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~カージェス領の大人たちの会話(リムバ視点)~

~カージェス領の大人たちの会話(リムバ視点)~


 最初は監視対象だった。というか、こんな小さい子が魔力暴走させて大虐殺とかありえないと思っていた。


 だが、魔力量を知るとそれもあり得るかと思ったのは事実だ。ああ、思った。


 それに、俺だって魔力があるからこの嬢ちゃんが規格外なのはわかった。だが、接してわかった。むちゃくちゃいい子だ。カージェス領に来て、小さなさびれた村が発展していく様を見ているのは楽しかった。


 このままカージェス領で平和に過ごしていれば、噂もおさまるだろう。そう思っていたらモンスターの出来損ないがイージェスにやって来たかと思ったらダークエルフが焼き払ったとかいう。


 ってか、ダークエルフと出会うなんてどれくらいレアなんだよ。普通にこの俺が結婚相手を見つけるくらいありえない話しだろうよ。


 というか、このイージェスでラナという女性と出会い告白された。こんなおっさんがいいとかいいだしたんだ。


 あのエリザベート王女殿下と出会ってからありえないことだらけだ。だが、どれだけあの嬢ちゃんが頑張っても悪い噂は消せないし、当人も消そうと努力をしない。どこか諦めているんだ。


 まあ、あの嬢ちゃんが5歳の頃に起きたことについてはちゃんと知っている。この俺もミューズもな。


 だから、俺らは嬢ちゃんが本当の事を言わないかを監視しているんだ。だが、何が合ってもあの嬢ちゃんは言わずにずっと耐えていた。


 どうにかしてやりたいと思っていたが、流石に当人が望んでいないことを勝手にやるのは違うからな。


 それに嬢ちゃんはあまり目立ちたくないみたいだしな。色々と秘密もあるみたいだし。というか、隠しているつもりなんだろうけれど、全然隠せていないからな。


 もやもやしている中、カージェル領にちまちました攻撃をしてくるやつが現れた。



 まず、嬢ちゃんの友達であるモモハ・イーキャという女の子が誘拐されたんだ。このカージェス領では影が動くのは公然の秘密だ。みんな知っているが触れない。


 あんなのと敵対するとかバカがやることだ。相手はオザーム東方連合国のレイノルズ侯爵だという。他国の貴族か。攻撃されないと思っているんだろうな。


 でも、うちの嬢ちゃんはそういうの気にしないんだよな。その点は噂通りの悪辣さがあるんだよな。思いっきりの良さというのか。


 やっぱり、思った通りになった。そしたら次はガキを送り込んできやがった。おそらく洗脳したガキが暴れると言う感じなんだろうな。


 そんな難民知りませんって突っぱねながら全員虐殺するものだと思っていた。いや、俺が手を下してもよかったんだがな。まあ、今までの俺なら勝手なことをしただろうな。


「やっぱり、確認した方が私はいいと思うな」


 結婚したラナにそう言われたので確認をしたら、まさか面談するとか言い出したんだ。びっくりしたな。


 怪しいのは二人。男の方はこいつは使い捨てって感じじゃねえが、女の方が使い捨てっぽいな。かなり洗脳されているみたいだ。本当にレイノルズ侯爵ってのは胸糞悪い奴だな。まあ、もう目も見えないし、歩けもしないみたいだからどうでもいいがな。


 ただ、予想と違ったのは嬢ちゃんがこう言ったからだ。


「リムバ。このカージェス領での改革については広く伝わるように。出入りする商人に噂話をあえて流すように仕向けてください。また、移民を受け入れるなどの方針を打ち出し、カージェス領は領民に寄り添った施策をしていることを広めること。わかった?」


「わかった」


 まさか、自らの汚名を返上するような行動をとるとは思っていなかった。というか、この指示を待っていたんだ。


「さっちゃん。今の私は悪評がかなり広まっています。どうすれば効果的にイメージを変えられるのか、リムバ、ムネリと共に方法を考えてください。どういう手法を取っても構いません」


 このサリナ・レドルフって嬢ちゃんが連れてきた女の子は化け物だ。見た事、聞いたことをすべて記憶するというのだ。


 ラース帝国の過去の出来事なんかもかなり記憶しているらしい。こんなの国外に出したらダメなやつだろうが。しかも嬢ちゃんに忠誠を誓っているのだ。


「それで、どうするのがいいと思う?」


 嬢ちゃんが退席してから、俺がそう切り出すとこのサリナ嬢はこう言って来た。


「どこまでやるつもりですか?私はエリーの噂を知っていましたが、実際見ると気遣いもできるいい子だった。ただ、思い切りと諦めが良すぎるのが問題だと思っています。行うのならイーキャ男爵の手を借りるのがいいと思います。イーキャ男爵は多くの国で取引があります。あの人なら協力してくれるでしょうし、良い結果につながるでしょう。ただ、単に噂を広めるだけでは民衆の心は動きません。だから、私は吟遊詩人をつかって物語を広めようと思っています」


 は?なんだこの斬り出し方?


