~ベルティック領へ行きましょう~
~ベルティック領へ行きましょう~
ミルザ王国までの旅はどこかの領を優遇するのは問題になると言われていたので普通に宿屋に泊るように父から言われた。
うん、その理由はわかっているし、通過する貴族も私が同席していることを知っているため触れずにおこうと思ったらしい。
触れると燃やされると思っている貴族が多いからだ。そんないきなり燃やしたいなんかしないわよ。まあ、小さい街くらいならファイアーボールで燃やせたりするけれどね。
あのちょっとカージェス領にできた一本道が有名になっちゃったけれど、あんなのそうそうしないから。
そう思っていたけれどどの領に行っても遠巻きに監視はされているけれど誰も近づいて来なかった。
いいことなのかな?まあ、そう思っておくことにしよ。いい事と言えば移動の馬車の中ではイスファと一緒だったことと、イレスティア王国内の最高の馬車を用意してくれたことだ。
もう、他の馬車と違って全然揺れないのだ。こんないいものがあればもっと広まればいいのに。ちなみに、この馬車の中にはさっちゃんとイスファのいつも横にひっそりといる侍女の4人だ。
この侍女って話しかけても何も反応しないのよね。まるで私は空気ですみたいなオーラを出している。
仕方がないのでさっちゃんとイスファと3人で色んな話しをしていた。といってもミルザ王国の現状とか名産とかイスファが覚えている限りの話しを聞いていたのだ。
「お嬢様、今のは覚えておいてくださいね。ミルザ王国に着いた時のパーティで必要な情報になりますから」
さっちゃんから何度も言われたけれど、そんな色んなことを言われて覚えられるほど私の頭は優秀じゃないんだよね。
それに、さっちゃんが横に入れば問題ないじゃない。まあ、最低限のマナーは覚えていますわよ。これでも王女ですからね。えっへん。
そんな楽しい思いをしながらミルザ王国に向かう旅を続けていた。もちろん護衛もついているから盗賊やモンスターに狙われることなんてなかった。平和すぎる旅だった。ベルティック領につくまでは。
ベルティック領はイレスティア王国とミルザ王国との国境の街ということもありかなり異国情緒あふれる街並みだ。
まず、色彩が鮮やかなのだ。壁や天井がカラフルなのはもちろん、なんというかすべての建物がアートっぽいのだ。
壁に絵が描かれていることは普通だし、それがまた何を意味しているのかもわかりやすいのだ。
「すごいね」
私がさっちゃんにそう語りかけるとイスファがこう教えてくれた。
「ああ、この風景はおそらくミルザ王国の文化が流れたからだと思うよ。ミルザ王国の街並みは色鮮やかだしね」
そうなんだ。イレスティア王国はこういう文化には疎いからな。実質的というか、無駄を嫌う感じだし。
「そうそう、このベルティック領の領主はかなりミルザ王国の文化を気に入っていると聞いたことがあるね」
「そうなんだ。まあ、これから会う予定なんだけれどイスファはどうする?」
「もちろんついていくよ。まあ、特定の貴族と関わり合いになるのは避けたいけれど、そのエリーが信頼できる人の紹介なんでしょう?」
オムスリ神殿長は信頼できる人だ。そのオムスリが私のことを思って紹介してくれたのだ。
「ええ、ベルティック侯爵とは面識はないけれど紹介してくれたオムスリ神殿長は信頼できる人だから」
そう伝えるとびっくりされた。そう言えば、誰からの紹介と伝えていなかったな。
「あのどの権力にも靡かないオムスリ神殿長の紹介ですか?あの人の信頼を勝ち得るとはエリーはすごいね」
イスファがびっくりしていた。というか、後ろのいつも無反応の侍女もびっくりしていたのですごい事なんだと改めて思った。
「ベルティック侯爵の情報は噂レベルではありますが、詳細が不明な人だったんです。だからずっと気になっていました。ということはベルティック侯爵もオムスリ神殿長の信頼を得ている人いうことなんですね。ならば噂は真実でないと見た方がよさそうですね」
さっちゃんもそう言っていた。まあ、ベルティック侯爵の噂って『不細工』と『変人』の二つなんだよね。
噂とは違う感じなんだろうな。そう思っていた。
「お~、あぁなたがぁ、噂のぉ、イレスティア王国の至宝ぅ。赤いぃ、悪魔ぁとぉ、言われているがぁ、実際はぁ、悪意をぉぉ、その身でぇ、受け止めているぅ、可憐なぁ、少女ぉ。その名もぉ、エリザベートぉ姫ぇ。お会いしたかったぁですぅ。私ぃはぁ、こぅのぉ、ベルティック領をぉ、任されているぅ、クロース・フォン・ベルティックと申しますぅ。どうぞぉ、よろしくお願いいたしますぅ」
なんかすごい化粧の濃いというかピエロみたいなカッコにメイクをした人が出てきた。
こういうメイクをしなかったら美男子なのかもしれないが、すでに年齢不詳の変な人だ。しかも話し方だけでなく、動きながら自己紹介をされた。
そう、言うならば歌劇的なのだ。演出に酔っている感じだ。だが、近づきながらこう言って来た。
「監視がいっぱいいるね」
ああ、そういうことか。ベルティック侯爵のこの演出はわざとなのか。ならば理解できる。この人は自らピエロを演じることで周囲の目を欺いているのだ。
「安心するぅ、がいいさぁ。このぉ、ベルティック領はぁ、平和ぁ。田畑も広くぅ、食糧生産量もぉ、イレスティア王国随一さぁ」
どうやら、私が冷害被害の対応をしている事を知っているようだった。
「よければ、我が領で作っている麦もお渡しいたします。こちらも合わせて育ててください」
そう言いながら手紙を添える。
「これはぁ、良いものをぉ、いただいたではないかぁ。ならばぁ、こちらも代金としてぇ、こちらをお渡しぃしようぉではないかぁ」
かなりオーバーアクションでベルティック侯爵が袋を渡してきた。中には金貨と手紙が入っていた。
そうここから私たちは手紙でやり取りをするようになったのだ。後、1名従者が付き添う事になった。
「我がぁ、従弟のブルーノだぁ。彼はぁ、君たちとぉ同じ歳さぁ。学園にはぁ通っていないがぁ、社会勉強のためぇ、ミルザ王国にぃ、同行させてぇ、くれいないかぁ?」
おそらく何かあるのだろう。ただ、決定は私は出来ない。イスファを見つめる。
「うん、いいよ。ブルーノ。宜しくね」
イスファがそう手を差し出すとブルーノもまたかなりのオーバーアクションでこう言って来た。
「ありがたきぃ、幸せでぇ、ございますぅ」
あ、こっちも歌劇的なのね。
そんなこんなでブルーノを連れて移動することになった。ちなみに、ブルーノの面談はミューズとムネリに任せることにした。
どうやら馬車の中だと普通に会話をしていたみたいだ。だが、外ではあのキャラ設定で行くと言う。
派手なメイクと服装は辞めてもらうように依頼した。ブルーノは髪も瞳も紫色。メイクを落とすとちょっと妖艶な感じの男性だった。
いや、同じ年なのに、なぜか色気を感じる雰囲気があるんだよね。そして、もう一つわかったことがある。
植物にむちゃくちゃ詳しいのだった。




