~覚えのない私と面談しましょう~
~覚えのない私と面談しましょう~
みずぼらしいかっこをした幼女。それなのに、貴族を恨むことだけは刷り込まれている。どういう環境で育ったのだろう?
実はアネモネ時代の私は一定の年齢より前の記憶は一切ない。まったく覚えていないのだ。いや、もっとも古い記憶はベッドの上で寝ているものだ。確か頭を強く打ったとかそう言われた記憶がある。
まさか、頭部への衝撃で記憶を失ったとでもいうのだろうか?というか、そういうことがこれから起きるのだろうか?
状況はかなり変わっている。同じような出来事が起きるとは考えにくい。死なない程度に頭を殴る?
成功するかわからないことを実験するのは怖い。それに、なんとなくこの目の前にいるアネモネに何かあると自分にも影響するのがわかるからだ。
「どうして私たちの不幸を願うのかしら?」
まずは対話からはじめよう。
「貴族なんて私たち平民から搾取するだけの存在じゃない!私たちの犠牲があるからあなた達貴族は生活できているのよ!それなのに、貴族としての責務を何もはたしていない。あなたたちなんて不幸になり、そのまま死ねばいいのよ!」
目の前にいるのは小さい子供だ。つまり誰かに何かを言われてこの考えになったのだろう。
「ねえ、貴族の責務って何のことかしら?」
「そんなことも知らないの?だからお飾りの王女はダメなのよ!」
なんだか少女が怒っているがなんというか、子供が駄々をこねているだけのようにも見える。
「そうね、じゃあ、このカージェス領の街並みを見たと思うけれどどう思ったのか感想を教えてちょうだい?」
まずは意見を言わせよう。
「そ、そうね。きれいな街並みね。平民たちから搾り取るだけ搾り取った税金を使ったのでしょう。街並みなんかより飢えを解決する方が大事でしょう。見た目だけにこだわるのとか貴族らしい発想よね」
なるほど。結構ひどい考えに感化されているみたいなのがわかった。後ろに立っていたリムバから殺気が漂っている。
「リムバ。子どものただの意見だからね。気にしないの。それに、そう思われているということは、私たちが今後きちんと行った事を対外的にアピールしないといけないということなのよ。課題がわかっていいじゃない」
「ちょっと、私のことを無視するとか貴族はこれだから最低なのよね。平民なんて空気とでも思っているのかしら?」
アネモネが悪態をついているとリーリカが怒りからか、影から手を出してアネモネの足を掴みこけさせた。しかも後頭部をおもいっきりぶつけていた。
その様子を見ていたが、私の後頭部にもかなり鈍い痛みが走った。そして、もう一つ。なんか自分の知らない記憶が一気に頭の中に入ってきた。
見たことがないオッサンが洗脳するかのように子供にイレスティア王国がかなりひどい国であること、イレスティア王国に赴き内部から騒乱の種を広めること、と毎日話し続けていたのがわかった。
流石に顔がわかっても、どこのだれかわからなかったら何もできない。ただ、ここにいる子供たちは洗脳をずっと受けていたのがわかった。
「とりあえず、ここにいる子供たちは再教育を徹底してください。特にカージェス領がどれだけ領民のために頑張っているのか、貴族としての責務とは何か、何を行っているのかを丁寧に、毎日伝えてください。その役目はラナさん。あなたにお任せします。」
私がラナさんを見てそう伝えるとラナさんが「かしこまりました」と大きな声でそう言ってくれた。
「リムバ。このカージェス領での改革については広く伝わるように。出入りする商人に噂話をあえて流すように仕向けてください。また、移民を受け入れるなどの方針を打ち出し、カージェス領は領民に寄り添った施策をしていることを広めること。わかった?」
私がそうリムバに伝えるとリムバも笑顔で「かしこまりました」と言ってくれた。
今まで私の評判と言えば悪評ばかり流れていた。それは仕方がないことだと思って諦めていた。でも、きちんと行って来たことはアピールしていかないと行けない。
民衆の支持を得るために何が出来るのか考えないと。
「さっちゃん。今の私は悪評がかなり広まっています。どうすれば効果的にイメージを変えられるのか、リムバ、ムネリと共に方法を考えてください。どういう手法を取っても構いません」
私がさっちゃんにそう伝えるとさっちゃんも笑顔になった。
後はここでアネモネがちゃんと育ってくれることを願うばかりだ。
だが、教育を始める前にリッターだけは行方がわからなくなった。やっぱり歴史は修正できないのかしら。
このカージェス領にリッターが居て、イレスティア王国に愛着を持ってくれたら未来が変わると思っていたのに。
うまくいかないものなのね。はぁ。




