~お茶を楽しみましましょう~
~お茶を楽しみましましょう~
とりあえず、王妃一行は魔封じの塔で休養を取ってもらうことになりました。
あの後、デジャブのようにフェリアルの弟のナジーブラも特攻してきましたが、こちらもパンを頭にぶつけて気絶してもらいました。
もう、学習しない人たちだな。なんて思っていました。
この間にイスファの弟、あ、ナジーブラではなく、母が同じ方の弟が会いに来てくれた。
イスファの弟のタリークはイスファにメガネをかけさせて理知的にさせた感じなんだよね。なんかちょっとクールキャラって感じなんだよね。
「はじめましてタリーク・ドゥ・ミルザと申します」
最低限の情報しか伝えてこないし、しかも目線も合わせてもらえなかった。なんだろう、嫌われているのかしら?
ひょっとして『赤い悪魔』と呼ばれているから怖いのかも。そう思っていたらイスファから「弟のタリークは人見知りなんだよ」と言われた。そうなのかな?なんかものすごく避けられている感じなんだけれど。
ただ、イスファからは「大丈夫だよ」と言われたのであまり気にしないようにした。
ミルザ国王が王都に戻ってくるまでの間に色んなことがあった。というかイベントだらけだ。
もう襲われることはないだろうけれど、イレスティア王国の王女が王都の宿屋に泊るわけにはいかない。
ミューズたちは王城内の来賓室の一角ですごしていたのだが、それはイレスティア王女の付き人という立ち位置だったから来賓室の一角で良かったのだと言う。
問題なく本来なら私はイスファの母の実家であるアルダーブ公爵のタウンハウスに滞在予定だったのだ。
それを、強引にディートリンデ王妃一派が私を捕えてしまったのでややこしくなったと言う。
イスファはすぐに私を救出したかったそうだが、ミューズから「お嬢様は大丈夫ですよ」と押し切られ、関係各所に根回しをしている所だったという。
なんかゴメン。イスファが頑張って根回ししてくれていたのに、ぶち壊して。
というわけで私は王城から護衛付きでアルダーブ公爵邸に移動したのだ。
まあ、ディートリンデ王妃一派が脳筋すぎでしょとは思ったけれど。どうやら魔力を封じたらなんとかなると本当に思っていたみたいなんだよね。
実際は全然問題なかったんですけれど。
アルダーブ公爵邸にはアルダーブ公爵は不在で、ヌーフというイケメン家令が取り仕切っていた。
30代くらいの男性。黒髪をオールバックにした切れ長の男性だ。細身で仕事ができるって感じの男性だ。
どうもミルザ王国はメイドも執事も世間話しに付き合ってくれない。メイドも何人かいるけれど、壁に控えていて私が少しでも動くとすぐに近づいてくるのだ。
まあ、私の近くにはさっちゃんとミューズが控えてくれているけれどね。
ムネリはヌーフとかなり打ち合わせをしているみたいだったけれど、何を話しているのかは知らない。聞いたら「こういうこまごましたことはお嬢様は知らなくて大丈夫です」と言い切られた。
ただ、ムネリはかなり我慢をしているのがわかる。私とさっちゃんのふとももをちらちらみているけれど、いつもの変態行動がないからだ。
流石に他国の、しかも公爵家の中だから我慢しているんだろうな。どこかで爆発しそう。それはさっちゃんが受け止めてあげてね。私には無理だ。
そして、このアルダーブ公爵邸で落ち着いたと思ったら私宛に来客があったのだ。
知り合いなんていないのにと思ったら来客はイスファだった。
それも、イスファの母親であるスィーリーン王妃を伴って。
スィーリーン王妃は二人の子を産んだとは思えないくらい若かった。というか、顔立ちはむちゃくちゃイスファに似ていた。
だが、なんというか眼力がすごい。目をそらしたら負けだ。そう思えるくらいだった。
「どうも、はじめまして。エリザベート・フォン・イレスティアと申します」
負けた。私はカテーシをしながら目線を下にそらした。
「噂はかねがね聞いておる。我はスィーリーン・ドゥ・ミルザじゃ。そう緊張するな。これは非公式の場ゆえ問題はない」
いや、この圧は何よ。もう半端ないプレッシャーがある。目の前のお茶もお菓子も味がまったくわかりませんでした。
ただ、身についた礼儀作法は大丈夫だったみたい。さっちゃんからは完璧でしたと言われたけれど話した内容も覚えていなかった。
覚えているのはこれだけだ。
「私はイスファを絶対に幸せにします。この命にかけて」
そう宣言していた。どういう流れでそうなったのかは覚えていない。ただ、帰り際にスィーリーン王妃が笑顔だったのだけが救いだ。
スィーリーン王妃とイスファが王城に戻ってからムネリにこう言われた。
「あの気難しいので有名なスィーリーン王妃と最後までお茶会が成立したのです。お嬢様は気に居られたのだと思いますよ」
どうも噂で聞くとスィーリーン王妃はお茶会の最中に気に入らないことがあるとすぐに中座するらしい。
礼儀作法が違っていたり、知識が足りないと「もっと勉強してきなさい」と言い放つらしい。
怖すぎでしょ。なんでイスファみたいな良い子がそんな苛烈な王妃から産まれたんだよ。
そう思っていたらディートリンデ王妃はもっとひどいという。その場で鞭打ちをするらしい。ああ、そういう感じの国風なのね。理解したくないわ。
なんて思っていたら次に来客の知らせが入った。次の来客は望んでいない相手だ。
「断りますか?」
そうムネリに言われた。ウィンザー公爵の使いの者が書面を持ってやってきたと言うのだ。
「直接会う必要はないわ。手紙だけ預かっておいて」
ウィンザー公爵が直接来たのならこういう事はできない。けれど、使いの者レベルなら会う必要もなければ、その場で返事をする必要もない。
それにすぐに返事を求められたらその手紙をどう活用できるか考えられないですもの。
「とりあえず、おいしいお茶が飲みたいわ。用意して」
私がそう言うと壁にいたメイドがすぐに動き出した。
用意された紅茶とマカロンはものすごくおいしかった。その気分を台無しにしたのはウィンザー公爵からの手紙だった。




