~プロローグ~
~プロローグ~
カージェス領に連れて来られた孤児たちの受け入れも終わった。アネモネの胸には私の胸と同じ魔方陣が刻まれていた。
アネモネの胸にある魔方陣を見つけたラナさんとミューズは何かを察してくれたみたい。私はアネモネについて話そうとすると言葉が出ないから。
まあ、アネモネが元気に成長してくれたらいいのだ。なんだか今は素直ないい子だしね。
ただ、リッターの行方はわからなかった。どこにも見当たらなかったんだよね。謎な子だ。
この数日でカージェス領の方向性がかなり固まった。カージェス領の北側にある山の中腹には見えないようにはしたけれどガラス棟が20棟も建設できた。
というか、クリエイトストーンという新しい魔法を教わったのだ。教えてくれたのはさっちゃんだ。
さっちゃんはクリエイト系がかなり得意で特に土系魔法が得意なんだって。おかげでガラスは作れたし、土の中にある砂鉄をイメージして加熱させることでガラス棟の柱もうまく作る事が出来た。
ガラス棟の大きさはまちまちだ。どうしても山間のため場所によって大きさを変えざる得なかったんだよね。
といっても、一番小さくても家屋が5軒くらいの大きさになったけれどね。まあ、ちゃんと強度も考えて作ったから大丈夫だと思う。
また、イージェス村というかもう街っぽいけれどその付近には北方の地でも育つ寒さに強い麦を植えることになったのだ。
まあ、あの猫がいた集落付近は畑にはせずに空白地にしていたら、後日何かよくわからない建物が立っていた。
あのダークエルフが居るかもしれないので誰も近づかないように指示している。あんなのに自ら近づきに行くとか死にに行くのと変わりないものね。
私もその話を聞いてから逃げるように学園に戻った。うん、あれには関わりたくないもの。
さっちゃんはまだあのダークエルフたちと出会っていないから「一度会ってみたいですね」とか言っていた。やめた方がいいよ。対応間違えたら一瞬で死ぬからね。
逃げるように学園に戻ると、イスファが怪我だらけだった。
うん、これは絶対にイスファの姉というのを見つけたらぼこぼこにしよう。そう決意したのだった。
「ミューズ。さっちゃん。緊急会議よ。イスファの姉をこっそり倒す方法を考えるのよ」
私がそう言うとミューズは目を輝かせながらこう言って来た。
「私なら通りすがりに一撃を入れることができます。一瞬で終わります。ご命令とあらば今すぐにでも」
おそらく通りすがりにみぞおちに一撃を入れるつもりなのだろう。
「ダメですね。事件があるとジャミラ王女殿下が調査を開始します。ジャミラ王女殿下は嘘を見破るため犯人を特定されてしまいます」
さっちゃんが指摘してきた。
「ならば手を出せないじゃない」
「いいえ、私たちは不自然じゃない行動をする。けれど、その結果としてイスファ様の姉が被害を受ければいいのです。つまり私たちの行動と結果に因果関係がないようにすればいいのです。まあ、確率的に起きるかどうかわからない事故のようなものをいくつか行い、その中のどれかが実を結ぶというような感じでしょうか?」
う~ん、それってなんだかすかっとする感じには思えないんだよな。というか、どうしたらすかっとするんだろう。
「ねえ、お願いだから変なことしないで。僕のために誰かが嫌な思いをしてもらいたくないんだ」
イスファが私たちを止める。さっき学園長に回復魔法をかけてもらったけれど、肋骨は骨折していたし、口の中も切れていたし耳も半分きれかけていた。
いたずらというレベルじゃない。これは攻撃だ。攻撃されて黙っているなんてありえない。右の頬を打たれたら、相手の左右の頬を打ち続けなきゃいけない。
たしかラナさんがそう教えてくれたはず。
「ねえ、イスファ。我慢していたって状況は変わらないわ。このままだとそのうち怪我だけじゃ済まなくなるよ。それとも何か考えているのかしら?」
私がイスファに向かってそういうとイスファはこう言って来た。
「そうだね。レドルフ子爵令嬢を見ていて思ったんだよね。僕もイレスティア王国に行けたらいいんじゃないかって」
え?ちょっと待って。拉致とかしないからね。ってか、悪辣女王エピソードを避けようとしているのに。
「そうですね。お二人はお似合いですし、これを機に婚約するのもいいかもしれませんね」
ちょっとさっちゃんいきなり何言い出すのよ。
「イスファもあれでしょ。好きでもない人との婚約とか嫌でしょう?」
私が世間から嫌われていることは知っている。イスファは優しいから私と一緒にいてくれるのだ。それにイスファだって好きな人いるものね。
「え?まだ気が付いていなかったの。結構アピールしたのにな?」
イスファが私のことを見ながらそう言って来た。
「どういうこと?何のアピール?あ、でも、私もイスファも私たちだけで婚約しましたとか言えないものね。親がというか国がどう思うのかが大事だし。一応イレスティア国王である父に相談はしてみるけれどどうなるかはわからないわよ」
私は父を全面的に信じていない。だから何が起こるかわからないのだ。
「そうだね。僕も本国に相談してみるよ。それに僕が王位継承権を放棄することを望んでいる人もいることだしね」
そう、この行動がきっかけで大きく動き出してしまったんだ。




