナ、アル。タダ、コドモ、クライシカ、トオレナイ」


 そう言われた。


「案内して」


 そう言われると天井に少しだけ穴が開いていた。


「オジョウサマ、モチアゲル」


 リーリカはそう言って私を持ち上げて穴に押し込んだ。空気がおいしい。


 地上に出て周囲を確認する。離宮から離れているけれど、ここはまだ王宮の中だ。お父様に会えばなんとかなる。


 私はお父様がいるはずの本宮に向かった。衛兵に声をかける。


「お父様に、お父様につないでください。エリザベート・フォン・イレスティアです」


 扉が開き、お父様付きの筆頭執事のミカエルが出てきた。


「エリザベート様。ご安心ください。こちらであなた様を保護します。だから今はゆっくりお眠りください」


 私は安心したのか、その言葉につられたのかそのまま眠りについてしまった。



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