「いいですね。さすがサリナ殿は違いますな。その吟遊詩人が語るのはお嬢様の名前は出さないのでしょう?」


「ええ、フィクションということにします。けれど、なんとなくわかるような感じにしようかと。例えば理由なく焼き払うのではなく、焼き払わなければならなかったなど理由と悲劇を組み合わせるのがよいかと。特に村を焼き払ったという噂は事実を少し織り交ぜると良い話しに変わるかと。疫病が蔓延し、死体から感染が広がると解った。だが、遺族が触れるとそこから更に罹患者が増える。罪を被る。そのかわりに皆を助けるなどの悲劇のヒロインの話にすれば民衆は感動するでしょう」


 このサリナという少女は怖い感じだ。


「それは過去にあった出来事なのかい?」


「ええ、ラース帝国で200年前に近いことがあったと記録がありましたので使えるかと思いました。まあ、すでにすたれた伝承なので覚えている人も少ないかと。それに覚えているものがいてもラース帝国のものくらい。このイレスティア王国で知っている人はいませんし、このタイミングで広まったなら誰もがカージェス領のことだと思ってくれるでしょう。誰かに何かを言われたら、ラース帝国の伝承物語ですと言えばよいのです。ちゃんと文献はラース帝国の図書館にありますもの」


 なんでも記憶するというのは恐ろしい能力だな。そう思っていたらリムバが変わったことを言い出した。


「お嬢様はたまに冷害対策について検討するように言ってきます。そして、サリナ嬢に確認すると過去にイレスティア王国で冷害が起きた時の2年前の気候に似ている点があるのだと。まだ確証はないが、このカージェス領だけでも冷害対策を考える必要があるな。リムバ殿。対策はどうなっておられる?」


 なんかそういう問い合わせがあったのは覚えている。そして、対策についても聞かされていた。


「ああ、一部の畑をガラスで囲い、温度管理が出来るようにしたぜ。まあ、周囲には年間通じて収穫できるようにするためと言って実験を開始したが、これって成功するのか?結構ガラスを作るにしても時間がかかるから、徐々にしか広められねえが」


 このガラスで畑を囲い、その囲われた中に蒸気を流し込むことで温度を上げるという方法はサリナから指示を受けたんだ。


「どれくらいの範囲ができていますか?費用をかけてでも進める必要があります。後は寒さに強い品種改良された麦がラース帝国にはあります。その麦の入手も進めてください。少量なら父に頼みサンプルを送ってもらうよう手筈は整えています。このイレスティア王国でも育つかと」


 動きが早い。だが、そんな新しい畑の場所がないんだな。


「うれしいが、開墾が間に合っていない。嬢ちゃんに行って森の一部を焼いてもらうのが一番だろうが。場所はどこがいいだろう?ノージェ村あたりがいか?」


 北側は冷えることも多いから農作物の育ちが悪い。開墾をしていないエリアで広い場所と言えばそのあたりだろう。


「いいえ、変化が目立つにはこのイージェ村の入り口付近にある一本道の左右がよろしいかと。商人が通過する際に目に入るようにするのが一番です。寒冷地帯でも、寒くなっても育つ麦があることをPRする必要があります。もし、冷害が起きればカージェス領だけではなくこのイレスティア王国全体に波及するのですから」


「わかった」


 流石だな。サリナ嬢は視野も広い。学ぶことが多いな。俺ももっと勉強するか。



 翌日嬢ちゃんに焼畑農業を依頼したら領地ギリギリまで燃やしてくれた。さらにレンガも大量に作ってくれた。領地ギリギリの場所に一応城壁を作っておこうという話しになったからだ。まだ、耕してもいない平地の奥に城壁を立てていく。そして、この広い土地に寒さに強い麦が植えられていくのだ。


 だが、こういう目立つ動きを嫌う貴族ってのは多いんだよな。

 バカが多すぎるぜ。

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